第40話「ハウジング競売事件」

「お! 土地が売りに出てるな」


 今日はギルドで集会をする日だった。都合のあったもの同士で集まって有用なことから無益なことまで話す日だったのだが……


「そこ一等地じゃない! ギルマス! 買いましょう!」


「買うべきですよ! 始め値も手が届かない金額じゃないです」


「いや、でもこれは絶対につり上がるだろう。なんで売りに出たのかも分からないような一等地だぞ?」


「ワケありなんじゃねーの? 出る……とかさ」


「ファラデー、あなたここがどこだか分かってるの? 電子の海に幽霊が出るならとっくに現実世界で見つかってるでしょう」


「事故物件でもこの値段なら入札するでしょ!」


「お前ら、いくら怪しいからといって事故物件扱いはしてやるな」


「ちょっと待って、メアリーちゃんからチャットが入ったわ」


「マクスウェルはいつの間にメアリーと直通チャットが出来るようになったんだ?」


「え? うん……あぁ……そういう……分かったわ」


「どうしたんだ?」


 マクスウェルはうんざりした顔で言う。


「町でシャウトを流しているキャラがいてやかましくてかなわないそうよ」


「迷惑系ユーザか……どうせBANされるだろ」


 しかしマクスウェルの顔は曇ったままだ。


「問題は内容でね……『俺たちの土地を返せ!』とわめいているらしいのよ。それも結構な有名ギルドのマスターがね」


「あ! この土地を持ってた奴ってそういえば……!」


「そういうことよ、ウチのギルドと違って無能な事務方がいたらしく納税義務を放棄していたらしいわ。ログインすらしなかったから差し押さえの通知も見なかったんだそうよ」


「やっちゃったなあ……しかしあのギルドの資産なら買い戻すのは確定か……」


「でしょうね……少なくともウチみたいな零細ギルドが買い取れる金額で落ちることはまず無いでしょうね」


「なんでそんなことになったんですか?」


 分かっていないフォーレに俺は説明をした。


「いいか、一度買い取ったギルドがずっと所持出来るとしたらギルドが一人でも残っているかぎり土地を確保しておかないとならないだろ?」


「そうですね、それって良くないことなんですか?」


「ゲーム内でサーバ一つ使うようなエリアを一人ギルドに費やすことは出来ないんだよ。そこで固定資産税を取って幽霊ギルドみたいな結成しているだけのギルドから土地を回収しているんだよ」


「要するに納税をサボったから差し押さえられたということですか」


「平たくいえば、そうだな」


「あらら、ギルド事態はあるんですし大手が買い取るのは確定みたいですね」


「ああ、元鞘に収まるかどうかは分からないけど、大手が皆で競売に参加して値がつり上がるだろうな」


「ウチに買うような隙は無いと?」


「ま、ボーナスステージなんてそんなに無いってことだよ」


「虚しいですねえ……」


 こうして周回はお開きとなった。余談だが競売にてやはり大量のゲーム内通貨が飛び交い運営の元へ回収され、多少のデフレが起きるほどの影響が出たのだった。

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