第45話「ぶっ壊れ装備のナーフ」
「燃えてますねぇ……」
「燃えてるなぁ……」
燃えているのはもちろんのことだが運営だ。今回はこの前ガチャで出た装備がナーフされたことに端を発する。
そもそも、全属性に特攻を持つとかいう明らかに無理のある設定だ。精霊の加護を受けたなどとご大層な設定をつけて、極低確率で排出されるという渋すぎるガチャのアイテムになっていた。
当然、そんな装備を作るとモンスターの大半が雑魚になり、『圧倒的人権』と呼ばれていた。装備『精霊の剣』を持たぬ者は人間にあらずと言う扱いをされていた。
「しかし、攻撃力が上がっても無属性じゃ意味が無いですよね……」
そう、運営は全属性特攻という最高の特徴を消してしまった。攻撃力を上げたからいいだろと思っていたのかもしれないが、属性特攻を持っていれば攻撃力が単純に倍になる。つまり僅かな攻撃力アップの代わりに与ダメが半減近くになってしまったということだ。
「まあ俺は持ってないし」
「お兄ちゃんはスッパリ諦めましたよね、石はまだ持ってたんでしょう?」
「検証した連中から『これは絶対ナーフされる』ってお墨付きをもらってたからな」
「お兄ちゃんはアレを信じたんですか?」
「少なくとも運営の絶対ナーフしない宣言より信用出来るだろ」
ちなみに俺たちは現在直通チャットで会話をしている。同じテーブルの隅でファラデーが泣いているからだ。アイツは出るまで引いてしまったやつなので大量の石を使ってしまった。
「お兄ちゃん、なんか励ましてあげたらどうです?」
「無茶を言うなよ、石をほとんど使ってない俺が慰めたってアイツが前向きになるわけないじゃん」
そんなことを話しているとマクスウェルがファラデーの方に向かっていって話しかけた。
「まあ人生そんなもんよ、気にしすぎなのよ。どうせ無料石しか使ってないんでしょう? ダメージは少ないじゃない」
「簡単に言うなよぉ! 俺だって欲しいアイテムはたくさんあったんだぞ! それを我慢してなぁ……」
ちなみにマクスウェルは僅かに石を回しただけで精霊の剣を引いた運の強い者だ。圧倒的強者からの慰めに対してファラデーはガンと落ち込み、机に突っ伏した。
「マクスウェル、こういう事はよくあることだけど何回経験しても落ち着かないもんだよ。あんまり言ってやるな」
「じゃああなたが慰めてあげなさいよ……」
「しょうがないな……」
俺はファラデーのところに行き肩を叩いていった。
「気にすんなって、どうせ石の返還来るって」
そう、もうすでに『今回の修正に関する補填について』という文言がノンリアルファンタジーオンラインのホームペトップに記載されている。何らかの補填は時間の問題だった。
「うぅぅ……ひでえよなあ……下方修正だぜ……」
結局、ファラデーはさらに課金してビールを購入し仮想アルコールで飲み倒していた。
後日、補填によりガチャに使った石の半分を補填することが決定したのだった。
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