第16話 レオ総督の初勝利とチームワーク

 王国軍はそれから二週間ほどで、俺たちが戦闘のために用意した場所へ到着した。

 だだっ広い草原ではなく、起伏の激しい荒野だ。

 王国軍が砲弾を使うことを、見越しての位置決めだった。


「ずいぶん遅かったな」

「魔物を誘う薬をまいたので。うまく足止めできたようです」


 答えたのはフェイジュンの弟で、ラカータの首領であるジーウェイだ。

 ふくよかなおばさんの守護獣ビーストで布を出して、偽物の村を作って来たそうだ。

 そういう役割の村だったとはいえ、行動が早すぎる。


「おかげでこちらは塹壕ざんごうもつくれたし、年寄りや子どもの避難にも、余裕があった」


 これはコネンの首領だ。


「他の村の守護獣ビーストの連携も確認できた」


 ハリブの首領だ。

 戦いには、すべての村の魔物狩りをしているメンバーが集結した。

 参加しない、できない人たちはラナード、タウロケの首領とともに、南の森の方へ避難してもらっている。

 南の森は王国の人間からすれば秘境なので、追っ手がきても逃げ切れるはずだ。



「レオ総督そうとく、いよいよです」


 フェイジュンが俺に伝えた。

 前線、後方支援と担当も振り分けた。全てのことが、俺の決定で決まった。

 責任が重くのしかかる。


「ご主人なら大丈夫にゃ」


 イオの白いしっぽが、俺の手に巻きついた。


「なんだよイオ、こういうときばっかり」

「にゃははは」

「おそらく王国軍は野営基地を完成させてから、砲撃に取りかかるだろう。

 移動式砲台は運ぶのに時間がかかるから、まだ用意されていないようだ」


 俺の言葉にみんなが頷いた。


「第一段階は無傷で追い返すこと。無理なら第二段階の戦闘に入る。

 殺し合いは避けたいが、みんな自分を優先してくれ」

「ご主人、イオがいるから大丈夫にゃ」


 イオをはじめ、首領、村人をぐるりと見る。

 俺は総督そうとくだ。彼らの命を預かっている。

 緊張で声がかすれないように、気をつけながら命令する。


「奇襲、開始」


 フェイジュンの守護獣ビースト タイタンと、イオを乗せたジーウェイの守護獣ビースト ヘレナが、敵地へ走り出す。

 タイタンの地震スキルだ。


 ドーン!


 大きな地鳴りとともに敵地が揺れる。


「ぱっくんちょ!」


 敵がひるんだスキを突いて、イオが王国軍のスキルを奪う。

 砲弾が発明されたとはいえ、スキルを使うのがまだまだ主流だ。


『なに!?スキルが使えないだと!』

『なんだあの守護獣ビーストは!?』

『聞いてないぞ!?』


 地面に潜んだモグラの守護獣ビーストが、盗み聞きスキルで戦況を教えてくれる。


「ん?イオのことは聞いてないのか?」


 炎スキルの名家の息子である、アルベルトからスキルを奪ったのだ。

 王国軍にも情報が入っていると思っていた。


『お貴族サマはプライドが高いんだろう』


 俺がいる野戦基地と、敵陣営の間で待機しているリーベラだ。


 パァン


 盗み聞きスキルで聞いていると、発砲音がした。

 鉄砲?試作段階だと聞いていたのに。


『防壁!』


 ヘレナが防御スキルを使った。


『びっくりにゃ!』

『あんな小さな大砲があるなんて!お怪我は?』

『無いにゃ』

『催眠ガス!』


 タイタンとイオが暴れ終えたところで、スカンクの守護獣ビーストが王国軍を眠らせた。


『ぐぅ』

『すぴー』

『なにしやがっ『催眠ガス!」』

『ぐぅぅう』


『兵士はある程度眠らせたかな?』

『敵の守護獣ビーストが、どれだけ残っているかだ』

『あたしたちも向かうよ!』


 中間地帯で待機していた、リーベラをはじめとする、ハリブの首領や村人たちが守護獣ビーストに乗って敵地へ走る。


「みんな!任せた」


 待つしかできない自分が歯がゆい。


「総大将はドシンと構えんといかんぞ!」


 そういって背中を叩くのは、ガセーラの首領だ。


「俺も、魔物狩りにいく連中を見送るのはつらかった。

 だが俺がいないと、連中の帰る場所を守る奴やつがいなくなっちまう。

 慣れるしかないぞ」


 ガセーラの首領に励まされて、背筋を正した。


『おーい!総督そうとく!聞こえるかい?

 制圧完了だ』


 リーベラさんの声だ。


「お疲れさまです。王国軍を縛って、こちらへ連れてきてください」

『グースカ寝てるやつを運ぶなんて大変だよ

 ?』

『イオなら出来るにゃ!』

『神獣さまは働き者だねぇ』


 そうして、俺たちの野戦基地に、100人ほどの王国軍が捕虜ほりょとしてやってきた。

 みんな催眠スキルで眠っているので静かだ。

 守護獣ビーストたちは、スキルが使えなくなったので大人しくしている。


「もっといたと思ったけど、こんなもん?」

「地震スキルでちょっと逃げたにゃ」

「寄せ集めの兵隊だったのか?」

「ナメられたもんだ」

「王国軍も様子見というわけですか」

「これでビビって逃げてくれりゃ、大助かりなんだがな。

 ま、レオ総督そうとくの初勝利だ」


「みんな、ありがとう!」


 感激して頭を下げると、総督そうとくがやることじゃない、と怒られた。

 そうして、俺の初陣は勝利で終わったのだ。


◆◆◆

 そういやヒロインだけネームキャラにしようとしていたのに、ジーウェイ君は名前がありますね?

 守護獣ビーストにも名前があるし??

 彼もヒロイン枠???



 読んでいただきありがとうございました。 

 続きが気になる!イオかわいい!初勝利おめでとう!と思われましたら、

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 ・騎馬12部族

 王国の街に近い……ラカータ、ハリブ

 荒野……マカヴォイ、ネゼオ、ハルシェ

 海の近く……ガセーラ、コネン、ストレ

 南の森……イプラ、ヴァノフ、タウロケ、ラナード


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆

 他にもたくさんのスキルを貰ったにゃ!


 タイタンのスキル(フェイジュンの守護獣ビースト

 ・地震 ★★★


 ガニメデのスキル(リーベラの守護獣ビースト

 ・拘束 ★★★



 

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