第183話 この大陸にもいましたよ

「ねえ、君も魔力が見えるの?」


「魔力? あれが魔力か? でもぐるぐる回ってたぞ? この子らが遊んでるのはあんなのじゃなかったからな。って今の大丈夫なんだよな!?」


「見えてるようね。今のは大丈夫よ。足りない魔力を補充しただけだから。それより見た限りでは普通の人族だし、ライと一緒で、この五人の子が魔力遊んでいたのを見てたからでしょうね。それも長い間」


「魔力不足だったのか。ふぅ、良かったぜ。おっとそうだな。見えるようになるまで一年はかからなかったけど、何してるんだろって思ってな、聞くと何かを浮かべてるって言うじゃないか、そりゃ気にもなるだろ?」


 確かに気になるでしょうね、でも一年ですか、フィーアよりは遅いですが、中々のものですね。


「ところで、あなた達六人でここに住んでるの?」


「いや、俺が一番年上組だが、まだ八人いるぜ、今の時間なら港のゴミ掃除かな、あれも中々良いのが拾えてな、まあ縄張りが小さいから実入りはほとんど無いけどな。だから俺は港から出てきた奴が何か落とさねえか、いつもは見てたんだよ。それが良い薬があるって言われてよ」


「それで盗んじゃおうと?」


「それが一番早くできるって教えてもらったからな。なんでも子供で、腰に引っかけてるだけならすぐ取れるしバレる事もないって言われたのによ、しっかりバレてやがるし」


「それはもう良いですよ、それよりさっき言ったお腹いっぱい食べれる僕のお父さんのところに来ませんか?」


「なんだよお前んちは孤児院か? この街のは大分前に潰れて、それっきりだからよ、あれは人数が多いほどもらえる金が増えるんだよな? なら沢山集められるぞ? 冒険者になってる奴以外なら飯が食えれば喜んで行くだろうな」


 ほうほう。将来有望な人材が沢山ですか、これはやっちゃいましょう。


「では、そのみんなを集めてくれるかな? 全員、そうですね、悪い事をしてない方だけですね、集めてもらえますか?」


「悪さなんかするかよ、······ま、まあ俺はやっちまったけどよ。よし、一時間は短いな、夕方ならここの前に全員集めてみせるぜ」


 なら、さっきの方を見に行ってれば、ちょうど良いかもですね。


「ではそれで。僕の事はライって呼んで下さいね」


「おう。俺はルミナだ。それに」


「「ナナシなのー」」


「コイツらは名前が分からねえんだよ。まあ五人がいつも一緒だからナナシってみんなが呼んでる」


 ナナシは可哀想ですね。


(アマンダに任せましょう。ほら、こういうの得意そうじゃない?)


(そだね、僕なら精霊だからウンディーネとかサラマンダーとかつけちゃいそうです)


(くくっ、大精霊よそれ。まあやめておく方が良いわね)


「分かったよ、名前はまた後で良いですし、それじゃあ僕はちょっと出掛けてくるので魚でも食べますか? 火はおこせますよね?」


「おう。そんなの毎日やってるからよ。魚があるなら嬉しいぞ。くれるのか?」


「はい。ムルムル、とりあえず六匹出してもらえるかな?」


(いいよ、おおきいのだす?)


「そんなに大きいのは食べれないわよ、そうね、二十センチくらいあれば良いんじゃない?」


(わかった、ぐるぐる~、ほいっと)


 ムルムルはいつ収納したのか知りませんが、テーブルを出して、そこに鱗も内蔵も、骨まで無くなっている魚を出してくれました······串に刺さった六匹の魚をお皿の上に。


「すげー! こんなデカいの店でしか売ってないぞ! これもらっても良いのか!」


「はい、あっ、お塩も振られてますね、そのまま焼けば良いと思いますよ」


(ムルムル凄いね、完璧だよ)


(がんばった)


 テラは横でニコニコしながらムルムルを撫でて、その後僕の手を握ってくれました。


「じゃあゆっくり食べなさい。あっ、ムルムル、後八人分も出しておけば帰ってきたら食べれるじゃない。じゃあ私達はちょっと行ってくるわね」


 ムルムルが追加で八匹の魚を出して、僕達は転移で先ほどの屋根の上に戻りました。


 もちろんテラはお姫様抱っこです。


「動き出しましたね、中には一人しかいませんでしたから、ずっと動きを見てたのですが、テラも見ていたのですね」


「ええ。それに向こうの大陸の物がそんなに高く売れるわけ無いもの、絶対怪しいわ、それに今見たんだけど人攫いよ、あの男。もしかして、ああやって子供達を見定めて攫っているのかも」


「僕も教会の人達と同じような感じがしてましたので、今から見てもらおうと思ってました。あっ、動きますね」


「そうね、まだ細かくは見れないけど大分分かるようになったんじゃない? 特に悪者に関してだけど。まあ良いわ、ほら追いかけましょう」


「うん、行きますよ~、の前に、ちゅ」


 そして赤くなったテラを、お姫様抱っこのまま動く気配を追っていくと、港の方に向かいます。


「ライ、そのキスは嬉しいんだけど、誰にも見られてないから良いんだけど、······ま、まあ良いわ。今はこっちね、あいつは地下を通ってるようだし、この方向は港、壁の向こうに出られるとちょっと面倒よね」


「僕達も地下に、は面倒ですから転移で行っちゃいます。えっと、あの建物の上に行きますね、転移!」


 港にある一番大きな建物の屋根の上に、転移てやって来た僕達は、地下をこちらに向かってくる気配が、僕達の少し手前の倉止まったのが分かりました。


 そこは馬車が沢山置いてあり、お魚が入った木箱を積んでいる倉庫でしょうか。とりあえずそこの屋根に移り、様子をうかがいます。


「ライ、たぶん当たりね、この地下に子供が沢山いるわよ、それも女の子ばかりが二十人ほどね、たぶん大きな部屋だけど、今ならその子達だけで誰もいないんだけど、転移で行けそう?」


「大丈夫。行きますよ~、転移!」


 地下の部屋に行くと、たぶん真っ暗で僕達の事は見えていなくて、みんな身を寄せ合い、壁に持たれて座っている女の子達がいました。


(私が結界を張るから光はお願いね、結界!)


(うん。光さん、ぐるぐる~、ほいっと!)


 テラの結界の後すぐに光を五個浮かべ部屋を明るくすると来ますよね『きゃぁぁぁー!』が。


 すぐに来ると思ったのですが······。

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