夜空に瞬く幾億の金玉

第1話 成瀬孝弘

 友達がいた。親友だと言っていい……と思う。そいつの名前は星新ほしあらた。まあ親友といっても毎日のように会って四六時中一緒に居るわけじゃない。いつもどこかで気にかけてて、たまに会うだけでお互いの調子が分かる。そんな関係だ。

 仕事の忙しさにかまけて、ここ何ヶ月か連絡が途絶えていることに気づいた。久しぶりに連絡してみたがLINEは既読にならないし電話も返りがない。そこで直接アパートへ行くことにしたのだが……今までこんなことはなかった。とにかく、心配だった。

 3度ほど呼び鈴を鳴らした後で、出直そうかと思った頃にドアが開いた。顔を出したのは、他でもない星だった。その顔はやつれて、目だけがギラギラと輝いている。

「成瀬……? 成瀬か? お前、成瀬だよな?」

「星、お前大丈夫か?」

 俺が名前を呼ぶと、星は凄い勢いで俺の肩を掴んだ。

「お前、今僕の事『星』って? 星って呼んでくれるのか?」

「……だって、星だろ?」

 俺がそう答えると、星は顔をクシャクシャに崩して涙をこぼした。

「そうだよな……僕……星だよな? 僕は……星、なんだよな……」


 とりあえず部屋に上がらせてもらう。買って来た飲み物を渡すと、星はそれを一息に飲み干して大きく息を吐いた。

「……落ち着いたか?」

「ああ」

明らかに星の様子は普通ではなかった。俺はどうしてもその理由が知りたくなった。

「俺と会ってない間、一体お前に何があったんだ? 話してくれよ」

「……多分、これから僕が話すことは、すぐには信じてもらえないかもしれない。色々疑問点が浮かぶと思うけど、まず飲み込んで欲しいんだ」

「……分かった。とりあえず聞くよ」

「この数か月、僕は異世界にいた」

「えっ? それって……」

「まず飲み込む。そういう約束だろ?」

「……そうだな。ごめん。続けてくれ」

 そうして星は、ぽつりぽつりと言葉を置くように、俺と会っていない間に行っていたという『異世界』について話し始めた。


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