第10話 己の強さと回復スキルのレベルアップ

「お恥ずかしいところをお見せしましたわ……」


 しばらくして落ち着いたのか、ジゼルが俺たちのところへやってきた。


「……もう大丈夫か?」


 恐る恐るたずねる。

 女の子が泣くと、どうしていいか分からない。


「まったく、男どもときたら……。ぼんやり突っ立ってるだけで、何の役にも立たない」


 はん!とリーベラさんが両手をあげる。


「いえ、リーベラさん。私はレオさんに救われましたわ。……とても」


 俺を見て、頬を赤らめるジゼル。泣いていたので目がうるうるだ。

 やれやれと言ったふうにリーベラさんが返す。


「はいはい」


 ハリブの首領が俺に声をかけた。


「レオ総督そうとく。実力は分かった。今日はここまでにしよう」


 その時、辺りを警戒していた村人が叫ぶ。


「リーベラ!」


 俺はとっさにリーベラさんを押し倒した。

 ほぼ同時に、風圧弾が頭をかすめる。


「ご主人に何するにゃ!」


 イオが火炎弾で魔物を狙うが、かわされた。

 さっきと同じ鳥の魔物だ。

 だけどケタ違いに大きくて素早い。


「アイツだ!」

「おい!逃げるぞ」

「太刀打ち出来ねぇ!」


 なるほど、前に倒したサルと同じくらいの強さか。


「空中だとタイタンも動けません」


 フェイジュンが悔しそうに言う。


「あいつは強い。まずは隠れるよ!」


 リーベラさんがフェイジュンとジゼルをどこかへ連れて行く。

 見ると丘にある、わずかな木々に隠れようとしていた。


「イオ!足止めしてくれ!」

「にゃ!」

総督そうとくも隠れろ」


 首領が俺の腕をつかんで、木々のほうへ連れて行こうとする。


「イオが戦ってるのに隠れるなんて……」


 逃れようとするが、力強くて振りほどけない。


「お前が足手まといになる!イオのために隠れろ!」


 イオは自分をおとりにして、魔物が村人を狙わないように足止めしていた。


「にゃにゃにゃ!」


 ……イオの邪魔はしたくない。

 俺は首領に言われたとおり、木陰に隠れた。


「おい、総督そうとく。戦いっていうのはこうやるんだ」


 ハリブの首領がトラの守護獣ビーストと共に、木陰から飛び出した。


「やれ!」


 首領の指示で、トラの守護獣ビーストが雷を落とす。

 スイスイとかわす魔物。

 しかし、トラの守護獣ビーストはいくつもの雷で、イオのほうに魔物を誘導している。


「ありがとうにゃ!」


 イオが筋力増強スキルで高く飛びあがる。

 空中で魔物にかかと落としをした。


「おらよ!」


 首領が大きな棍棒で、落ちてきた魔物を叩きつける。


「にゃあ!」


 イオが炎をまとった脚で、魔物を蹴り上げる。


 ドンッ!


 大きな音と衝撃がして、魔物はコアになった。


「ご主人〜〜!無事にゃ?」

「俺は大丈夫だ。イオ、よくやった!」


 いつもどおり飛びつくイオを抱きしめて、グリグリと撫でまわした。


「さすが神獣さまだな。あいつを倒すなんて」

「にゃはは。おじさんも強いにゃ!」

「おい、おじさんって……さっきは取り乱してしまいました」

「血の気が多い奴は好きだぜ。だが死にに行くのは、ただのバカだ。

 お前自身も強くなれ。それが神獣さまのためにもなる」

「はい!」


 イオのために強くなる。

 それは俺の新たに出来た目標だった。




 ハリブの村にたどり着く。あっという間に話は広がっていった。


「あの白い子が神獣さまなんだと」

「可愛いのに強いのね」

「あのデカい魔物を退治したんだろ?」

「あの子が神獣さまのあるじ?勇気があってすごいわぁ。尊敬しちゃう」

「そりゃ総督そうとくなんだ!当たり前だろ」


 実力主義の村人たちは魔物狩りで俺たちに協力的だ。

 そんな中、俺たちは自分が泊まるテントを組み立てていた。


「テントは持っていくんだな……フェイジュン、これで合ってるか?」

「レオさん、ここは、こっちからロープをまわすんです」


 フェイジュンを先生にテント張りをする。

 初めてのテント張りに戸惑ってしまう。


「初めてだと難しいですわよ。私は今でも間違ってしまいますわ」

「テント張りはみんなが出来ないといけませんから、今のうちに覚えてくださいね」

「分かった。……これはどうするんだっけ?」

「おやおや、総督そうとく。お困りだねぇ」


 リーベラさんがテント張りを見にきた。


「リーベラさん。レオって呼んでください。総督そうとくって言われるのは慣れません」

「じゃあ、レオ。魔物討伐のお祝いに宴会が開かれる。

 そんなタラタラしてたんじゃ、ごちそうにありつけないよ」

「え!レオさん、頑張りますよ!」

「フェイジュン、はりきるな!」

「ハリブは牛を飼っているんです。

 牛はこういう宴会のときしか、食べられないのです!」

「牛は牛乳を取るものだから、食べるのは珍しいですわね」

「そりゃあ、神獣さまがいらっしゃるんだ。

 とっておきのお祝いをしないといきじゃないだろう?」


 その後、はりきったフェイジュンが、スパルタでテント張りを教えてくれた。

 宴会には間に合ったが、魔物狩りとは違う疲れがある。


「そうだ。イオ、お前が疲れてないなら、村の人を治して欲しいんだが……」


 村人に出会って気付いたが、ほとんどの人がどこかをケガしている。

 切り傷や打撲など軽いケガの人もいれば、骨折している人もいた。


「にゃ?」


 ごちそうの匂いをかいでいたイオは首をかしげた。


「魔物狩りで頑張っただろ?明日でもいいけど……」

「出来るにゃ!」


 イオが空に手をのばす。

 回復スキルの光が、イオの頭の上できらめく。

 大きな光がハリブの村を満たした。


「なんだ!? 腕が動くぞ!」

「さっきまで痛かったのに!なんともない!」

「疲れが吹きとんだ!」


 あっという間に元気になる村人たちを見て、あっけにとられる。


「こんな回復スキルは見たことがない」

「さっきの魔物のスキルだにゃ」


 俺の神獣に、限界は無いようだ。





 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆


 タイタンのスキル(フェイジュンの守護獣ビースト

 ・地震 ★★★


 ヒマリアのスキル(ジゼルの守護獣ビースト

 ・子守唄 ★☆☆

 ・風   ★☆☆


 ガニメデのスキル(リーベラの守護獣ビースト

 ・拘束 ★★★



 ◆◆◆

 明日の更新はお休みします。


 読んでいただきありがとうございました。 

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