四話
研究所の内部を探索している途中、妙な場所を見つけた。ただし見つけたのはこれが初めてではなく三度目だ。
部屋の前に複数の怪物がたむろしているのだ。その部屋のドアも他とは違い一回り大きく頑丈そうで、中になにかありそうな雰囲気を醸し出している。
捜索していってもめぼしいものが見つからないから中を探りたいのだが……どうすべきか。
やはり手っ取り早いのはあの男を誘導すること! 大きな音を立てさせればいい。その手っ取り早い方法は僕が突撃して食べられること! ……本末転倒じゃないか。
僕は死体を怪物たちの前へ放り投げることにした。停止状態でほっとかれてる死体がいくつかの部屋の中にあり、それを運んで持ってきて食べてもらい、盛大に音を立ててもらう。あとはやってきたあの男が殲滅してくれることを願おう。
そういうことで僕は怪物をやり過ごしたり男の銃声に気をつけながら、通路を右に左にと歩き回って死体のある部屋を探し始めた。
探し出して一回目の部屋……ない!
二回目の部屋……ない!
三回目の部屋……ない!
四回目の部屋……ない! あれ? まあまあ死体を見た記憶があるのに探し出すと全然見つからないじゃん。
七度目の部屋……ん? 中のベッドの毛布が盛り上がってるな……これはまさか…………あった! しかもゾンビ化していない死体だ! 毛布にくるまって拳銃自殺したらしい。
……ゴクリ。僕も一口くらい……いやいやいや、何考えてんだ! あの怪物に一口でも多く食べてもらった方が良い! ……良いんだけど…………。
バクッ! むしゃむしゃ……うぇ、血が冷てえ! やっぱりいらないわ。
死体を引きずりながら外に出る。だいぶ遠くなっちゃった。それに引きずりながら動くのはすごく遅くなってしまう。怪物には警戒しとかないとな。
引きずって引きずって……やっぱり遅いな……時間はいくらでもあるけど―――
ダン! ダン!
銃声だ、近い! どうする? 僕も死んだフリした方が懸命か? いややめておこう。時間はあるんだ、もっと確実に安全な方法を取ろう。死体は置いといて部屋に逃げ込むか。そう判断して僕はすぐ近くの部屋でやり過ごすことにし、そして一応部屋にあるもので身を隠しておいた。
男の姿はドアを閉じたため見えないが、しばらくして背負ったカバンの銃が擦れる音が聞こえてきたため部屋のすぐ前に来ていることが分かった。
ズドン!
……ん? 銃声? なんで……あそこには僕が置いた死体しか無いはず……まさか!
普段は死体みたいに寝そべってるけど近くを通ったら起き上がってくるタイプのゾンビをケアしているのか! あ、危なかった……! あのまま死んだフリしてたら死んでたぞ。最初から死んでるんだけど。
もう安心な頃合を見計らって僕はドアを左右を確認した、大丈夫そうだ。
下を見ると見事に額の真ん中を撃ち抜かれた死体があった。手馴れてるな、ゾンビのこと……。
僕は引きずりを再開し、三度怪物に出会ったがくぐり抜けてきた。僕が油断してたのも悪いけどいきなり後ろから走ってきた怪物には心臓が止まりかけた。その時はスライドドアの部屋の中に避難して事なきを得て、そんなこんなで今は集団からは死角となる、集団が居る通路の角を曲がった場所に着いた。
死体の肩を掴んで今ある力を出し切り、怪物集団に見えるように床に投げ込んだ。
怪物たちが唸る音がすると同時に僕は駆け出しす。駆け寄った怪物たちが死体を喰うタイミングと僕が部屋に入ったタイミングは同じだった。
数が数だけにやはり肉が裂ける音と怪物の唸り声の壮絶な音がする。あの男もこれを聞いてるといいが……。
ズドン!
来た! 正直遠すぎて来ないのかと思ったぞ!
ズダダダダ! ドン! ズキャーーーン!
怪物の声も含まれてだいぶ激しい地獄のような音が聞こえる。しかし数分でそれは止んだようだ。
肉が裂ける音が聞こえない……怪物たちが勝ったのなら聞こえるはずだけど、あの男が勝ちやがったか。やばいな、あの数を一人でなんて。
部屋を出て怪物集団の死体の山の横を通り、ソロリソロリと頑丈そうなドアの中を確認してみる。すると中にはまだ男が残っていた。
やばい! と思ったがしかしあいつは中の書類をまじまじと見ているようで、急に動き出したり僕のことに気付く気配は無かった。
このままじゃ僕も中を物色出来ないけど……逆にこれは男を足止めしたと言ってもいいんじゃないだろうか? 男はなんかゾンビ化の原因とか教会の真相とかが書かれてそうな重要そうな書類を集中して見ている。しばらくは閲覧を止める気はないようだ。
中に入れないがこれはこれで好都合だ、あの男が動かないならこちらはだいぶ動きやすいぞ!
僕は捜索を再開したが、さっきまで男を警戒して行けなかった区間に行けるようになった。怪物の死体が新しいのを見るに男はさっきまでここら辺にいたようだ。
さっそく部屋の中を探していく。ほとんど男が調べ尽くしているようだったが、僕はマップまで取られていないことを確認して安堵した。
マップは会議室のような部屋の壁にパネルでデカデカと貼られていたのだ。それは出口の場所まで丁寧に書かれていた。
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