Day 1-1 クラスメイトの女の子と
1日目・午前中
入学式は日本の学校と似たようなものだった。
ものすごく広い講堂で学園長や生徒会長の挨拶があった。
生徒会長はものすごく美人だった。
周りを見ると、男子生徒よりも女子生徒の方が多く、みんな美形なのだが。
生徒会長からはものすごいカリスマ性というかオーラを感じた。
クラス毎に分かれ、教室で担任の先生からの挨拶があり。
今後の授業の予定の説明や教科書の配布があり。
それだけで初日は解散となった。
生徒たちが順番に自己紹介をするとかはなかった。
この学園に普通科・魔術科・騎士科などがあるらしい。
僕は普通科。
『普通』って言われたら何を目指したらいいのか分からない。
しばらくは様子見かな。
教室にいるクラスメイトたちは交流を深めるため、おしゃべりに興じている。
僕は隣の席の女の子から話しかけられていた。
「あの……私、ベルデって言います。これからよろしくお願いします」
「僕はヒロト。よろしくね」
「あの……私、口下手でして。人と話すのが苦手なんですが、優しそうな雰囲気のヒロト君が隣の席でよかったです」
「そう?ありがとう」
ベルデの見た目は小動物のようにかわいらしい。
ふわふわした生地のベレー帽をかぶり、白っぽい長い髪を無造作に伸ばしている。
「あと、ヒロト君って私と同じで、かわいい女の子が異常に好きそうですし。それを含めて話しが合いそうなので、とってもうれしいです」
「ちょっと!僕も男だし、そりゃあかわいい女の子は好きだけど……。異常だとか勝手に決めつけないでくれる?」
偏見もいいところだ。
ベルデって子はおとなしそうに見えて、クセが強そうだな。
「あの……ヒロト君」
「何?」
「クラスメイトの中で一番タイプなのは誰ですか?」
「お前、口下手じゃないじゃん」
「全然、そんなことないです。ここ最近、ヒロト君以外の人と会話したことなかったです」
「ホントかよ」
「で、どの子が好きなんですか?」
「それは修学旅行で聞くノリじゃない?入学初日の話題じゃないよね」
「私としてはネレアさんじゃないかと思っています」
「ネレア……って」
「あ、ヒロトさんは地方から来たと言ってましたから知らないかもですね。あそこでたくさんの生徒に囲まれている赤髪でロングヘア―の方です。ネレアさんはこの王都で非常に人気のある歌姫なんです」
「へー、そうなんだ。そう言えば、やけに彼女の周りには人が多いなとは思っていた」
「どうです?美人でしょ」
「まあ、確かに」
「彼女と付き合いたいと思いますか?」
「いや……付き合いたいとは分からないかな。よく知らないし」
「ハッ!そんなことは聞いてないんです。彼女とヤりたいかって話なんです」
「そんな話をしていた覚えはない」
「もう一度聞きますよ?クラスメイトの中で一番抱きたいのは誰ですか?」
「知らないよ!どうしてそんなこと答える必要があるんだ!」
「何だよこのムッツリスケベが!」
「うるさい!」
クラスメイトと親睦を深めるというか、口喧嘩になった。
こんなに興奮しているのは教室の中で僕たちの他にはいない。
「楽しそうですね」
その一言で僕たちも周りも静かになる。
何とネレア本人がこちらに目の前に来ていた。
「ごきげんよう。私はネレアです。同じクラスになったことですし、これからよろしくね」
「どうも、僕はヒロト。みんなとしゃべってたみたいだけど、そっちはよかったの」
「ええ、あちらの方たちとはたくさんおしゃべりしたので。まだ、お二人にはご挨拶してなかったと思って」
さすが人気者。
勝手に周りが集まってきていただけかと思っていたら、クラスのみんなに順番に話して回っていたのか。
「あ……ベルデと言います。……よろしくです」
うつむきながら、蚊の鳴くほど小さな声で挨拶を交わす。
本当に口下手だったのかよ。
「ベルデちゃんね、どうぞよろしく。ヒロト君と楽しくおしゃべりしていたところに割り込んでごめんね?」
「あ……全然」
コイツ本当に僕としか話せないのか……?
「あのヒロト君、突然なんだけど」
「はい」
「私と……付き合ってください!」
「……はい?」
目をキラキラさせているベルデ。
僕は目が点になっている。
「一目見て好きになりました。もしかして、ダメでしょうか?わ……私、こう見えても歌手をやってて、すごく人気もあるんですよ!ファンとかすごくたくさんいて……。もしかして、逆にそういうのがいやなのかな?だったら私、歌うのやめます」
「ちょっと!まだ何も言ってないのに、勝手に引退しないで」
「ご……ごめんなさい、ついテンパっちゃって」
まだクラスメイトがたくさんいる教室での告白。
他の生徒から注目されている中で引退宣言まで飛び出し、周囲はかなりザワつき始めた。
「えっと……。付き合うとか、よく分からないので……。とりあえず『友達から始める』でよかったら」
断れる雰囲気でもなかったので、無難な返事をすることにした僕。
すごくかわいい子なので、付き合うのが嫌なわけではない。
ただ、あまりにもいきなり過ぎるし、よく知らない相手と付き合うことを決めるのは早計な気がした。
ふと、横をみるとベルデと目が合う。
本当はヤりたいくせにって顔をしている。腹立つな。
「それは……ヒロト君の『彼女候補』にしていただけるってことでいいでしょうか?」
「……うん、その認識で大丈夫だよ」
「やった!よかったぁ……フラレたらどうしようかと思ってたんだ」
目に涙を浮かべ、祈るようなポーズで安堵のため息をつくネレア。
こんなに喜んでくれるなんて、こちらとしても嬉しい限りだ。
何とネレアは大胆にも僕に抱き着いてきた。
そして
その場でした。
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