不思議な言葉

空き缶文学

プロローグ

 親切な狼は、おばあさんをぺろり、と食べてしまう。

 知恵もある狼はおばあさんの服を着て、布団を顔までかぶって女の子を待った。


 ――どれだけ時間が経ったのか、真っ暗な時間になってもやってこない。


「おかしい」と、気になって扉を押し開けてみる。


 外に、狩人がいた。振りかざしたナイフが右目を切り裂く。

 張り裂ける痛みと暗転に、転がりまわる。


「ひどい、なんてことするの?!」


 女の子の悲しい叫び声が尖った耳に届いた。


「お嬢さん、この狼はおばあさんを食べたんだよ。我々と同じ言葉を話し、人を騙す恐ろしい獣だ。さぁ腹を裂いておばあさんを助けてあげないと」


 悲しみと同時に怒りの感情が、手を震わす。

 狼は左目に一生忘れない出来事を焼き付けた……――。

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