第34話「妹はエナドリが好き」

「ふぁぁ……眠いですね。お兄ちゃんはいつもこんなことをやってるんですか?」


 今回はギルメンに集まってもらってクラフトクエストをこなしてもらっている。そこへ直通チャットが入ってきたのがさっきの言葉だ。


「まあ、ギルマスだからな。裏方なんてこんなことやるのが役目だよ」


 行っているのは細々とした薬草の調合。スキルで自動化も出来ない専用クエストで納品する品だ。


「あー! ちょっと眠くなってきたのでエナドリを飲んできますね!」


「私もコーヒーを飲んでくるわ」


 フォーレはエナドリを飲みに、マクスウェルはコーヒーを飲みに一旦ログアウトしていった。メアリーとファラデーくらいが今日の予定がなかったメンツなので三人で話をする。


「しかしまあ、エナドリねぇ……体に悪そうだがな、アレを飲むとちょっとなあ」


「ファラデーはエナドリを飲まないのか?」


「ああ、先月の健康診断で血糖値がヤバくてな、しばらく控えてるんだよ」


「私は時々飲みますよ、お金がないのでいつも飲めるわけじゃないですけど」


 メアリーは飲むようだ。ファラデーは健康に気をつかえ。


「メアリーはブル派か、フォーレはモンスター派だそうだが」


「私もモンスター派ですね、安くて量が多いですし、やっぱり物量は正義ですよ!」


「私! ふっかーつ!」


 おそらく一気飲みしてきたのだろう、フォーレがログインしてきた。


「寝たいんだったら寝てもいいぞ? エナドリ飲んで続けるより仮眠した方が効率が良いって話も聞くしな」


「フォーレちゃん、無理は良くないよ?」


「早いとこ作業に戻ってくれ、どうも俺はこういうのは苦手だ」


 ファラデーは細かい作業は苦手らしい。見た目通りなので驚くようなことでもない。ごつい男のアバターを使っているのでいかにもそういった感じを出している。


「さーて薬草どもを押しつぶしてやりますかね! ゴリゴリ削ってやりますよ!」


「手順通りにやれよ?」


 そんなこと話しながら調合を少し進めたところでマクスウェルがログインしてきた。


「ふぅ……やっぱ目が覚めるわね」


 フォーレは空気を読まずマクスウェルに質問をする。


「マクスちゃん、遅かったですね? コーヒーを飲むだけでしょう?」


「フォーレちゃんはエナドリだから開けて飲むだけでしょ。私はコーヒーだからドリップからやったのよ」


「ドリップコーヒーですか、手間じゃないですか?」


「コーヒーメーカーが有るからね、手間はかからないわ、時間がかかるだけで」


「インスタントで良くないですか?」


「ドリップの方がカフェインを採れるのよ」


 その言葉にフォーレは正直すぎる感想を言った。


「マクスちゃん、カフェインが欲しいだけならドラッグストアで数百円のおカフェインが有りますよ?」


 それにマクスウェルはドン引きをしていた。


「さすがに無水カフェイン錠剤に手を出すのは一線を越えてる気がするのよね」


 薬局ならワンコインで購入出来る手軽な眠気覚まし、しかしリスクを考えるとあまりお世話になりたいものではないし、俺もエナドリやコーヒーは飲んでも無水カフェインに手を出しはしなかった。


「さあ作業がんばるわよ! 上位ランクにはガチャチケットが配られるんだからね!」


「ガチャチケットは皆本気になってるガチ勢だけで独占されそうですけどね……」


 ガチャが回せる報酬はとても美味しいので皆本気でそこ以上のランクを狙っている。そこまでいける自信は無いが出来ることはやるしかない。


 その後、夜なべした甲斐もあって、ギルメン全員に十連分のガチャチケットが配布されるランクまで行くことになった。そしてガチャチケットが十枚配布されたわけだが……


「マスター、ホントに良いの?」


「確かに俺たちはがんばったけどさあ」


「申し訳ないですよ」


「やった! 私は喜んでもらいますよ!」


 俺はあの場で参加してくれていたメンバー達にチケットを一枚ずつお礼として渡した。皆ギルドのために尽くしてくれたのだからそのくらいはしても良いだろう。


 フォーレは喜んで受け取り、結局皆もギルドに今後も貢献するという条件で受け取ってもらったのだった。

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