第30話 レオのお勉強とドーラ登場

 おババさまと話したあと、帰ってきたジーウェイと会った。


「レオ総督そうとく、王となられたんですね。

 即位おめでとうございます」

「ジーウェイもありがとう」


 久しぶりのジーウェイは元気そうだった。


「魔術師のおかげで、あっという間に草原も元に戻りました」

「そっか」

「それと、魔物が出なくなりました」

「魔物が出ない?」

「はい」


ジーウェイが、どう説明していいかと悩んでいると、イオがぴょこんと顔をだした。


「王さまが心を入れ替えたら、魔物は消えるはずだったにゃ!

 歴代の王さまがみんな同じことをするから、魔物が消えるタイミングがなかったにゃ」

「そうなのか」

「まったく、王国はロクなことをしない」


 ジーウェイがあきれていた。


「さあ、ご飯できたわよ〜!」


 ふくよかなおばさんが呼びにきた。


「にゃあ!」


 イオが飛んで走っていった。


「レオ総督そうとくは変わりませんね。

 安心しました」

「俺は……どうだろう。これから変わってしまうかもしれない。自身はないな」

「神獣さまもいるんです。レオ総督そうとくは変わりませんよ。騎馬族もいます」


 頼れる仲間がいるというのは、ありがたい。


「ご主人ー!ご飯なくなるにゃ!」


 遠くでイオが俺を呼ぶ。

 ラカータでの夕食は、久しぶりに心が安らぐひとときだった。


 夕食後はあいさつをして王宮へ戻った。


「ラカータから戻ると狭くみえるなぁ」


 俺のボヤキに男の魔術師が答える。


「騎馬族は外で生活しますから。我らが王よ、明日はいかがなさいますか?」

「政治の資料を読み込みたい」

「かしこまりました」

「そうだ、魔術師は仲よくしてる王宮の人とかいないのか?」

「いません」

「……そっか」


 魔術師は独立した組織だから、王国の運営とはまったく違うようだ。


 朝議のあと、文官を従えて図書館へ向かった。

 政治の勉強だ。


「何となく分かるとはいえ、はっきりと指示とかできないのは困るな」


 過去の議事録やら資料やらを読み込んでいくことにした。

 文官には王自ら来るところではないと言われてしまった。

 だが、王宮について知らないことが多すぎるので、自分で動いて行きたかった。


 図書館に着く。

 王宮にくっついているが、別の建物だから結構歩いた。

 中へ入ると、おそろしいくらいの本で棚が埋まっている。

 資料の棚へ歩いていると、どこからか声が聞こえた。


「誰?」


 メガネをずりあげながら、俺をみつめる女の人。 リーベラさんくらいの年だと思う。


「陛下に無礼な!」

「陛下!?も、申し訳ございません!おじさんじゃなかったんですね」

「俺はこの間、王を倒して即位したんだ」

「ひぇっ!私はドーラです。図書館の管理をしています」

「ドーラか、よろしく」


 ドーラは頭を下げで見送ってくれた。


「まったく、何も知らない小娘が……」


 文官はブツブツと文句を言っていた。

 埃っぽい図書館は掃除されていないようだ。


「ここはドーラ以外はいないのか」

「さようでございます。たんなる本の保管庫ですので」


 街の図書館とは扱いが違うようだ。


「そうか……。どれだけの資料があるか分かったら、とりあえず今の政策に関連するものだけ選んで持っていきたい」

「かしこまりました」


 文官が頭を下げた。

 男の魔術師は面白くなさそうだ。


「我らが王よ。魔術師を頼ればあっという間ですよ」

「まあな。でも魔術師ばかりを頼って、臣下をないがしろにするのはよくない」

「そうですか。セリスだったら、強引に魔術を使いましたよ」

「簡単に想像できるな……。お前でよかったよ」


 それから執務室で勉強した。

 実家で父親たちから聞いていたことが多くて、初めて聞く話はあまりなかった。

 ただ、機密資料は意外にあったので、読みすすめるが大変だ。


「騎馬族の弾圧計画が、こんなに長い間、考えられていたとは……」

「にゃふーにゃふー」


 イオは俺の背中にひっついて寝ていた。


「うーん、午後はどうしようかな……」


 昼ご飯を食べ終えて、のんびりしながら考えこんだ。


「文官にも仕事があるから、あんまり拘束するのもな……軍を見にいくか……」

「ご主人!図書館いくのゃ」

「イオ?お前、退屈そうだったじゃないか」

「ドーラに会うにゃ」

「分かったよ」


 再び図書館へ。今度は魔術師の男だけ連れていった。

 ドーラは背中を向けて本を読んでいた。

 イオが近づく。


「にゃ!」

「わぁぁぁああ!」


 ゴッという音ともに、ドーラは本棚に頭をぶつけた。

 イオは予想以上に驚かれて、逆にビックリしている。

 白いネコミミは後ろに寝ていて、しっぽがピンッと立っていた。


「……ごめんにゃ」

「い、いえ。ここに人が来るなんて、めったに無いので驚いただけです」

「そんなに来ないのか」


 俺が驚くとドーラは悲しそうにいった。


「前の王さまになってしばらくすると、図書館は資料庫に変わりました。

 私は、ここにある素晴らしい本を守りたくて、勝手に司書になったんです」

「勝手になれるものなのか?」

「私は土の名家の親戚ですから……。

 守護獣ビーストのせいで、追い出される寸前だったのですが、名家の当主がここを紹介してくれました」


 フェイジュンのおじいさんは、少しずつ罪を償おうとしていたようだ。


「それでドーラの守護獣ビーストは?」

「ハティ、スキルを見せて」


 ネズミがあらわれて、本に乗る。

 本の中から文字があらわれて、くるくると踊りだした。


「文字を踊らせるのが、この子のスキルです」


 ドーラは恥ずかしそうに笑った。


 ◆◆◆

 ドーラさん登場です

 読んでいただきありがとうございました。 


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