第7話 帝国
『あきら様!喜ぶのは良いですが、ここは公道ですよ?周りの目というものを気にしてください!』
と、辺りを見回してみると数人の旅人のような風貌をした人から怪しい目で見られてしまっていた。
「お、お騒がせしましたぁ…」
すると、何事も無かったかのように旅人達は行ってしまった。
もうちょい事情を聞くとか、町への入り方とか、教えてくれても良かったのに…
まぁ、それはともかく俺はやっと森を抜けたんだ!
それから幸運なことに森の少し行ったところには国のものと思われる壁があり、マップで見るとラルク帝国というところだそうだ。
「いやぁ、良かったな!王国じゃなくて!もし見つけた国が王国だった場合また探し回る羽目になっていたかもしれないからな!」
『もう、嫌です。あんな面白くもなんともなく、モンスターしか出ない森は…』
こいつも結構きてたんだなぁ…
まぁ、何はともあれこれから帝国に入るんだ!
辛気臭いままじゃ怪しまれることこの上ないだろう。
ここはスマイル!スマイ…
「なんだ?お主、見るから怪しいぞ?薬でもやってるんじゃないのか?ずっとニヤニヤしよって」
全くの逆効果だった
笑顔しとけば何となく行けるだろとか思ってた浅はかな自分を殴りたい!
「い、いやぁ、あのちょっとどうしてもこの国に入りたくてぇ、というかこの国以外行くとこがないって言うか…」
「そ、そうか。まぁ、そんなみすぼらしい見た目だからなぁ、ちなみに入場料として銅貨六枚必要だが…持っておるか?」
「も、持ってません…」
「だよなぁ……。よし!ここは俺が払ってやろう!ついでにそんなみすぼらしい見た目で街をうろつかれると帝国の品位が下がるからな、お前に銀貨二枚貸して…いや、くれてやる!」
「え?!いいんですか?というか、自分で言うのもなんですけど俺すっごい怪しいっすよ?通していいんすか?」
『余計なこと言うな!』
サラが頭の中で叫ぶ。
「まぁ、そんだけみすぼらしい見た目の間者はいないだろうしな、完全にわしの独断と偏見だ!」
すると、その兵士(四十後半?)が、ガッハッハッハッと豪快な笑い声をあげる。
門番がそれでいいのか、おっさん…。
「じゃあ、有難く通らせていただきます。あ、それと貴方の名前は?」
「ん?いやいや、わしには名乗る名もないよ。呼びたいならば、おっさんとでも呼んでくれぇ」
と、閉まる大きな門から手をヒラヒラさせながら言った。
「さっきのおっさん豪快だったなぁ」
『確かにそうですが、あれは……』
「ん?どうかしたか?」
『いえ、なんでもありません。しかし、あきら様に早急にお伝えしたいことが、』
「おぉ、なんでも言ってくれよ!」
こいつが言いたいことって珍しいな。
願い事か?まぁ、その場合はなるべく叶えてやらないとな。
散々森では助けられたから、お返しくらいはしないとだし。
『私の声は他の人に聞こえていませんよ。』
「うん、それがどうした?」
すると、サラが大きなため息をはく。
何がいけないんだ?他の人には聞こえない…俺には聞こえる…俺にしか……!!
「も、もしかして…?俺1人で喋ってるヤバい奴?」
また、サラがため息をはく。
今度は呆れたようにではなく、同意したように
俺は辺りを見回す
当然、皆俺を憐れむような目で見ている。
あ、終わった…
「お…お騒がせしましたぁ!」
気づくと、俺は全速力でその場から逃げていた。
『あきら様はもう少し周りを気にする癖をつけた方が良さそうですね…。』
なんてことをサラが言ってた気がするが俺はもうそれどころじゃ無かった。
…………………………………
???視点
「いやぁ、ありゃ凄いな。あんだけの強者の風格を持ちながらみすぼらしい見た目をしてたからな。ありゃ近い将来化けるじゃろ」
「貴方がそこまで言うならそうなのでしょうが、ではどうしてそのようなみすぼらしい姿だったのでしょうか?」
「うーん、それは分からんが、あくまで可能性としてだが森を挟んである王国は異世界から勇者の召喚をおこなったそうだ。」
「もしや…追放された?でも、どのようにしてあの森を抜けたと言うのですか!?」
「分からぬ。だが、彼奴は王国にも分からぬような力を秘めとる。下手に刺激して国から出てゆく事にならぬようにしろ」
「仰せのままに、我が王 ガルファス・ド・アラン様。」
彼奴は化けるぞ。わしの長年の感が言っとる。
これだからやめられん。街の散策は。
と、皇帝は城で一人笑うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます