病に良薬、恋は鈴蘭姫の毒が効く
月桜 兎
第1話 鈴蘭姫と夾竹桃
「ねぇ、鈴蘭姫。あなた、あのお方と婚約するようね?」
私の婚約話を出してきたのは、『
私は、『鈴蘭姫』と言う2つ名を持っている、リィーシャ・バリー。なぜ、この2つ名なのかと言うと、私は幼い頃に鈴蘭を食べて特殊な体質になってしまった。食べたら最悪の場合死ぬらしいが、私は生き延びる事ができた。
しかし、その代償なのか、時々鈴蘭を食べないと、発作が起きる。発作を放って置くほど死にそうになる。だから、我が家には鈴蘭が常備されている。
「話を聞いているの?鈴蘭姫、薔薇のお方と婚約するのでしょう?」
「そうよ。薔薇のお方と婚約が決まったわ」
「ふーん、そうなの。まっ、あなたもダメなんじゃない?あのお方、ずっと思い続けている人がいるそうだから
「わかっているわよ」
「分をわきまえているのね。賢いわ。あなたもすぐに、消えるわよ」
「……」
言いたいことだけ言うと、夾竹桃は、帰っていった。私も帰ろうとした時、幼なじみの『向日葵』と言う2つ名を持つサンド・フルーロンがやってきた。
「リィーシャ、一緒に帰ろう。……何かあった?」
「さっき、夾竹桃がやってきたの」
「またか……。ごめんな、タイミングが悪くて」
「ううん、サンドのせいじゃないよ。鈴蘭を食べた私が悪いの」
「でも、鈴蘭を食べなかったら、『人』を救えなかったかもしれないんだぞ?そう考えると、1つの場面だけで見た人達が嫌がらせする方が、よっぽど悪いやつじゃねぇか」
「サンドは優しいね。ありがとう」
「そういえば、お前、『薔薇』と婚約するんだってな。大丈夫そうか?」
「多分、大丈夫。すぐに、婚約話がなくなるだろうし」
「そうか。婚約話がなくなったら、俺の所来いよ。かくまうからさ」
「ありがとう、サンド」
サンドと話が終わる頃には、自宅の前だった。サンドと別れて、玄関に入る。静かだったので、両親は家に帰ってきていないようだ。多分、社長である、夾竹桃のお父さんが残業させて遅くなっていると推測する。
私が、夾竹桃に逆らえないのは、両親が働いている会社の社長が夾竹桃のお父さんだからだ。私達家族は、夾竹桃の家族に見下されている。かと言って、下手に刺激すると、夾竹桃が私の両親を解雇させようとする。だから、私は下手に動けない。
でも、婚約相手の『薔薇』の屋敷に泊まる事はできる。だから、そこへと一時的に避難する。だから、『薔薇』の屋敷は、避難場所くらいに考えておこうと思っている。
私に出来る事は、どうか、『薔薇』が優しい人でありますように、と願う事しか出来ない。私の力不足を痛感する。
『薔薇』との婚約が近くなっていくに連れて不安になってくる。私の目標は、目立たず、穏便に過ごす事だ。その目標を立てて、当日になるのを待つことにした。
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