1.始まりは鐘の音と共に

 シアー鉱石という希少な鉱物が発見された。その鉱物が初めて発見された場所は、インド洋である。その後、さまざまな国の海洋進出が始まった。


 シアー鉱石の主な使われ方は軍事利用である。


 シアー鉱石から作られたキューブのサイズは、2mm×2mmの物質である。


 適正のある童女にそのキューブを埋め込んだとする。埋め込まれた童女は、特殊な異能力を得る場合がある。


 男児や大人の男女にキューブを埋め込む実験も試されたが、成功例はない。


 異能力を持った童女を戦闘姫と呼んでいる。戦闘姫は人間ではない。彼女たちは兵器だ。戦争をするための道具だ。


 キューブを埋め込まれた童女の寿命は、極端に短くなる。しかし、お国のため、誰も望んで非国民にはなりたくないのである。


 軍に徴兵された童女の家庭には、国からの税の徴収の軽減などの待遇を受けることができる。


 そのことから、両親側から娘の適正を調べてほしいとの要望も多い。


 この頃から大日本帝国では、贅沢は敵だとビラなどが出回った。


 何故ならば、キューブ開発や海洋資源調査のための資金に難航があったからだ。


 日本諜報機関最高位、未来を読む力を持つ戦闘姫、水蝶によれば、近い将来、近隣諸国で大きな戦争が始まるとのこと。


 もうあまり時間は残されていない。アメリカやイギリスに動きがある。


 キューブ開発や、人材の調達と育成を急がなければならない。


 東雲紫音しののめしおんは、漁港近くの村に産まれた童女である。いつか自分は海に出て、世界の国々を見て回りたい。そんな大層な夢を志していた。


 村の住人からは、馬鹿な話をするなと笑われ、両親からは、顔がいいのだから、やんごとなきお方と結婚しろと言われた。


 私はこの狭い村から出ることもできないのだなと、途方に暮れていた。


 毎日、早い時間から農作業を手伝い、夜はむしろを編む。その合間に弟の世話をしたりする。服はツギハギの多いボロ布。


 一度でいいから、スカートというものを履いてみたかった。だけど、そんな願望はとっくに捨ててきた。


 私はこのまま村娘として生き、村長の息子とでも婚姻されるのだろうと思っていた。


 私は村のはずれの景色が好きだった。海の見える丘に鐘が設置されていて、朝、昼、晩と鐘が鳴る。私はそこでじっと海を見る。


 しかしその日は、まだ鐘の鳴る時間ではないのに鐘が鳴っている。


 鐘を鳴らしたのは誰なのか?そんな疑問を解決するために、鐘の設置されている丘に足早に向かった。


 そこに立っていたのは、この辺りでは見かけない一人の画家だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦闘姫-赤ノ血- 七星北斗(化物) @sitiseihokuto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ