第209話 回復魔法
「でもダンジョンのニンニクとテラのニンニクでは大きさが全然違いますね。テラのはもっと大きいですし、香りもまろやかですもんね」
「そうね、でもこのニンニクも品質は抜群よ。良いニンニクだもの。ほら、しまっておきなさい、それからムルムル、手を綺麗にしてくれる? このままにしておくとヤケドみたいになるわよ。これで目とか触ったら――」
「目、目が染みるのじゃ! なんなのじゃこれは! ヒリヒリするのじゃ!」
「馬鹿、触っちゃったのね! ライ、アミーの目を水で洗って、回復魔法よ!」
「うん。水さんお願い!」
バシャっと目を押さえ痛がるアミーの手をどけ、水をかけます。
「きゃ!」
「我慢してね、回復! ぐるぐる~、ほいっと!」
「染みるのじゃ! ······おっ? おおー! 染みなくなったのじゃ、ライありがとう、感謝じゃ、なぬっ!」
そしてムルムルがアミーの顔にへばり付いて、水を綺麗に吸い取ってくれたみたいです。そして手に移動して、アミーと僕の手も一緒に綺麗にしてくれたみたいです。
「ムルムルありがとう。アミー大丈夫?」
「まったく、言ってる時に触っちゃったのね。ニンニクに触るとヒリヒリする成分が出てくるのよ。まあ水で洗えば良いだけなんだけどね、ほら、みんなが注目しちゃったじゃない」
ダンジョンから転移で広場に戻ってきたのですが、これだけ騒げば注目もされちゃいますよね~。
「ぬおっ! すまぬのじゃ! 騒がせてしもうたの、私の不注意で驚かせて申し訳ないのじゃ」
アミーがまわりの皆さんにそう言って頭を下げました。僕も一緒に。
「お騒がせすいませんでした。ご心配をおかけしましたがもう大丈夫です。ちょっとニンニクが目にシミちゃっただけです。ごめんなさい」
そう言うと皆さんあきれた顔をした人が大半ですが、白いローブを着たおじさん達が驚いた顔でこちらを見ていました。まあ、そんな事で叫んでしまったのですから驚きもしますよね。
「じゃあ冒険者ギルドに行きましょう」
テラとアミーの手を引いて、すぐ目の前の冒険者ギルドに入ったのですが。
「待ちたまえ!」
後ろからそんな声が聞こえてきましたが、この国で呼ばれるような方はこの街にはいませんので、僕はまっすぐ受け付けのカウンターに向かいました。
ちょうど前が空いたところなので、運が良いですね。ギルドカードとダンジョンカードを出そうとした時。
「貴様! 待てと言っておるだろ!」
突然さっきの白いローブのおじさんが僕の前に割り込んできました。
「あの、受け付けに用があるなら隣も空きましたよ?」
「違う! 用があるのは貴様だ!」
「なんなのでしょうか? 初めて会ったと思うのですが、初対面の方に『貴様』と言うのは僕の事ですか?」
「私が呼び止めているのに聞かず無視をするとは! 貴様はどこの教会の者だ!」
教会? なんなのでしょうね? あっ! くふふ。もしやこれは絡まれるテンプレでしょうか! 一緒にいる方も白いローブですが武器を腰に付けていますし!
(ライ。あなたねぇ、まあ良いけど、こいつら『恐喝』とか『詐欺』の称号が付いてるから、ぐるぐるしても良いわよ)
(おお! ぬふふふ。では少しお話ししてみましょう!)
「僕は冒険者で、教会とは関係ありませんよ? もしかして僕とよく似た方がいるのでは?」
「嘘を付くな! 貴様は回復魔法を使っただろ! あれは教会の者で神に選ばれたものしか使えない魔法だぞ!」
「ん~、回復魔法は誰でも頑張ればできるようになると思いますよ? 僕も頑張ってできるようになりましたし。ところで、あなたは初対面の方に『貴様は!』と言うと相手が気分を害するので止めておいた方が良いと思います。じゃあ僕は冒険者ギルドに用があって来たので、失礼しますね」
おじさんの横をすり抜け受け付けに。
「こんにちは。ダンジョン行ってきたので確認してもらえますか?」
「あ、あの、後ろの方はこの街の司祭様ですよ?」
「あっ、僕は教会とは関係ないので、これを」
僕はテラと僕のギルドカードとダンジョンカードを、アミーも背伸びをしてカウンターにギルドカードを置きました。でも僕は頑張ってつま先立ちにならなくても顔がカウンターの上に出るようになったので、楽チンです。
お姉さんは僕の後ろを気にしながら四枚のカード受け取り、手元も見ずに魔道具に通してしまいました。
「あれ?」
くふふ。気付いたかな? こっちは『えぇぇぇ~!』が聞けそうですよ!
「無礼な! 教会で司祭と言えば貴族でも子爵と同位、不敬罪だぞ!」
あれ? こっちが先かな? お姉さんは魔道具を見て固まっていますし。
仕方がありませんね。
「ああ。そうなのですね」
「貴様が使った回復魔法は、教会が厳しく管理している物だ、独自で覚えられるはずなど無い! 大方どこかの教会に忍び込み、教本を盗んだのであろう! お前達、こやつを捕らえよ!」
「「
ガタンと椅子が倒れる音と一緒にお姉さんが立ち上がり、僕達の方を見ながら――!
「え、え、えぇぇぇぇぇー! Sランクー! き、君達がSランクなの! それも三人とも!」
来ました! それに僕に掴みかかろうとしていた司祭じゃない、武装したおじさん二人が止まりました。
「はい。そうですよ。それに――」
僕はナイフを取り出し、司祭さんに向かって自己紹介です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます