第9話 ハリブでの魔物狩りとジゼルの涙

「来てくれてすぐに出発で悪いな」


 ハリブの村人と魔物狩りに行くことになった。


「100体討伐って……数字がおかしくないですか?」

「あたしらの首領は強いんだ。……さすがにこのノルマは厳しいけどね」


 ハリブに来たとき、迎えてくれた金髪の女性が苦笑いした。

 ハキハキしていて武人って感じだ。


「リーベラさんでしたっけ?後ろを守ってくれると聞いています。よろしく」


 俺が礼をするとリーベラさんはコクンとうなずいた。


「一応、首領もついてくるけど、見守るだけだってさ」

「はい。俺とイオだけで倒せるように、頑張ります」


 フェイジュンとジゼルは、当たり前のようについてきた。

 ハリブの首領は、自分の守護獣ビーストであるトラに乗る。

 リーベラさんも首領のトラ乗った。


「あの小高い丘が今回の狩り場だよ!」


 リーベラさんが俺に向かって叫ぶ。


「了解にゃ!」


 イオが俺を抱えたまま、素早さスキルで加速する。


「おい、イオ!飛ばしすぎだぁぁあ!!」


 あっという間に丘へ着いた。


「みんな遅いにゃ」

「イオ……お願いだから……スピードを上げるときは言ってくれ……」

「わかったにゃ」

「お前、返事だけはいいんだよなぁ……。よし、待ってるあいだに魔物を探すぞ」

「にゃ!」


 ちょっと探すと、手のひらサイズのクモのような魔物を見つけた。


「ぱっくんちょ!」


 イオがスキルを奪う。

 追いついたリーベラさんが魔物のことを教えてくれる。


「そいつは体にくっついて噛んでくるよ」

「イオ!焼き払え!」

「にゃ!」


 火炎弾で倒す。弱い魔物のようであっという間だった。


「スキルの相性も出てくるのか……」

「そうさ、だから魔物狩りはチームワークが大切なんだ」

「うにゃ!?いっぱいいるにゃ!」


 イオが火炎弾を連射する。


「あっはっは!いいよ〜神獣ちゃん!やっちゃえ〜!!」


 リーベラさんは手を叩いて笑っている。

 ハリブに着いたときも感じたが、血の気が多い村なのかも知れない。


「村によって、雰囲気がだいぶ違うんだな」

「ハリブの人はお祭り騒ぎが大好きなんです」


 フェイジュンが苦笑いした。


「ご主人!」


 イオが火炎弾を空に放つ。

 空に鳥のような魔物がいた。


「火が届かないにゃ」

「そういうときのリーベラさんよ!ガニメデ!捕まえな!」


 リーベラさんの指示に、大きなカエルがピョーンと飛びはねる。

 舌を出して魔物を捕まえた。


「ありがとうにゃ」


 イオが筋力増強スキルで殴りつけた。


「ぱっくんちょ!」


 さらに大食いスキルで魔物を……食べた。


「イ……オ……」

「いゃぁぁぁあ!」

「きゃぁぁあ!イオちゃんがぁぁぁあ!」

「あっはっはっは!」


 絶句する俺とフェイジュンとジゼル。そして大爆笑のリーベラさん。


「ペッ、にゃ」


 イオが魔物のコアを吐き出した。


「イイイオちゃん!お腹痛くない?大丈夫?」

「そうですよ!魔物を食べる守護獣ビーストなんて、聞いたことありません!」

「そうか?俺はたまに食べさせるぞ?守護獣ビーストの胃袋は人と違うから平気だ」


 ハリブの首領が当たり前のように話す。

 まだまだ騒ぐ一団は放っておいて、俺はイオのスキルを確認だ。


「にゃ!」


 風のカッターが草を切る。


「風スキルか」

「風スキルはもう一個持ってるにゃ。クモから貰ったにゃ」

「スキルが余るってどういうことだ?」

「分からないにゃ。ご主人、守護獣ビーストにあげるにゃ?」

「問題なければあげてもいいけど……」

「レオくん?どうかしたの?」


 ジゼルが話しかけた。手には薬草を持っている。


「いつの間に薬草を……」

「生えてたから、つい……」

「ジゼルにあげるにゃ?」

「イオちゃん、何をくれるのかしら?」

「スキルにゃ」

「俺にもよく分からないけど、余ったらしい」

「ヒマリアはどう思う?」


 ジゼルは自分の肩に話しかけた。

 ひょこっとカナリアの守護獣ビーストが出てくる。


「ジゼルの為になるなら、いいよ」

「初めて見たにゃ!」

「ヒマリアは恥ずかしがりやさんですの」

「にゃー。じゃあスキルあげるにゃ!」


 ほわんと優しい光がヒマリアに入っていく。

 俺はヒマリアに確認した。


「二つもスキルが入って、大丈夫か?」

「はい、今は大丈夫です」

「ヒマリア、スキルを試してくれる?」


 ヒマリアが、ジゼルの肩から飛び立つ。

 空中から地面に向かって、風カッターを使った。


「草が切れた!すごいわ!ヒマリア!」


 ジゼルがはしゃぐ。

 ジゼルの肩にヒマリアが止まった。


「子守唄より疲れますね。しばらく練習したら慣れそうです」

「ヒマリア、良かったわね」


 そういうジゼルの目から涙がこぼれる。


「ごめんなさい……最初からこのスキルがあれば、家を追い出されなかったのかなって……」


 ポロポロとこぼれる涙をぬぐいながら、ジゼルが続ける。


「私は風スキルの名家の親せきなの……。後悔なんてしたくないのに……ごめんなさい……」


 フェイジュンがジゼルをそっと抱きしめる。


「泣いてもいいんですよ。でも忘れないで、私たちがいっしょにいます」


 フェイジュンに抱きついてジゼルが、わんわんと泣き出した。

 丘を抜ける爽やかな風が、ジゼルを慰めるように吹いていた。




 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★☆

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆


 タイタンのスキル(フェイジュンの守護獣ビースト

 ・地震 ★★★


 ヒマリアのスキル(ジゼルの守護獣ビースト

 ・子守唄 ★☆☆

 ・風   ★☆☆


 ガニメデのスキル(リーベラの守護獣ビースト

 ・拘束 ★★★



 ◆◆◆

 レオは男兄弟だから、女の子が泣くとフリーズします


 読んでいただきありがとうございました。 

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