第176話 城内へ突入しました。

 一応僕が先頭で、階段を上りきるとそこにはメイドさんが。さっきの方ですね。


「皆様の馬車がご用意できました」


「うむ。ありがとう、では案内を頼む」


「かしこまりました」


 メイドさんの先導でお屋敷から出ると、そこには沢山のメイドさんと、料理人や、庭師、御者などの方々が整列して向かえてくれました。


 それを見渡した王様は、笑顔になり。


「うむ。良い笑顔だ、久しく見てなかった良い笑顔だな、だがこの人数では馬車が足りんな」


「あっ、それなら馬車は途中で拾えば良いですから、今は乗れる方だけ乗ってもらって、後は歩いて来て下さい。僕が先行しますので、ゆっくり歩いてきてもらえれば大丈夫ですよ。それに、お向かいのお屋敷にも馬車はありますよね? そこも無人ですから借りてきて下さい」


「くくっ、それはそうだろうさ、この当たりは私たち以外は教会の者達の屋敷だけだからな。では何人か走り、馬と馬車をかき集めよ、私は久しぶりの外出だ、その屋根の無い馬車に乗るぞ」


 そう王様が言った後、何人もの方が門へ走り、馬車の確保をしに行き、王様も馬車に乗りかけたので。


「王様、僕は先に行きますので、存分に外出を楽しんで下さいね。お城で待っています」


「ああ。ライ、頼んだ」


「では、行ってきます」


 お屋敷を出た僕は、とりあえずお城に向けて進みながらお屋敷を空にしていきます。


 たまに馬車もいますが、御者も含めて悪者ですし、お屋敷に送ってしまいます。


あら、御者さんがいなくなっても馬車は走り続けますので慌てて飛び乗り、端に停めておきます。


「ライ、この馬車にもちょっとだけど麻薬が乗ってるわよ、中身を空にしておきなさいね。さあ次行くわよ」


「うん。収納! さあやっちゃいますよ!」


 その後も、貴族街を進みながらお屋敷を空にして、お城に向かって進んでいきます。


 奴隷になってる方でさえ人攫いなのですから一度聞いてみたのですが、この貴族街にいる奴隷は、仲間内で悪さをした人達が奴隷にされ、各々お屋敷で働かされているらしいです。


 そして、お城の前に到着したのですが、中々の警備体制です。


 門の左右に五人ずつ、白い鎧を来た兵士さん達が槍をもって立っています。


「お城の地下に、沢山の人が捕まっているわね、上はあの尖塔があるでしょ、そこに三人良い人がいるわ、王妃と王子が二人。オウルって家名があるから王様の家族じゃないかな?」


「あれですね、四人いて、一人だけ悪者っぽいので、先にぐるぐる~、ほいっと! これであそこには三人しかいなくなりました。先に助けちゃいましょう。転移!」


 パッ


「こんにちは。助けに来ましたよ」


「何奴! 助けに来ただと!?」


「母上は僕の後ろへ、いきなり現れました!」


 あっ、驚かせてしまいましたね。でも王様の家族ですから。


「まずは自己――」


「ゆっくりしてる暇は無いわよライ。さっさと王様の馬車に転移させちゃいなさい。自己紹介は、後でゆっくりすれば良いんだから」


「だね。ではちょっとビックリするかもしれませんが、行きますよ、転移!」


 パッ


 こちらに向かってくる馬車団の前に飛びました。


「止まってくださーい」


「なんだと! 外だぞ! ぬっ! あの馬車に乗っているのは父上!?」


「眩しい、え? 父上!? そうだ! 少しお痩せになってるが父上だ!」


「きゃっ、どこ!? あ、あなた! ああ、真です、よくぞご無事で」


 僕達に気付いた馬車団は速度を落とし、停車しました。


「王様の家族の方ですよね? 先に助けてきました」


「ああ、そうだ、その通りだ! おいお前達、この馬車へ!」


 三人とも王様の馬車に駆け寄り、再会を喜んでます。


「ではお城を取り戻してますね、転移!」


 パッ


 お城前に戻ると、ちょっと騒ぎになってますね。


「あっ、そっか、見てる前で転移しちゃいましたもんね。まあ、すぐに捕まえてあげますから」


 僕はお城の門に向かって歩き出しました。


「おい! 貴様! 止まるんだ! どこに消えて、どこから現れたのだ!」


「転移の魔法じゃないか? 使えるものは少ないが、それほど不思議な事ではない、それに子供だ、なぜ貴族街のこんなところまで来れたのかは分からんが、捕まえておけば良いだろう」


「いえいえ。捕まるのはおじさん達ですからね。ぐるぐる~、ほいっと!」


 門前に集まっていた最初の十人と後から増えた十人ほどを気絶させ、転移で送っておきます。


 門前には誰もいなくなり、門をくぐろうとした時、いきなり矢が何本も飛んできました。


「危ない!」


 テラが叫びましたが、僕は刀を取り出すと。


 キキキン、カンカカンと飛んでくる矢を叩き落としていきます。もちろん歩くのは止めません。


「大丈夫ですよテラ。もうすぐ止まりますから。これは無断で入ると自動で沢山の矢を放つ罠が仕掛けられているだけですから」


「そ、そうなのね。でも気を付けてね、兵士も出てきそうよ、ほら」


「任せて! ぐるぐる~、ほいっと!」


 矢の降り注いだ門を抜けて、お城までまだまだ遠いですから、少し走ります。次々と城壁やお城からも兵士達が出てきますが、次々と気絶させ、お城近くで一人だけ違う鎧を装備したおじさんがいましたので、一旦気絶させ、駆け寄り奴隷の魔道具を嵌めました。


「ぬふふふ。この人なら教皇の場所、お城の中を知っているはずですね。じゃあお城の地下以外を一気にやっちゃいますよ! ぐるぐる~、ほいっと!」


「なるほどね、気絶させておいて、そいつに案内させるのね。中々考えたわね」


「でしょ? じゃあ起きてくださ~い」


 鞘も抜いていない刀で、おじさんをつついて起こします。


「うっ、はっ! き、貴様は誰――」


「命令です。僕の言う事を聞いて、無駄口は無しで、嘘を付かずに素直に答えて下さいね。後、逃げない、悪さをしないで下さい。今から教皇とか偉い人を捕まえますので案内をして下さい。ほら立って下さいね」


 パンツだけになったおじさんは立ち上がり、僕の前を歩かせてお城に入りました。

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