敵との遭遇率、すごく高い!
後日、午前中の授業が終わり、サトミは背伸びをしながら窓の外の薄暗い景色を眺め、
(ふぁっ、あー。……今日も空が雲で
教室内では、生徒が別の生徒に近づいていき、
「アオイちゃん! よかったら一緒に食べよー」
「もちろん!」
「アカネちゃーん、一緒にどうー?」
「あ、いいよー。一緒に食べようー」
机を隣同士でくっつけたり、複数人分の机を囲むように並べたり、友情を深める行為が行われていく。
サトミは持参してきたお弁当を机横に引っ掛けていた鞄の中から取り出し、
(まだ一日しか経ってないし、他の人といきなり仲良くするなんて、私にはむずかしいな……。ここで勇気を出して他の人とご飯を食べて、気まずい空気を作り出してイメージを下げちゃったら、今後の生活に影響が出るのは間違いないよ。よし、今日は一人でご飯を食べよう! でも、教室の中で一人で食べてたら、他の人にかわいそうなやつだって見えちゃうから、どこか別の場所に移動したいな。……うん、そうと決まれば、誰にも気づかれずに、静かに抜け出そう!)
決意を固めた勇ましい表情を作りながら、ゆっくりと椅子を引いていく。
(静かにね。ゆっくりと。ここで椅子の足と床がこすれる大きな音を出してみんなに注目されたら、おしまいだよ!)
お弁当箱が入った包みを抱えながら、無表情で周囲を見渡しながら、
(教室から抜け出そうとしてるところを誰かに見られたら何が起こるかわからないからね。ここは得意の気配を消して……は無理だから、気配を抑えて、目立たないようにゆっくりと歩いていこう。私はただ教室を歩いているだけ。私はただ教室を歩いているだけ。他の人とすれ違いそうになっても決して視線を向けちゃいけない。相手に視線を向けられていると感じさせたら、目が合う可能性が高くなっちゃうからね。つまり、認識されちゃう。あとは、できるだけ他の人の視線に入らないように、背後を通っていった方がいいよね。そーっと、できれば足音も出さないようにして、気配を抑えながら)
★
移動中のサトミを見つけた女生徒は、明るい笑顔を作りながら大きく手を振り、
「あっ、おーい!」
「ん、私? 私のこと呼びました?」
「うんうん。呼んだよー。あのさ、よかったら一緒にお昼ご飯食べないかな? なんて」
「うん。私でよければ、一緒に食べましょう。というか、私も混ぜて欲しい!」
「うんうん、おいでー!」
サトミは頭をなでながら微笑み、声をかけてくれた女生徒に駆け寄っていった。
★
サトミは誰にも気づかれずに、無事教室から出ることに成功した。
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