第2話 ドン底とイオのスキル発動?

 イオはスキルを持たない守護獣ビーストだった。

 しばらく王宮で調べられたが、結果は変わらず。


「イオ、スキルを使ってくれ」


 一度、魔術師たちの前でイオに命じた。


「ご主人、イオに使えるスキルは無いにゃ」


 当たり前のように言うイオ、俺は目の前が真っ暗になった。

 スキルを持たないということは、何も出来ないということだ。

 この国は守護獣ビーストこそが全てなのに……。



 それからどうやって帰ったのか覚えていない。

 気づいたら自分の部屋にいた。

 ご飯を食べる気にもなれない。布団にこもって、じっとしていた。


「ご主人、イオ、ダメな子?」


 イオが悲しそうに聞いてきた。

 本当はお前のせいだ!と怒りたかった。

 でも、そんなことをしても意味がない。


「イオのせいじゃないよ」


 俺は無理やり気持ちを抑えて、イオを慰めた。

 イオを見ていると、酷い言葉を浴びせようとしてしまう。

 イオを部屋において、屋敷の中を歩くことにした。


 父さんの書斎から声が聞こえる。

 こっそり覗くと、父さんと母さんが話し合っていた。


「水スキルを持たないなんて知られたら……」

「もう遅い、あれだけ王宮で騒ぎになったんだ。他の貴族も知っているだろう」

「そんなっ……」


 母さんが泣きだした。父さんも疲れた顔をしている。


「違う守護獣ビーストに変えられないのかしら?」

「私も聞いたが、守護獣ビーストを魔法陣に戻すことは不可能だそうだ」

「あなた、どうしましょう……このままだとレオが……」

「国一番の大魔術師まで、レオの守護獣ビーストを調べた。それでも変わらなかったんだ……。どうすることも出来ない」


 それ以上聞いていられなくて、俺は走って逃げた。




 数日俺は屋敷に引きこもって過ごした。

 イオは元気に屋敷を散歩していた。


「イオ、お家の中、覚えたにゃ!」


 ぴょん!と跳ねて、人間になったイオは10歳くらいの女の子になった。

 ピクピクと動くネコミミがかわいい。

 その間にイオと仲良くなれたのは良かった。

 そうでなければ俺は……いや、それを言うのはやめよう。






 数日後、父さんに呼ばれて応接間へ入った。もちろんイオも一緒だ。

 応接間に父さんと母さん、兄さんの他に親戚のおじさんやおばさんもいた。

 みんなの目が俺とイオを見ている。


「レオ、お前の今後が決まった」


 父さんが口を開いた。


「水スキルの名家として、お前の存在を認めることは許されない」


 分かっていたけど身体が震える。イオが俺の手をギュと握ってくれた。


「悪いがこれが一族の結論だ。お前にはお前の道があるだろう。

 父さんたちはいつでもお前のことを思っているよ」


 微笑む父さんの目は笑っていなかった。

 嘘つきのクソ野郎。父さんを睨みつける。


「何だその目は!」


 父さんが本性を現した。


「15年間を無駄にしたんだ。私たちの気持ちがお前に分かるか?

 無価値なお前を、今まで育ててやったんだぞ?こいつを追い出せ!」


 兄さんが俺に腕を引っ張る。


「一族の恥が!出ていけ!二度と帰ってくるな!」


 そのまま俺は追い出されてしまった。




 フラフラと街をさまよう。


「ご主人、私のせいでごめんなさいにゃ」

「……」

「ご主人?」

「うん?聞いてるよ」


 荷造りも何も出来なかったので、本当に体一つだ。お金も持っていない。

 貴族として生きてきたので、庶民の生活が全く分からなかった。


「これからどうしよう」


 途方に暮れる俺の前に、馬車が止まった。


「レオじゃないか!?」

「アルベルト!」


 馬車から顔を出したのは、幼なじみのアルベルトだった。

 俺はホッとした。良かった、一人じゃなかったんだ。そう思えた。

 それが間違いだったとすぐに知ることになる。


「プッ、これが守護獣ビースト?ペットじゃん」


 アルベルトがイオを馬鹿にする。


「イオはペットじゃないにゃ!」


「ははは、スキルが使えないなんて、ただのペットだろ?

 お前の人生終わったな。一生引きこもってろよ」


 アルベルトの後ろにいた、俺が知らない貴族の男の子が馬鹿にしたように笑っている。

 そいつはそこら中に聞こえるように叫んだ。


「みなさ~ん!こいつの守護獣ビースト、スキル無いんですよ〜!!」

「ご主人をバカにするなにゃ!!」


 イオのシッポがピンッと立って怒りを表している。


「おい、今後は俺に話しかけるなよ。お前みたいな庶民以下のザコと関わるなんて、ヘドが出る」


 そう言い捨てて、アルベルトを乗せた馬車は走り去った。


「スキルを持たない守護獣ビーストなんて……信じられる?」

「ラスキン家でしょ?噂は本当だったのね」


 ひそひそ話に、好奇の目。……もうたくさんだ!


「ご主人!?」


 人がいないところに行きたくて走った。

 走り疲れて立ち止まったのは、陰気な路地裏。


「やめて下さい!」


 誰もいないと思ったのに同じくらいの女の子が、男に腕をつかまれていた。


「お前の守護獣ビーストが、ウチのを怪我させたのが悪いだろう!」

「あなた方が、私たちの成果を横取りしようとするからでしょ!」

「はぁ?ラカータ族に成果なんて、誰も期待してねぇよ。とっとと渡せ!」


 期待してない。その言葉が妙に俺の気にさわった。


「おい、卑怯なことをするな」

「なんだ?」

「その子を離せ」

「うるせえ!」


 カッコよく登場したが大人と子供だ。

 男の腕をつかむが振り払われてしまった。


「やれ!」


 男の守護獣ビーストが俺に向かって突進してきた。その時!


「ぱっくんちょ!」


 イオが男の守護獣ビーストに手を突き出した。


「なっ……!スキルがつかえない……!」


 ピタッと動きが止まり、慌てる男の守護獣ビースト


「仕返しするにゃ!」

「ガハッ」


 イオが全く同じスキルで男と守護獣ビーストを突き飛ばす。


「どういうことだ?」

「にゃ?」

「お前。スキルは持ってないんじゃ?」


 イオに尋ねる。


「今のスキルはイオが貰ったのにゃ!」




◆◆◆


 読んでいただきありがとうございました。 


 続きが気になる!イオかわいい!レオはどうなるの?アルベルトムカつく!と思われましたら、

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