第5話 その頃のアルベルトとレオとイオの魔物狩り

 レオがお腹いっぱいご飯を食べている一方その頃、アルベルトは……。



「バカ言え!早くスキルを使ってみせろ!」

「ご主人様、申し訳ありません。スキルが使えないのです。

 スキルを使うときの力の感覚が全くないのです」


 激昂するアルベルトと戸惑う守護獣ビースト


「お前まで俺をバカにするのか!」


 怒り狂ったアルベルトが手元の本を守護獣ビーストへ投げつけた。

 しかし本は手元が狂い、大した距離も飛ばず床へ落ちる。


「クソっ!父上は原因が分かるまで部屋にいろ、一歩も外へ出るなと……まるで幽閉じゃないか!!」

「ご主人様、あの猫の守護獣ビーストが悪いのです。お父君はそれを調べていらっしゃるのです」

「うるさい!お前がスキルを使えなくなったのは事実だろう!

 お前のせいで!僕の将来は真っ暗だ!!」


 ダンッダンッと机を叩きつけるアルベルト。

 数時間前のことが思い出される。


 レオをさんざん馬鹿にしたアルベルトは、一緒にいた甥と屋敷へ帰ろうとした。

 突然止まる馬車。御者に何事かと確認する前に、理由が分かった。

 大きな馬が馬車の前に立っている。

 貴族の仲間内でも見たことがない、美しくてたくましい馬だ。

 あれだけ立派な馬を買おうとすると、領地をだいぶ売らなければならないだろう。


「ご主人様、あれは守護獣ビーストです」

「そうなのか、しかし守護獣ビーストの主がいない」


 守護獣ビーストは護衛の役割もある。常に一緒にいるのが王国の常識なのだ。

 馬が地面を軽く蹴った。グラグラと地面が揺れる。馬車もゴトゴトと大きく揺れた。


「ご主人様、馬のスキルです」


 アルベルトの守護獣ビーストがアルベルトを支える。

 しかし、アルベルトの甥は驚いて馬車から降りてしまった。


「こら!勝手に動くな!」


 追いかけてアルベルトも外へ出る。

 甥はすぐに見つかった。

 しかし、甥の前に白いネコミミの守護獣ビーストが立っている。

 さっき会った、レオの役立たずな守護獣ビーストだ。


「ぱっくんちょ!」

「は?バカじゃないか?」


 スキルが使えない守護獣ビーストなんて怖くない。

 甥の腕をつかんで、馬車に戻そうとした。


「仕返し!にゃ!」


 体に衝撃が走り、そこから記憶がない。


「クソ!クソ!クソ!レオめぇぇぇぇ!」


 アルベルトが頭をかきむしって叫ぶ。

 スキルが使えないカスに、おとしめられるなんて……このままスキルが戻らなければ……考えたくない……一生このまま幽閉されるのか…………?


「許さない……!許さないぞ!」





 ――ラカータ族、おババさまのテント。


「神獣?」

「そう。王国でも習うだろう?この世の守護獣ビーストを統べる存在。古来より祀られていた聖なる存在だよ」

「イオが……?まさか」

「このおババが嘘をつくとでも?何も持たない守護獣ビーストなどおらぬ。

 守護獣ビーストはこの世の“気”が集まって出来たモノ。

 その“気”が見えぬのは、それこそ人知を超えた存在だからだよ。

 神獣さまは、この世の危機に現れる。

 それを追い出すなんて……王国も堕ちたものよ」


 おババさまはニヤリと笑った。

 俺は隣のイオを見る。

 話に飽きて、大きなあくびをしているイオが神獣なんて信じられない。


「おババさま。イオがスキルを奪ったり、戻したりしたんです」

「フェイジュンから聞いておるよ。おそらく神獣さまの能力だろうね。

 神獣さまは全ての守護獣ビーストに影響を与えられる。スキルを奪うなんて簡単にできるだろう」

「すごい……」


 俺は、ただただ感動した。

 そんなすごい守護獣ビーストを得たなんて。

 それがイオなんて。こんな素晴らしいことがあるのか……!


「レオ、神獣さまを得たということは、お前には大きな役割があるということ。

 お前が望まなくてもね。慢心してはいけないよ」

「わ、分かりました」


 俺の浮かれた気持ちを見透かすかのように、おババさまが俺に忠告した。


「しかし、レオよ。お前は良いところの生まれのようだねぇ。どうしてお金も持たずに街を歩いていたのかい?」


 俺はこれまでのことを話した。


「お前も大変だったねぇ。しかし、守護獣ビースト一匹に人生を左右されるなんて、王国は頭がおかしいんじゃないかい?」

「うっ」


 俺自身、イオに出会うまで王国の考えを疑ってなかった。


「まぁ、レオには未来がある。神獣さまをどう動かすかはレオ次第だ。

 無論、ラカータ族もお前と神獣さまの助けになろう」

「ありがとうございます!」


 こうしておババさまとの話は終わった。


「レオさん、迎えにきました」

「ありがとう。フェイジュン、頼みたいことがあるんだ」



 ――翌朝。


「レオさん、イオちゃん、おはようございます。それでは行きましょう」

「フェイジュン、おはよう」

「おはようにゃ」


 タイタンに乗り、東の森へ。

 他にも村の人たちも参加して、ちょっとした隊列を組んでいる。

 それぞれが自分の守護獣ビーストに乗っている。

 守護獣ビーストに乗れない人は、俺のように他の人と相乗りしている。

 騎馬族と呼ばれる理由が分かった。


「魔物狩りまで手伝って下さるなんて、申し訳ありません」

「しばらく住ませてもらうんだ。当然だよ」


 昨夜、俺はフェイジュンに村に住ませてほしいとお願いした。

 そして魔物狩りを手伝うことにしたのだ。


「着きました。気をつけて下さい」


 鬱蒼とした森の中を歩いていく。

 フェイジュンが合図する。

 みんなの雰囲気が変わった。

 視線の先には真っ黒で大きな塊がいる。


「これが魔物……。変な生き物みたいだ」

「近づくと形が変わります。油断しないで!!」


 フェイジュンの注意を無視してイオが飛び出した。


「イオ!勝手に動くな!」

「ぱっくんちょ!」


 慌てる俺を気にせず、イオがスキルを奪う。

 魔物が止まった。


「にゃ!」


 イオの手から炎が吹き出る。


「アルベルトの守護獣のスキル……」


 あっという間に魔物が燃えて、コアだけになった。


「イオ!」


 木々の間から魔物たちが飛び出してきた。


「にゃにゃにゃ!」


 イオが目にも止まらぬ速さで動き出す。


「イ、イオ?これは魔物のスキルか?」

「ぱっくんちょ!」


 あっという間に燃える魔物たち。


「かんりょーにゃ!」


 イオが俺に飛びつく。


「ご主人!やったにゃ!」

「イオ!よくやった!!」


 喜ぶ俺らと反対に、フェイジュンと村の人たちがポカンとしている。


「こんな簡単に?」

「あっけない……」

「一日かかって倒す数だぞ!」

「にゃはは!イオは神獣なんだにゃ!」


 得意気にイオが言う。


「し、神獣さま!?」

「伝説の存在じゃないか……!」


 フェイジュンを始め、村の人がひざまづく。

 俺は慌てた。


「にゃ!?」

「フェイジュン!?みんなも顔を上げてくれ!!」

「いえ!そのような訳には!」

「昨日と同じでいいから!」

「いえいえ、恐れ多い!」


 それから、みんなに普通に接してもらうまで、俺はとても苦労したのだった。





 イオのスキル

 ・炎 ★★★

 ・素早さ★☆☆

 ・???

 ・???

 ・???



 ◆◆◆

 分かりにくくなったのでイオのスキルを乗せることにしました


 読んでいただきありがとうございました。 


 続きが気になる!イオかわいい!他のスキルはどんなもの?と思われましたら、

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