田野楽妖物双六~タノガクバケモノスゴロク~

津々楽春人

雅な国のとある夜

あと2,3日で満月を迎える

月明かりだけが頼りの心もとなくも

趣を感じる暗さと道幅が広く左右の塀がぼんやりと視界に入る様な道


地面は大きな石類は取り除かれ

両サイドの屋敷を敷きる塀は白く

途切れるところをしらないくらいまっすぐと長い


そこに動く影が二つ


水色の透けるように軽い袖が手の動きに合わせて舞い、肩で揃えた真っ直ぐな黒い髪は少しの風と合わせて靡き視界に入る


目の前の少し離れた影を確認し


描くは大きな丸と星を横に3つ


「目の前の化け物を捕まえろ」


変わらず風に遊ばれる自らの着物と髪のみが動く

影も自らも微動だに動くことはなかった

動けなかった



自分のイメージとしては


ここで光が出てきて


敵側は叫び声を上げながら浄化されるはずなのだか、光は出ず。


いち早く現状を理解して動きを始めたのは向こう側だった

黒い影はだんだんと距離を詰めてきたようで

大きめのゴリラみたいなポーズに水牛のつのみたいな形をしているところまで認識できた



『ひやっつはわわはわははひ』


とても楽しそうに

飛び跳ねながら向かってくる


何言ってるかわからないけれど間違いなくピンピンしてるどころか、先程となにもかわらないのはわかる。


やつは一度止まりそのままその場でジャンプをきめ

こちらにとびかかるタイミングを測っていた


ごわごわとした毛にギラギラとした目が鈍く光ながら上下に動いている


気持ち悪いし、普通にホラーだからやめてほしい。


嬉しくないことに近づいてきてくれたおかげで、怪我ひとつしていないことがわかる



ということは自分は何もできていないわけで



やっぱりダメだったか


落胆するのに許された時間はわずか数秒


動きだけは華麗に飛び跳ねた物の怪は大きく右手を振りかぶり長く尖った爪をこちらに流す


自分はその動きと同じ流れで斜め後ろに下がり避ける、無駄にひらひらした狩衣の袖がぎりぎり切れない程度を意識して。


大きく移動すると次の所作に遅れが生じる


空振りはバランスを崩しやすい

すかった爪を地面に擦らないように動きを変えた物の怪は前のめりの体勢になった


次に飛びつかれる前には終わらせてなくては


ひとまず頭を思いっきり下から蹴る

まっすぐな通りをまっすぐ縦回転で一周

痛手ではあるだろうが、気絶はしていない。そしてこういった勢いでだいたいのやつは逃げようとする。しかし、ここまで戦って逃げられたら後が面倒極まりない。


物の怪は物理的な攻撃ではボロボロになっていても、本格的に祓うことはできず、数日で回復してまた元気にやってくるものである。




自分のプライドよりも襲われる方が非効率


気合いを入れ直して同じ印を結ぶ


ここまではさっきと同じ



「目の前の化け物捕まえて"ください"」



ふわっと風を感じ、くるくると優しい竜巻が自分の周りをめぐる

これがまた上から目線で笑われたのうな気がするから嫌ではあるのだけれど


風は白い光になると左右と真ん中へと分かれ、蹴り飛ばして遠く影がうっすら視認できる化け物へと向かっていく。



『おっえ、えええええ』


化け物は光に呑まれて足元からガラスの結晶を照らしながら砕けていったような美しくさで消えていった


誰も歩かない静かな道で大立ち回りをし

夜中の町は落ち着きを取り戻す


この不思議な光は強い力ではある


使いたくないだけで


自分の身体能力は高いと数年前に気がついているし日々鍛錬を怠っていない。

そのため人間相手はもちろん、化物空いてでも倒す気絶は容易にできる。



しかしながら化物は物理攻撃ではすぐに元気になってしまうので、殴る蹴るでは長期的に見て意味がないところが大問題なのだ。

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