お嬢様が恋をしたそうです。
@masaki213856
第1話
「ねぇ、ジル、私好きな人ができたの」
「はい?」
何時もと変わらない昼下がり、いつも通り仕事をしているとお嬢様、クラリス・バラードに告げられた
お嬢様専属執事の私、ジルはお嬢様の突然の告白に驚き硬直した。
しかしこれでもバラード公爵家の執事、私は何とか復活しお嬢様に尋ねた
「好きな人でございますか?」
私は今どのような顔をしているのだろうか?
お嬢様の初恋、この慶事にきちんと笑顔で対応できているだろうか?
私の質問にお嬢様がそれはもう花が咲き誇るような笑みを浮かべ
「ええ、そうよ!!好きな人!!ものすごく素敵なの!!」
お嬢様のお答えに私の中で何かの音が聞こえた。
何かとは違う、私はこの答えを持ち合わせている。
いつもと変わらない昼下がり、私の初恋は終わりを告げたのだ
★★★
お嬢様と出会ったのは私が7歳の時だった・・・
私は孤児でその日その日を生き抜くため何でもやった。
それが人に言えないようん事もだ
その日私はいつものように街の大通りにある小道、その陰からカモを探していた。
その時だった
「お嬢様!?」
「マリア!!」
突然一人の少女が大柄な男に抱えられ私がいる方へと走ってきた。
抱えられている少女の衣服からお金持ちのお嬢様と思われた
身代金目的の誘拐だろうか?
そこまで考えた私はチャンスと思った。
ここで助ければ少なくない謝礼がもらえるはずだ
と
そう考えた私はすぐさま行動に移る。
まず近くに落ちていた手頃な石を掴み走る男に向かい投げる
「へ?ぶっ!?」
日頃から盗みを働き追っ手をかかわすために鍛えた腕前がさく裂し石は男の顔面に命中する。
男は無防備に受けた石の痛みで後ろに倒れ、とっさに抱えていた少女を空中に投げる。私は走り少女をキャッチ、少女の方が小柄だったが私もまだ5歳
「お、わっ!!」
「キャッツ!?」
当然抱き上げることなどできずそのまま少女の下敷きになってしまう。
さらに不運なことに私は頭を地面に打ち付けてしまう。
「あつ!!君!!大丈夫!?ちょっと!!」
私の意識はそこで暗くなった。
★★★
「・・・・う、ここは?」
気が付くと見知らぬ部屋にいた。
見渡す限り見たことはないが一目で高級品だとわかる家具、さわり心地がよくもう一度潜りたくなるほどのベットさらに今自身が着ているのはボロボロで所々破けていた衣類ではなく、サラサラと上質な絹で作られた衣服を着用していた。
自身が置かれている状況が分からず最後の記憶を辿る
たしか俺は・・・
段々と記憶を思い出しかけたその時
トントン
「失礼します」
突然扉が開かれ一人の少女が入ってきた。
銀色に輝く美しい髪、瞳は澄んだ青空のように曇りひとつない、少女を見た私は天使が舞い降りたのかと思った。きっと自分はあの時死んだのだと、そしてこの天使が迎えに来てくれたのだと、物心付いた時から悪さをし人を殺めてはいないが多くの人を不幸にしてきた。きっと自分はろくな死に方はせず地獄に落ちるのだと子供ながら考えていたが最後に少女を助けるという善行を積んだ自分に神様がご褒美をくれたのだ。
私は知らず知らずのうちに涙を流していた
「あ、起きたので、え?ち、ちょっと!?どうしたの?どこか痛いところがあるの?ここにはあなたをいじめる人はいないよ?」
天使は私のそばに近づくと私の手を握って優しい言葉をかけてくれた。
その優しさが私の中に染みわたり私は天使の手を強く握る。
「え!?き、急にどうしたの?」
天使は顔を紅く染めたが当時の私にはその美しくも可憐な顔を見る余裕はなかった
「お、俺は・・」
私は天使に懺悔するかのように自分の生い立ちを語る。
今まで行ってきた悪行を包み隠さず
天使は私の手を握ったまま静かに私が話し終えるのを待ってくれた
そしてすべて話し終えた私に天使は言ったのだ
「ならば私の執事になりなさい!!」
これが私とお嬢様の出会いだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます