第239話 作戦変更です!
「まだ気付いてないから今の内に頑張るのよ!」
「ライ。この邪神って何なの!? ゴブリン村長なんて足元にも及ばないわよ!」
「フィーア、その名の通り神様なんですよ。でも、悪い事だけする神様です。ですが悪神とは違い、純粋ではなくてドロドロな神様で、だから本当に危険な神様なのです」
「ちょっと違うけど、ライの言ってるように、この世界に直接悪さをする神様って思っておけば良いわ! っ! バアルが動き出したわよ! 大聖堂が沈むわ!」
「嘘だろ!? シー兄さん見て! あそこちょうど大聖堂の敷地が内側に!」
大聖堂が崩れて砂ぼこりが舞い上がっていたのですが、その砂ぼこりがちょうど中心に向けてどんどん集まり、大聖堂が崩れた全貌が見えたのですが、その瓦礫も内側にめり込んでいくように吸い込まれていきます。
「なんだよあれ! って、ライ! 僕達の高度が下がってるぞ! 引っ張られてないか!?」
アース兄さんの言う通り、今は一生懸命上にあがるように浮遊を操作してるんだけど、じわりじわりと下がっていってます。
「頑張ってますけど、アース兄さんの言う通りです! 転移!」
パッ
「考えたわね、転移でさらに上空へ移動したのね、このままなんとか続けるしかないわよ」
「なんじゃあの穴は! 底が見えんぞ! テラ様、あの先はヤバい感じがするのじゃ! まさか別の世界に繋がっておらんか!?」
「神眼! まずいわ! アミーの言う通りよ! バアルのヤツ、封印されながら異世界を造ってたみたい! こんなの私達じゃ無理よ! ライ、逃げましょう! 今なら――」
「ぐあっ! つ、捕まりました! 何ですかこの触手、いつの間に!」
僕の足に絡み付いた真っ黒な触手が一気に僕を引き寄せます。
「駄目です! 転移ができませんよ! ······テラ、アミー、フィーア、母さんも、兄さんも。残念ですが僕は転移できません。みんなはサーバル領に戻って下さい! ティ、プシュケ、リント、イシェにごめんなさいって言っておいて下さい! でも頑張ってやっつけて帰りますから――転移!」
パッ
「ふう良かった。みんなは飛ばせました」
どんどん高度が下がり、大聖堂の外はなんともなっていませんから街の人達は大丈夫そうですね。
もうすぐ地面より地下に入っちゃいますね。
······あっ、そう言えばこの魔力を抜くのじゃなくて、ドロドロしてる悪いのだけを抜いちゃうのはどうでしょうか? 今までは魔力を抜いて、そこから悪い物を抜いてましたから、魔力を抜かなくても良いんじゃ――って考えてる場合じゃないです! やっちゃいましょう!
「バアルさん! やっちゃいますから覚悟してくださいね! ぐるぐるー! ほいっと!」
『まりょくはまかせて! ぐるぐるー! ほいっと!』
「ムルムル! テラにくっついてたのに!」
『てらもくるよ、ほら!』
パッ
「ライあなたねえ! 私にも転移や浮遊はできるんだからね! 勝手に転移で送り帰して放っていてくなんて酷いわよ! 私はこの世界に手は出せないけど、あなたの奥さんなのよ! どこまでも付いていくわ! んちゅー!」
「んむっ!」
テラ······このままだとテラまで飲み込まれてしまいます。この足の触手を何とかしないといけません――っ!
「ぷはっ。そうです! 切れば!」
僕達はすでに地下に入っちゃって、まわりがモヤモヤと黒い霧が立ち込めている中、収納から刀を抜き身で取り出し――っ!
「おぉぉぉぉー! 切れてください! しっ!」
触手を切断。絶対切れないと思っていたのですが、簡単に切れちゃいました。
「転移!」
パッ
「よし! やりました! もう捕まりませんよ! タァ! はっ! しっ!」
また大聖堂があった場所の遥か上空に戻ってこれましたが、今度は一本ではなく無数の触手が僕達に襲いかかって来ます。
それを次々と切り捨てながらぐるぐるで悪い物を抜き出していきます。それに、街を守るように結界を張ってくれるテラと、魔力をぐるぐるしてくれているムルムル。
「ライ、考えたわね! ムルムルも私の騎獣なんだから頑張りなさい! このまま触手を避けながら奴を封印し直すかやっつけてやるのよ!」
『ほう。奴らの娘ではないか、それに古代魔法使いか。ハエが飛び回っているのかと思えば、とんだ大物だ。厄介な物を持っているが、いつまで持つかな』
頭の中に響いて来た聞いた事もない低い声。バアルさんでしょうか!? その声が聞こえた後、さらに触手の数が増えて僕達に襲いかかって来ます!
「くっ! 多いですね! でも、少し灰色が見えてきましたよ! しっ!」
「キリがないわね! それに何なのよ、街を守る結界は無視じゃない! くっ! ライ! ムルムル! バアルが出てきそうよ、気を付けて!」
大聖堂があった敷地五百メートル四方の真っ黒な穴の奥底から黒い塊がせり上がって来ます。
良く見ると······っ! 手です! 大きな手が穴から出てきて僕達の方に伸びてきます!
「転移!」
パッ
一瞬前に居た場所を真っ黒な手が凄い勢いで通りすぎているのが見えました。
「あんなのぶつかったらひとたまりもありません! でもまずいです! 抜き出した悪いヤツを取ろうとしてます! 飛翔! はぁぁぁぁー!」
真横に移動して腕を避けた後、今度は飛翔で腕に向かって高速で飛びながら、さっきまで集めていた魔力を刀に込めて――!
「斬れろ!」
ズバンと凄く抵抗はありましたが、すっぱりと切れた腕は、穴に向かって引き込まれ、悪い物を集めた巨大な玉の手前で失速し、一瞬だけ止まった切り取った腕はやっぱり落下し始めました。
「まず過ぎます! 街の上に落ちちゃいますよ! 悪いの抜いて収納しちゃいます! ぐるぐるー! ほいっと!」
「間に合わないわ! 街の人達が!」
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