第34話

――――


 リーエは猛スピードで砂漠の砂粒の谷を滑走していた。

 スピードは時速420キロ。

 ソニアルの性能は予想以上だった。


 リーエは焦っていた。

 恐らくは遺伝子工学研究所にもSFTSがいる。いや、もうすでに大規模な襲撃を受けているのかも知れない。そう直観めいたものがあった。


「間に合ってくれ! あ、おひるねこ。今のうちに缶詰を食べていてくれ!これから激しい連戦が始まるはずだ!」


 リーエは底が抜けるほどアクセルを踏んだ。


「ソニアル! 頼む! 無理にでも急いでくれ! SFTSに遺伝子工学研究所を襲われたら、フラングレー司令官が襲われたら、私たち人類はおしまいなのだから!!」

「にゃー? ふー!」


 おひるねこは首をかしげたが、食事に夢中だ。


「遺伝子工学研究所……そこには一体何があるのか? けれども、人類の存族の希望があるはずだ! 急げソニアル!!」



 殺風景な砂漠の砂粒の谷を突っ走るソニアル。

 リーエはなおもアクセルを踏んだ。

 時速は480キロにもなっていた。


 砂漠を抜けた。


 綺麗に舗装された道路が現れる。

 遺伝子工学研究所はリーエが名前も知らない都市の中央にあった。


 ソニアルは480キロで無人の道路を走る。


「リーエ。データによると、ここは今から5年前に死んだハイシティという名の都市でした。決して荒廃してはいませんが、SFTSの大規模な襲来によって、全市民がSFTSと融合したと言われています。この周囲を囲む砂漠は実はハイシティの人々の居住区のなれの果てと言われていました」


 ソニアルの機械音声は続く。


「遺伝子工学研究所には、7年前のSTFSとの大戦以来から続く遺伝子継承プロジェクトによって、人類の遺伝子と培養ポットがあります。したがって、大戦中の男性の記憶を移植した少数の戦闘能力の高い男性型ソルジャーも保管されていると言われています。これらは最重要機密です」


 リーエは仰天して、ハンドルを握る手に力を入れ過ぎた。


「な、なんだとーーー!!」

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