第4話

「リーエー! 後ろよー! 来たわよー!」

 クリスは自動車で素早いリーエを本部から追ってきたのだ。

「そんなにスピードを出さないで下さい」

 凄まじい北風が吹き荒れる中で、どこからか男の声がした。

「あら? そう? でも、何度聞いても良い声ねー。開発者のエデルは車の声をわざわざイケメンタイプにしたのね。前衛へのサービス精神って受け取るわね」

 クリスは乗っていた新車のハンドルを撫でた。


 クリスの乗る車はAI。人工知能を搭載した自動車だった。

 AIの名前はソニアル。

 参謀将校であるエデルがアベンジャーズ・ザ・ウィメンズの研究所で男性タイプの自由思考型自動車を造ったのだ。


「ほんと懐かしい声色ね……」

 クリスはリーエのバックアップを好きでしている。そのため戦場を走り回るリーエをいつも車で追いかけているのだ。


「はっ! とっ! どうした! ノロマめーーー! 遅すぎるぞーーー! 寝ているのかーーーー!!」


 戦闘中は数々の勲章がある軍服姿のリーエは、高圧的で高慢な態度に豹変する。そして、常人離れした集中力で、ソニアルの存在のこともクリスのことも知ることもなく。非常に凶暴な動物型SFTSを次々と両断していった。


―――――


「今日でちょうど。か……」

 リーエは神妙な顔をして少し俯いた。


「そうかしら……? もうそんなに経っているの? それなら今日で……確か、ここへ配属されてから2年目になるわねえ。あなたもだいぶ組織には慣れたようね。リーエ……最初はあなたはまるで狂犬だったわ。誰も手が付けられないほどの……。あ! そっちのことよね……ごめんなさい。そんなに焦らないの。理想的な男性はまだこの星に必ず生き残っているから……」

 クリスは苦笑いする。


 ここアベンジャーズ・ザ・ウィメンズという本部内で、リーエとクリスは同期だった。アクリル板の床を二人は歩いていた。これから、ここの司令部へと向かう途中だ。


 なんでも、南西部の砂漠地帯に新種のSFTSが見つかったので、帰って早々に呼び出されたのだ。


 リーエは元々、恋人がいなかった。最愛の男性を探しているうちにスカウトされ。リーエとクリスはお互い高い戦闘能力に恵まれ相性も良いので、二人は同じ任務に就くことが多かった。


 通路を行き交う人々は、赤と黒のシックな軍服姿に赤のマントを羽織る女性ばかりだ。

 男は一人もいない。

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