第172話 凄く心配です······

「本当にどうなってやがんだ、ギルドの職員まで半分消えたぞ、おい! ギルマス! これはどういう事だ!」


 あっ、ギルマスさんは無事だったのですね、それも立ち上がって、出てきたのは女性の方です。


「私にも分かりません。これは一体······」


「くそ、仲間も消えちまった、なんとか探す依頼とか出ねえのか? ギルドの職員まで消えたんだぞ?」


「もちろん緊急依頼を出すわ、でも、誰が消えたかまでは全員を把握することは難しいでしょうね、こうなったら近隣の街や村にも手配しないとまずいわね」


 無駄足になっちゃいますが、ごめんなさいです。早めにこの街から悪者を排除しちゃいますから少しだけ頑張っていて下さいね。


「教会にも動いてもらおうぜ、この街なら教会に動いてもらうのが一番手っ取り早いだろ、支部も地区ごとにあるんだ、くまなく探せるってもんだぜ」


 これは教会に潜り込むための好機チャンスですよね。


「お手紙か何か書いてもらえれば、僕が届けましょうか? この街に来たばかりですが、あの大きなお城が教会の元ですよね?」


 ギルドマスターさんも、仲間が人攫いだったお兄さんも、少し考えてから。


「俺は賛成だ。南方面の地理に詳しいからそっちを走らせてもらう」


「分かった。今いる者達は聞いて下さい! これより緊急依頼を出します! 王都の教会全てに手紙を配達してもらい、消えた者達の捜索をしてもらいます王都の東西南北で地理に詳しい方角別に別れ、少し待っていてくれ!」


 ギルド内の残った、良い人達は皆さん頷き、カウンターに向かって、四列に並んでいきます。


「よし君の分は先に書いてしまおう」


 そう言うとギルドマスターさんはカウンターの下から紙を取り出し、サラサラと書いていきます。


 僕はカウンターに背伸びをして顎を乗せ手の動きを見学です。


「くくっ、笑っている場合ではないですが、なんとも可愛い······」


 ギルドマスターさんは手を止め、僕をじっと見詰めてきましたので、笑ってあげました。


「はうっ、きゃ、きゃわいいの~君のお名前は?」


「ライと言います」


「ライきゅん♡ 良い名前ね~お姉さんは――」


「ギルマス! 早く手紙を書け! ったく、可愛い男の子を見たらいつもこれだ。すまないな、ライ君。ギルマスも普段は優秀なんだがな」


「いえいえ。大丈夫ですよ。僕は頑張る方は大好きですから」


「だ、大好きって言われたぁぁー!」


 その後は凄かったです。あっという間に僕の分の手紙が完成して、次から次へ他の方の分を書いていきます。


「だろ? やる気を出せばこんな優秀な奴、そうはいないからな。よし城までの配達は頼んだぞ」


「はい。行ってきます」


(ライ、このギルマスはSランク冒険者よ。ライが領主になった時、領地の冒険者ギルドを頼めたら良いかもね)


(それは流石に無理だろうね。まあ来てくれたら良いですが。じゃあ、仕方ありませんね、お城にまっすぐ向かいましょうか)


(その言い方じゃ、寄り道したそうよ?)


(このギルドの右隣に、沢山反応がありましたからね)


 テラがそちらを見ながらですが、僕は手紙を収納してギルドを出ました。


 そう隣は教会です。僕の見立てでは、地下には数人しか反応がありませんが、地上部分は反応だらけです。それも良い人がいない感じです。


「全員やってしまって良いわよ。ここには人攫いの犠牲者はいないから、全員お屋敷に飛ばしちゃっても。ついでに地下に麻薬があるから根こそぎ収納しちゃってね」


「おお! 当たりましたね、ではぐるぐる~ほいっと! それから収納! そして転移!」


 あっ、当たったのが嬉しくてつい、教会の中身を全部収納しちゃいました。


「あっ、ライ~、あなたね、まあ良いわ、ほら大通りも歩きながらになるんだから行くわよ」


 大通りを何度か曲がりながら、少しずつお城に近付いて行きます。道がまっすぐ繋がっていないのは、お城に攻め込む時にまっすぐだと、勢いを付けたまま行けるのですが、こう何度も曲がりくねって進むとそれだけ時間も稼げますし、途中で、攻撃したりもしやすいので、守る方にはしっかりと考えられた作りだそうです。


 そして、段々と、大きなお屋敷が建ち並んできたところを見ると、貴族街に入ったみたいです。


「ライここも駄目。全滅よ。やっちゃいなさい! まったく、なんなのこの国! 貴族街に入ったとたんまともな人が、奴隷すらいないじゃない! ほらそっちも駄目! 全然進めないわよ!」


「あはは······本当だね。カヤッツ大丈夫かな、あはは······ほいっと!」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「カヤッツ隊長! また来ました!」


「嘘だろ~、坊っちゃんどこから送って来てるのですか······仕方がない! 各門は二名のみ残して後はこっちの処理に回してもらえ! 俺は旦那様と奥様に現状を伝えてくる!」


「はっ!」


「ってまた来たぞ!」




「何! お前の部下だけでは手が足りない? あいつはまったく、よし! おまえ、王に会いに行くぞ! 転移を頼む!」


「ええ。カヤッツ。戻るまでなんとか耐えてね。転移!」


 パッ




「なんだと! 宰相! すぐにありったけの奴隷の魔道具を集めよ! それから近衛師団! 全員集合! これよりサーバル伯爵邸にて大仕事だ! 急げ!」




「ライ坊っちゃん······」


「隊長! 魔道具が無くなりました!」


「仕方がない、ロープで――」


 パッ


「待たせたカヤッツ! 援軍を呼んできたぞ! ってなんじゃこりゃ!」


「嘘っ、こんなに来てたの!」


「おい剣聖! 驚いている場合か! 近衛師団! 持ってきた魔道具を嵌め、庭の端にでも移動させるのだ!」


「「はっ!はっ!」」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ほらほらライ! 次のお屋敷もよ! やっちゃいなさい!」


 あはは······本当に、お屋敷大丈夫かな······。

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