#24
「私たちは、あなたの、アイの幸せをいつまでも祈っています」
目の前で母が私への愛を告げ、感嘆極まって泣き出した母の背中を父が撫でる。
カメラマンとしてふたりの動画撮影を手伝っていた私は、ちょうど聞きたい事があったなと、口を開いた。
「ふたりはなぜ私を福岡のパトリエに入れたの」
それは物心がつき、私が東京の病院で生まれたと知ってから、ずっと不思議に思っていた疑問だった。
動画の中で、母は産もうと決意するまでの葛藤は語っていたけれども、なぜ私が福岡で暮らすようになったかは語らなかった。
幼年期の担任によると、私が市民の子に来たのは生後五十七日。市民の子に入れる下限だったらしい。
転出元の病院からの紹介状では親の意向とだけ書かれていたようで、それなら動画の中でなぜ私を福岡に送ったのか説明があってもいいはずだとずっと不思議だった。
けれど私が問いかけても、ふたりは無反応だった。
せっかく長々とカメラマンをしてあげたのに、互いに笑い合うだけで私には一瞥すらくれない。
腹が立った。
私はこんなにもふたりのことを考えているのに、ふたりは言いたい事を動画に残したらあとは知らんぷりだなんて。
「無視しないでよ」
そう叫ぼうとするけどうまく口が動かない。まるで金縛りにあったよう。
なんで口が動かないのか。そこで私は口元になにかが覆い被さって、言葉が出ないだけでなく呼吸さえも苦しいことに気付く。
なのにふたりは知らん顔。
すぐそばで子どもが死にかけているのに、なんで彼らは平気な顔でいられるのだろうか。
ふたりは私の親のはずなのに。
人生の最期に私という子どもの誕生を願ってくれた親のはずなのに。
苛立ちと恐怖をまぜこぜに、無視しないでと懸命に息を吸い込み、取り込んだ空気すべてを使って叫ぶ。
「無視しないでよ」
やっと言葉に出せたと安堵した瞬間、私がベッドの中でうつ伏せになり、枕に顔を押し付けていることに気付いた。
寝言を叫んでしまったせいでカエデが起きていないか確認するけれど、隣のベッドでは、毛布に包まれた小さな小山がゆっくりと上下に揺れているだけ。
無様な様を見られなくてホッとするとともに、恥ずかしい夢を見てしまったと髪をくしゃくしゃとかきむしる。
毛布を跳ね飛ばし、身を跳ね上げ、バスルームの鏡の前に立つ。
涙で濡れた顔を荒っぽく洗っていると、覆現から睡眠中に新着メッセージが来たという知らせを受ける。
フウマからの返信だった。
急で悪いがなるべく早くに自分の事務所に来てほしいというメッセージ。
せっかちだなと思うけれど、千載一遇のチャンスだと思えば浮足立つのも仕方ない。
早く目が覚めてやることもないし、今から事務所に向かうと返信して、そのまま身だしなみを整える。
「もう出かけるの」
名義貸し業で巻き上げたリップを塗り気合を入れていると、遅れて起きてきたカエデが声をかけてくる。
「うん。ちょっと両親のことでね」
「そう、がんばってね」
「カエデは」
私が尋ねるとカエデは覆現になにか連絡が来ていないか視線を走らせ、
「父親から連絡あったら会いに行くかも」
と言った。
「今日は一緒にご飯食べれるといいね」
この前の誕生日にカエデからプレゼントしてもらった、流行りのロングブーツに足を通し、ホテルを出る。
朝の通勤時間帯。同じように電動スクーターで職場を目指す多くの通勤者と共に、フルカワの事務所を目指す。
目的地から数十メートルまで近づいても目的地を示すピンがどこにも見当たらないから、戸惑ったけれど、単に目的地が地下に潜りこんでいただけだった。
ビルの一階。
半分地面に埋まりこんで、採光用の小窓だけが道路の上にのぞく居住環境の悪そうな物件が彼の事務所だった。
「早いな」
待ちわびていたのだろうか。スクーターをどこに止めたらいいか考えていると、地下の入り口からフウマが顔をのぞかせていた。
「早起きしただけだから」
建物の裏手の駐輪場にスクーターを止めるように指示を受け、半地下の事務所に招待される。
「今日会わせたい人がいるとは言ってるんだけど、アイツ暇だと勝手に競艇かパチンコに行くからさ。なるべく早く来て欲しかったんだ」
紙の書類が押し込められた段ボールが積み重なり、狭くなった廊下を案内されながら、フウマが事情を話す。
「その人もこっちに来てもらうの」
「いいや。奴は日野に住んでるから呼びつけても来やしない。覆現で呼び出す」
突き当りのドアを開き、廊下以上に段ボールで埋め尽くされた部屋に入るよう促される。
「普段は物置でさ、多少埃っぽくて済まない。同じ部屋は嫌かなと思って」
配慮してくれたのだろうけれど、それならちょっとは掃除してほしかった。
「ありがとう」
とはいっても同じ部屋で男と一緒に無防備になるのも嫌だ。
一応お礼を言って椅子の周りだけでもきれいにしようとする。
「じゃあ先に待っててくれ」
彼が部屋から出ていき、一応念のためにドアに鍵をかけてから、椅子に座り、瞼を閉じ、仮想領域に沈む。
覆現の仮想領域で自己のアバターの外見をいじったりしてしばらく待っていると、ふたりの人間が領域に入ってきた。
「会うのは住吉君とだけ、のはずだが」
領域に入ってきた途端、不快感をこれっぽちも隠さない声で尋ねられた。
立派な髭を蓄えた老人のアバター。彼がフウマの言っていた元職員だろう。
フウマが説明しようとするのを遮り、口を開いた。
「私は都立病院で、死後生殖で生まれた市民の子です。私の出生日と、白血病で闘病生活を送っていた両親の没日に矛盾があり、フウマを介してあなたに連絡を取ってもらいました」
私が自らの出自を明かすと、アバターの彫の深い目が見開かれた。
「私の出生届を処理したのはあなたでした。なにか知っているのではないのですか」
老人がゆっくりを髭をなでる。その手は痙攣するように小さく揺れていた。
「何分昔のことだからな」
直感で嘘だと分かった。
「然るべき場所に出てもいいんですよ。私はフウマとは違い当事者なので。出生を知る権利があります」
何も知らないととぼけ続けられたら、時間もお金もない私には厳しいけれどその事情を相手は知らない。
老人が口を一文字に黙り続けるのを見て、私は畳みかける。
「訴えられることを恐れているんでしょうが、私が興味を持っているのは、自分がだれの意志で産まれた存在なのか、それだけです」
そう。たとえ最悪の真実が待っていようと、だれかを罰したところで真実が覆るわけでもない。
望みは真実だけだ。
「だれの望み、か」
老人が嘆息する。
「望んだのがだれか問われれば、国民の望みだろうね」
ぼそぼそと老人が語りだす。
「なぜ、市民の子が育つ施設をパトリエと呼ぶか知っているか」
「パレンス・パトリエのもじりさ」
老人の急な問いかけに、当然とばかりにフウマが答える。
「パレンス・パトリエ。国親思想。国には親からの適切な庇護を得られない子を保護する義務があるとする考え方。イングランド大法官裁判所において後見人の不当な行いから未成年相続者を守るため考え出された概念は、子どもの権利の向上と共に国は不適切な親の代わりになるべきだとする思想に発展した」
かつて子どもはヒトではなかった。
高すぎる乳幼児死亡率によって、子どもは儚い存在、死んでしまっても仕方ない存在、童だとみなされていた。
だから親が子をどのように扱い、殺めてしまおうと、罰されることはなく、聖職者が説く嬰児殺しの禁忌はお題目に過ぎなかった。
けれども近代は「子ども」を発見した。
大人の出来損ないではない、相応しい養育と教育を必要とする存在だと定義した。
「そうだな。社会が加速度的に発展していく中で、適切な養育に求められる養育基準も青天井で伸び、必然的に子を育てるに値しないと見なされる大人も増えていった」
フウマと老人の話は本題から外れているように思えて、いらだった。
「何が言いたいのよ」
歴史の話を聞きたいわけじゃない。
「じゃあ義胎妊娠のガイドライン規定は知っているか」
老人は私のいらだちを無視して質問を重ねる。
首を横に振る。
「『養育義務を自発的に負う一人以上の成人の希望によって義胎妊娠は行われる』だ。なぜこのようなルールがあるのだと思う」
しばし考え、自然と浮かんだ答えを口に出す。
「子どもには親がいるものだから」
「そうだ。子どもには親がいる。どんな生物もそうだった。卵が先かニワトリが先かは分からなくとも、親が居なければ子は産まれない」
ヒト以外は、と。
「子どもには親がいるという考えは、母胎妊娠で子を持つなら当たり前の話だが、義胎妊娠では違う。十八歳になれば半ば義務的に採取される精子と卵子を受精させ、義胎に移植すれば子は生まれる」
そうやって生まれた子にも生物学的な親は存在するけれど、けれどそれは子どもたちが望む親ではない。
「まるで機械みたいな生まれ方ね」
たとえ履行されることはなくとも、自分がこの子を育てようと自ら自発的に望んでくれた人がいたという事実は、子どもにとって自分がこの世に存在していいと信じるに足る心強い理由となる。
だれにも望まれず、ただ生まれるだけなんて。
そんなのはさみしい。
「多くの人はそう言う」
老人は嘲るように笑い、
「だが子どもは幸せに育つべきだと語る連中が、自分が親になる番になると途端に尻込みする。自分はまだ人生を楽しんでないとな。そして自分が老いると今度は自分を支える若い世代が少ないと憤る」
「人々は子を持たなくてもよいという権利、子どもには親がいるべきという規範、共同体の維持には人口再生産が必要であるという摂理。トリレンマ構造ですね」
老人がうなずく。
「出生数を増やすために本人の意志を無視した死者生殖が行われているということですか」
フウマの直截的な問いに老人は唇を一文字に結び、私にちらりと視線を向けてから、
「俺がやったのはこれだけだ」
と渋々と認めた。
本人の意志を無視した死者生殖。
その言葉が何を意味するのか、考えたくなくて、私は思考停止する。
「他の人はやっていると」
「詳しくは知らない。少なくともうちの役所じゃやっていない」
根掘り葉掘り聞こうとするフウマに根負けした老人が自発的に白状する。
「うちの一番の稼ぎ頭は病人への斡旋だ」
「死期が近い人々に義妊を行わせるということですか」
「ああ。区内に総合病院が三つもあるからな。それに自分の死を意識した人々は義胎妊娠に前向きになりがちだからお得意様だったよ。子どもに遺伝性の疾患が伝わることを恐れている奴がいれば受精卵ゲノム編集の紹介をしてやるし、治療費の心配をしている奴がいれば公的扶助の申請が通るよう手引きしてやる。俺が勤めていた人口課では、毎年目標出産数のノルマが決まっていて、ノルマを達成するために毎日毎日年から年中、医療費の助成制度の告知活動を建前に病院に通って営業を掛けるのが仕事だったわけだ」
「その中に、私の両親も入っていたの」
「そうだな。父の方は同意が取れて凍結配偶子使用届までは出したんだが、相手の卵子をどれにするか卵子バンクから選んでいる最中に急変してな」
「母もそうなの」
「いや、彼女は違う」
老人が記憶を探るように顎に手をやる。
「義胎妊娠の手続きも順調に進んであとは義胎妊娠届を出すだけの段階になって、彼女は突然意思を翻した。説得しようとしたが面会も断るほどの拒絶でな。最後は文字メッセージで断りを入れられてそれで仕舞だ。そのときはノルマが未達で、しかも上司が」
「なぜ彼女は子どもを生むことを断ったの」
つまらない言い訳を遮り、冷たく尋ねると、老人の視線がすっと左上を向いた。
「知ってるなら素直に出して」
脅しも上手くなったもので、老人はおとなしく古いデータを送ってきた。
「義胎妊娠届を出さない彼女に何回か催促のメッセージを送った後にそれが送られてきた」
メタデータを見ると、日付は彼女が死去する一ヵ月前。
見ないままにしたほうがいいんじゃないかと、一瞬浮かんだ恐れに近い考えを振り払い、メッセージを再生する。
「私はもう半年も生きてられないでしょう」
私が一〇年間、覆現の中で何度も何度も繰り返し眼差しを交わし合った母親と同じ女性が動画と息遣いまでまったく同じセリフを告げる。
けれど、メッセージが進むにつれ、女性が語るセリフは私の記憶と少しづつ解離していく。
「貴方が産まれるまでに私は死んでしまう」と語るセリフは、「次の春までに私は死んでしまう」という言葉に置き換わり、「自分で産めなくても愛は変わらない」というセリフは「自分で産めないことに怒りさえ覚えてしまう」と真反対に変質していた。
母親と同じ顔をした、なのに全く異質な言葉を語る女性。
彼女のこけた頬、食い散らかされたリンゴの芯のような腕に恐ろしささえ覚えてしまう。
メッセージの中盤、切れまなく語り続けていた女性が決壊するように泣き出してしまった。
このシーンには既視感があった。
感嘆極まって泣き出した母親を慰めるため、動画の外側から父親が駆け寄り、母を慰めるのだ。
けれど、動画は私の記憶通りには進まなかった。
泣き続ける女性を慰める男性は現れず、ただただ哀れな泣き声が静かな病室に響くだけ。
さみしく、むなしいすすり泣きが響くだけ。
「義胎妊娠の申し出を聞いた時は、救われたような気持ちになりました。この先どれほど生きれるか分からない私にも残せるものがあるのだと思うと、自分の虚しい生も肯定することができる、そんな風に思ったんです」
泣き顔のまま彼女が微笑を漏らした。それは本来であれば、私への愛おしさを語る場面で見せるはずだった微笑み。
「けれど、最初は救いのように思えていたことも結局自分自身の否定にすぎないと気付いたんです。病が遺伝するんじゃないかと心配した私に対して、あなたは受精卵に遺伝子治療を行えば遺伝しないと言いましたよね。私はその言葉で義胎妊娠を決意しましたが、同時に否定されたような気持ちにもなったんです。その時はなぜ自分がそんな風に思ったのか理解できなかったけれど、今なら言えます」
涙が残る頬をこすり、鼻を啜って息を吸い込んで、彼女は次の句を告げる。
「私にとって、この病は自分の人生をメチャクチャにした厄介者ですけれど、それでも人生を共にした家族なんです」
一目見ることも叶わぬ我が子の愛らしい姿を想像してこぼれたはずの微笑を浮かべたまま、貴方は私たちのアイの結晶だと愛を告げるはずの唇で、彼女はそう言った。
彼女の家族は私ではなく、自分を死に至らしめる病だと。
「不都合な遺伝子だけ取り除いて、自分が育てることもできない子どもを生むことの意味なんて、結局は病がなければ送れていたはずの華やかな人生を代わりに送ってもらうための、自分のクローンでしかありません。そんなくだらない目的のために生まれ得る我が子はかわいそうだと、そう思ったんです」
違う、と叫びたかった。
どんな目的であれ、私はあなたから託されたかった。
エゴでまみれた親の愛を与えてほしかった。
そんな叫びは彼女に伝わらない。
彼女と私は遺伝情報を半分共有するだけの、同じ時間を共有したことも、彼女の胎内を占有したことも、彼女の愛を独占したこともない、ただの他人に過ぎないのだから。
「私はひとりで死んでいきたいと、そう思います」
その言葉とは裏腹の笑みを最後に、彼女の姿が消え去った。
あとに取り残されたのは私だけ。
何も託されず、何の意味も与えられなかった私だけ。
「私はだれにも望まれなかった子、なんですね」
何も見たくないと目を閉じようとするけれど、すでに瞼は痛いくらいにぎゅっと閉じられている。
角膜に埋め込まれた覆現インプラントが映し出す光景は変わらない。
顔を背け、手で覆い、瞼を閉じたところで、不愉快な真実から逃れることはできない。
このような真実を想像していなかったわけじゃない。
私の着床日とふたりの没日に空白があると知ったときから、いや、なぜ東京で生まれたはずの私が福岡で育っているのか疑問に思った時から、私のルーツは覆現が語るような美しいものではないのかもしれないという恐れは抱いていた。
けれど、綺麗な夢物語が幻だとしても、真実の中にも希望が残っているんじゃないかと期待していた。
父と母、どちらかは本物で、私はかれらの意志によってこの世に産まれ出ることを望まれた、そんな夢物語を期待していた。
もちろん真実はそんなに甘くなかった。
要領の悪い役人がノルマを達成するため、いつか必ずバレてしまうようなチープなやり方で死人の名を騙っただけ。
有り合わせの卵子と精子と組み合わせただけの、数合わせのため生まれただけのヒト。
それが真実だ。
「なんでアイって名付けたの」
もうこれ以上知りたい真実もなかったのだけれど、未練がましくそんなことを聞いてしまった。
私の名付けの理由を騙るあの感動的なムービーは虚偽だったわけだけれど、それでも私の名がアイであることは変わらない。
感動的な理由なんてあるはずもないのに、私という存在に与えられた唯一のプレゼントの由来を知りたくて、無意味な問いをしてしまう。
私の質問を聞くと、老人の口角がわずかに上がった。
「IDだよ。君のIDの下二けた、A1だろう。1はIに似ているし、1はゼロの次の二番目の数字で二番目の文字のイに変換もできるから」
つまらないジョークを解説する老人の軽薄な語りに思わず手が出た。
相手の頬を叩くはずだった掌は空を切り、暴力的行為を咎める警告文が目前に現れる。
「単なる文字遊びってことなの」
自分が叫ぶ怒鳴り声に、私自身が驚いていた。私の中にこれだけの怒りが湧くなんて。
突然声を荒げた私に驚いた老人が「すまない」だとか「そんなに怒るとは」なんてぺらぺらとした謝罪の文句を並べるけれど、聞けば聞くほど神経をイラつかせるだけ。
「もう聞きたいことはないわ」
フウマに一方的に告げ、返答も待たずに覆現から抜けていた。
「バカ、バカ、バカ」
長時間の覆現の後に必須のめまいに顔をしかめながら、ほこりっぽい室内の空気にむせながら、肺にたまった空気を全部使い果たすまで、精一杯のがなり声で悪態をつく。
うまく嘘を取り繕うだけの能力もない癖に義胎妊娠の不正利用に手を染めた老人にむけて。
直前まで子を生むことを決めておきながら直前になって態度を翻した遺伝子上の母にむけて。
そしてチープな夢物語を一六歳になるまで疑いもせず信じ切っていた私にむけて。
世界すべてをののしる。
小さな肺からありったけの憎悪を吐き出した後、心の底に残っていた後悔をぽつりと口にする。
「あんな動画なければよかったのに」
ああ、まったく。私はとんだ道化だ。
自分が誰にも望まれぬ子であったと知るのなら、最初からあんな心地よい夢を見せてほしくはなかった。
潤んだ視界のまま、覆現を開く。怒りや悔しさ、悲しみ、様々な感情が混ぜこぜになって薄汚れた黒い気持ちにまかせて、動画を消した。
「ずっと、ずっと、居もしない親を神みたいに崇めて、本当にバカみたい」
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