異世界転生魔法士の不自由生活
黄昏 暦
プロローグ 1/49の魔法使い
「ギーグ分隊 杖の魔石を緑に交換 火魔法詠唱準備」
ギーグ分隊長の号令で分隊4人が左手に持った杖の魔石を
「「「「緑、交換完了!」」」」
「よし、俺の杖に集中、火 詠唱開始」
俺達は詠唱をはじめる。
「&%$#¥*@ &%$#¥*@ &%$#¥*@ ・・・・・・・」
火魔法として覚えているが、意味の分からない音の羅列を詠唱する。
これを3分間詠唱し続ける事が魔法士の義務となっている。
今は意識すれば勝手に口が動く。
どうせ火と水と風の3種類だけ、丸覚えだ。
向こうの方にデカイ牛の怪物と、
それを取り囲んでいる
鎧で固めた彼らは牛の怪物を槍でけん制しているようだ。
怪物の脚には鎖の両端に錘がついた、いわゆるボーラーの鎖が絡まり
上半身には網が絡まってその動きを阻害している。
分隊長の杖の魔石が白く光り、
分隊長はその先端を黄の
自分の杖の魔石が光るのを確認した小隊長は、
今度はそれを、ちょび髭の緑の
中隊長の杖の光を見て横にいる、背の高い男性が首に掛けた角笛を吹く
「ブォ~~」
集団魔法に前衛を巻き込まない為の警告笛だ。
この気の抜けた音を合図に前衛が槍と盾を投げ捨てて、牛の怪物から離れていく。
今度は向こうから「ピー!!」という甲高い音が返ってくる。
前衛、退避完了の合図だ。
ちょび髭の中隊長は光る杖を遙か向こうに見える牛の怪物に向けてから
おもむろに起動キーを唱えた。
『全自動ハエ取り機』
起動キーは個人個人が設定して、間違って口にしないように
意味の無い文字列が使われる・・・なのに
何故か俺の耳には無茶苦茶な日本語に聞こえてしまう。
俺の体から(魔力と気力の二つの意味で)何かが抜ける感覚がして、
中隊長の杖から炎の塊が牛の怪物に向かって放たれ、
牛の怪物は炎につつまれた。
「グォ~~」牛の怪物の断末魔をバックに
ちょび髭中隊長のドヤ顔が非常にうざい
「よし、リド、タイマーセットを頼む
各自、魔石を
分隊長の号令で、
同じ分隊メンバーのリドが自分の杖の柄に仕込まれている
これは俺達が次に詠唱可能になるまでの時間を計る火時計だ。
杖の透明な柄に仕込まれた縄香は、
燃えた長さで時間の経過を教えてくれる。
次に魔法を使える時間を教えてくれる、
とんでもなくアナログな道具である。
次に号令の通り、全員が魔石を交換する。
熱くなった緑の魔石を手袋で覆われた右手で外して、腰の緑ホルダーに
黒ホルダーから黒の魔石を取り出して杖の先端にねじ込んだ。
魔石のゆるみが無いか確認して「黒 交換」と発声する。
交換をしたところで、今は詠唱しても無駄なんだけどね。
これが国軍の規定らしい。
「集団魔法詠唱後は速やかに 黒 に交換、
分隊単位で周囲を警戒し相互支援に努めよ」だと
これは訓練所で何度も暗唱させられた。
全員の発声を確認した分隊長の「休め」の号令で
俺たち全員がその場に座り込んだ。
疲れ切って座り込んだ俺の目に写ったのは、
魔法士達の疲れ切った顔と周囲からちやほやされて
喜色満面の
「なんだよこの職場、疲労感は1人前、達成感と満足感はゼロじゃねえか」
どうせしばらく魔法は使えないし、と腰の水筒を取って水を口に含む。
詠唱で乾いたのどを潤した。
詠唱が任務の俺達魔法士は、
のどや声の保護を優先する為、
「まあ1/49とはいえ、
集団魔法に貢献しているんだから良いじゃないですか。
給料分は働きましょうよ」
同じ分隊のリドが人の良さそうな顔に
汗をかきながら俺のボヤキに答える。
彼は、俺より頭一つデカイ、
(俺は平均よりちょっと小さいだけだ)
見た感じ前世のギターに着流しのコメディアンに似ている
俺は心の中で奴の事を「残念君」呼んでいる。
『𠮟咤激励、叱咤は部下に激励は上司に・・・か、嫌な事思い出した』
『責任は部下に、成果は上司に・・・やめろ、これは思い出すな』
聞かれちゃマズイ悪態を『日本語』で呟いて、
それに、つられて思い出してしまった
思い出したくも無い、現代日本の記憶に蓋をして。
肉体疲労とは違う、なんとも言えない疲労感に俺は耐えていた。
※中隊魔法
魔法中隊は中隊長以下、3つの小隊で構成される。
魔法小隊は小隊長以下、3つの分隊で構成される。
魔法分隊は分隊長以下、4人の魔法士で構成させる。
つまり、中隊魔法は
※表現上の都合で『 』内の文字を日本語表現とさせて頂きます。
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