第13話「こっちは遊びでやってんじゃねえんだよ!」
「ギルマス、今日のログインは?」
「無理だな、残っているリアルのタスクが多すぎる」
「フォーレちゃんは?」
「私も忙しくて……」
俺たちは自室でボイスチャットをしている。宿題が多めに出たので今日のログインは無しだ。しかしノンリアルファンタジーオンラインに登録したものとしてはスマホに入っている公式ボイチャアプリからは逃れられない。
「最近忙しい人が多いわね……ボイチャにすら顔を出さないメンバーもいるし……」
マクスウェルは不満そうだ。ギルドの会議には特別な事情がなければ参加としているので不参加の連中が気に食わないのだろう。しかし辛辣なことを言っている割にアプリのボイチェンでロリ声にしているのでなんとも違和感がある。
「ファラデー! あなた貢献度が少し低いわよ、必要以上にギルドクエストをやれとはいわないけれど最低限ってものがあるのじゃない?」
マクスウェルはファラデーに手厳しい意見を言う。だがそれは俺が厳しい加入条件を求めていないことが原因であり根本を突き詰めれば俺が問題の張本人ということになってしまう。
「まあまあ……」
「分かってるよ……俺だってこのギルドには貢献したいしな。ただ俺がここでボイチャのみでしかログインしていないギルマスとフォーレに責められるいわれは無いだろう?」
「たしかにウチは毎日ログイン必須にしてないからな」
「ギルマスは甘いのよ、何人幽霊ギルメンがいると思ってるの?」
「その辺を詰めるとギスギスオンラインになるからな、緩めでやっていきたいんだよ」
酷いところになるとIDとパスワードを共有してキャラを育成しているギルドなどもあるようだ。規約違反ではあるが本人の自由意志で教えたパスワードで所有者が他社のログインを認めているので法的にも怪しいものの逮捕はされないラインをせめているところもあると聞く、ホライズンはそういったギルドになって欲しくないという願いを込めて決まり事は最小限にしている。
「あのー……マクスちゃんも今日はクエストをこなしてないみたいだけど? スマホで見る限り今日は誰もデイリーをこなしてないことになってるよ?」
妹が質問をしたのだがそれが痛いところを突かれたのかマクスウェルも黙ってしまった。俺のスマホアプリのステータス表示ではガチャ広場にいることになっている。そういえば新規武器実装ピックアップガチャが実装されたんだった。
「う……メアリーなんてボイチャにもログインしてないじゃない! それは良いの?」
「ウチはボイチャ必須じゃ無いしな。やりたい人のみで集まってやる感じじゃん? あとボイチャはゲームと違ってハードルが高いしなあ……」
ゲームであればアバターもソフトウェアボイスチェンジャーも実装されている。マイクもヘッドセットにしっかりと付いている。ボイチャをしようと思えばボイスチェンジャーやマイクにヘッドホンなどの装備が必要になってくる。全員に求めるにはあまりにも高いハードルだ。
「みんなやる気なさ過ぎじゃない? マイナーとはいえアップデートが控えてるのよ? もっと盛り上がっていかないとダメじゃない!」
マクスウェルが俺なんかよりよほどギルマスっぽいことを言っている。俺はほとんど上の空で学校の宿題をこなしながら会議の様子を聞いて時々発言するだけだ。
「じゃあいっそ今日は皆でログアウトする日にしないか? アプデが来たら徹夜だろ? それに備えて英気を養う日にするってのはどうだ?」
「ファラデーナイス、その意見採用」
俺が意見を採用したことによって来るべきアプデに備えて各自準備をする日となった。あるものはガチャを回し、あるものはやるべき課題を先に済ませ、あるものはカフェインの錠剤とインスタントコーヒーを買ってきて、それぞれアプデが来てもぶっ続けでクエストをこなせるように英気を養う日となることに決定したのだった。
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