死の淵少女
天音あおと
第1話
「んー……。死んじゃうの?」
「そうだよ」
「そっかぁ」
今更、人ならざる者への恐怖などない。だって、今に自分も仲間入りをするのだから―――とは言っても、死んだらどうなるのかは、雫にも分からない。
「えー、でもなぁ。止めた方がいいと思うんだよねぇ」
空中で浮かんだまま腕を組んで、胡座をかく青年は呑気に言葉を伸ばしながら喋る。柵を掴む手に力を込めて、青年に目をやる。
切れ長で涼しげな目元が少しだけ細められた。
「あなた、誰なの」
「え〜、雫ちゃんなら、分かるでしょ?」
のんびりとした青年に苛ついた雫は、黒い服を着たその青年を睨みつけた。
「もう、いい。いいからはやく、そこをどいて。私はあなたのお仲間になるだけなんだから」
うーん、と唸っていた青年は、俯いていた顔をはたと上げ、雫の方を見た。雫からは、フードで隠された目は見えない。
「仲間? んー……、それは、無理だよ」
下からの風にあおられて、彼のフードが柔らかく浮かび上がる。
濡れたような黒い瞳が雫の瞳を捉え、揺れていた。
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