第32話

 途中、忙しなく行き交う女性軍人二人にジェリーの特徴を伝えて人探しを手伝ってもらった。


 緊急時なので本部内の放送を使おうと思ったが、生憎とスピーカーからは空からの激しい空襲の迎撃命令で忙しかった。スピーカーでしゃべっているのは、司令部の近衛士官だ。


 リーエは走りながら、おひるねこにも注意をした。

 通り過ぎる女性軍人の中にもTUがいるかも知れないからだ。


 おひるねこは終始警戒していたが、走り去る女性軍人に首を向け、リーエの顔を見た。


 瞬間、リーエはソードエネルギーを抜いたが、その方向には誰もいなかった。


「にゃーー!」

「ぬっ!?」


 おひるねこの首の方向に気づくと、目の前に女性軍人が立っていた。

 一発の銃声が鳴った。


「ふん! 浅はかな……そら!」


 リーエは何事もなかったかのようにソードエネルギーで女性軍人の胴を薙ぎ払う。緑色の液体がアクリル板の床に広がった。


「ふっーー。危なかった。おひるねこがいて良かったぞ。ありがとう」


 リーエの軍服は特殊繊維でできていて、小銃程度なら弾丸が弾かれるようになっていた。


 だが、TUが例え擬態していても、あまりにも素早過ぎるのだ。

 今までは不意打ちのように斬っていたのだが、これからはそうも言っていられないのだ。


 リーエの中で、おひるねこが命を守るかけがえのない猫となった。


 騒ぎに気づいた武装した女性軍人たちが集まってきた。その集まりの中に、偶然ジェリーがいた。


「良かった! ジェリー! この猫を一時だが預かってくれ! それじゃあな、エデルも守ってやってくれよ。私は遺伝子工学研究所へ行く! 」

「え?! 待ってくれ! この猫でどうしようっていうんだ?」

「名前はおひるねこだ。この猫が警戒して鋭く鳴いたら、そいつはTUだ。首の方向にも気をつけてくれ。そいつはTUを見分けられるんだ」

「了解! 私も猫は好きだ」


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