閑話1 山野 純一という男

「山野店長~。接客代わってください~」


俺は休憩中、異世界ラノベを読んでいた。

俺の名前は「山野 純一」この店の店長だ。


俺は、休憩中なのに・・・とブツブツ言いながらも店に出る。


「異世界に持っていく弓ですか」と真剣に考えたフリをする。

そして即クロージングに入る。


「どんな世界?」・・・なるほど。

「相手はモンスター?魔族?」・・・なるほど。


「だったら、これかな。」と、アーチェリーを薦める。

こんな形状絶対に異世界にはないよ、見る人は絶対に

「かっこええええ」と思うよ。


「異世界ではね、かっこいいと強いはイコールなんだ」

と適当に言う。


アーチェリーが気に入ったみたいなので、

しかしアーチェリーにあんまり詳しくなさそうなので

中古のセット品を薦めた。


これって本当は部位、部品を組み合わせて

オリジナルに仕上げるんだけど、これ使ってた人って結構

こだわってた人なのでスペックは高いよ。・・・と。


・・・実際は使ってたのは俺だ。


お?お?即決してくれた。ありがとう・・・。本当に。

びっくりしたのでちょっと親切に教える。


ラノベとか読んでる?と聞くとそりゃもう、

とその客は答えたので、いいこと教えてあげた。


「矢はもったいないからかっこ悪くてもキチンと回収してね」

ほら、ラノベでは矢って無限ぽいじゃん。

実際、アーチェリー専用のがいいし。

そこがさ、唯一、リアルと違うんだ。と力説してあげた。


「もしかしたら魔法込める?」とも聞いてあげた。

どうやら未定らしい。だったら・・・


「最終的にはドラゴンとか殺るんだったら魔法付与は必要と思う。

 ドラゴンは属性を持っているのよ、精霊の親玉みたいなものね。」


「異世界によって違うと思うけど、例えば地竜、アースドラゴンね。

 土属性なので風属性を込めたり。

 そこはその異世界の魔法使いに聞いてね」


「なのでアーチェリーの矢、実際はアーチェリー自体もだけど

 マジもんの敵とやる場合に使用して通常使うのは向こうで

 使い捨て買った方がいいかもね。安いやつ。」


「普通、こっちの人間があっちに行っちゃうと、トンでもない力が

 あるので十分だよ。そんな人俺知ってるから。うん。」


しかし・・・と続ける。


「ドラゴンを殺るには絶対にこれだ」と

目を光らせ(それっぽく)言ってやった。


「付与は敵の属性がわかった時点で行う事、絶対だ」

とも付け加えた。


その客は凄く嬉しそうに納得していた。


そしてお会計。


21万3000円になります。

(・・・・ちょっと値引きしてやろう)

あー、お客さんに異世界で頑張ってほしいから

少し値引きするね、20万ちょうどでいいよ。


お買い上げありがとうございました~。


俺の名前は「山野 純一」。



向こうでは「オーメドッグ」と呼ばれていた。


残念ながら・・・

さっきの弓は俺が使ってた神器とかではない。

期待に添えられずにすまない・・・。







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