第171話 教国の王都って······
「――と言うわけで、この五人は人攫いの犠牲者なんですよ。この商館で、人攫いの仲間じゃないのはおじさんとこの五人だけなのです」
「そんな事が。······この商館は元々私の祖父が始めた物で、この街での営業のみ許され、小さいながらも続けてきたのですが、領主が変わった頃ですね、この街に大きな奴隷商館ができて経営が困難になり、傘下に。一応私が責任者として、昔からお客様の対応をしておりましたが。あの者達がそんな事を······」
「はい。その奴隷商館もやってきましたよ。ここにもそれが目的で来たので、この方達の奴隷の腕輪を外しても良いですか?」
「構わないのですが、その魔道具は私が所持していないのです。ですから簡単には外すことができません」
おじさんは悲痛なお顔で顔をしかめていますが、大丈夫ですよ。
「では、壊しちゃっても良いですよね、ぐるぐる――」
「え? 凄く頑丈ですか······ら?」
「ほいっと!」
魔道具として機能しなくなった腕輪は、ボトリと五人の腕から抜け落ち、毛足の長い絨毯の上に落ちました。
「うそっ、外れたわ!」
「帰れるの!? 嘘じゃないわよね!」
「はい。この後一度サーバル領に行ってもらいますが、その後は、皆さんの国に帰れるように手配してくれますので、安心して下さい」
五人は身を寄せあい、喜んでいます。おじさんも、ビックリした顔から緩み、笑顔になっています。
「そうです。おじさんもサーバル領に来ませんか?」
「ライ、おじさんはこの店を守りたいのよ、それなのに来てくれる訳無いじゃない」
「そうですね、まだここには何人もの犯罪奴隷や借金奴隷がおりますので、細々ではありますが、この場所でやっていこうと思います」
「残念ですけど、仕方がありませんね、じゃあ、とりあえず悪者を捕まえちゃいますからここで待っていて下さいね、転移!」
パッ
「嘘っ! なんで私の結界を抜けられるの! パパでも無理だったのに!」
「え? だって、難しかったけど、魔力の流れの隙間を通る感じでできたよ? テラのパパだってできるよ絶対」
テラは僕の顔を見て、呆けていますので、可愛いですから、ちゅ。
「······ま、まあ良いわ。今度パパにもやってみてもらうから、それより別に部屋から出なくても、奴隷は地下だし、人攫いは上だけだから、まとめて気絶させれば良いだけだったのに」
「そうなんだ、えへへ、まあテラにちゅってできたから良いか」
真っ赤になってもじもじしているテラにまた、二回ちゅってしながらぐるぐる、魔道具も回収してカヤッツに送りました。
そして結界を解いた部屋に戻り、おじさんにお別れを言って、カヤッツに頼むため五人をお屋敷に連れて帰り、また国境の街に戻ってきました。
「さて次はもう王都から行った方が良いかなぁ。人数的には一番多いですよね」
「そうね、細かく分かれちゃってるのは、後になるけど、お義父様達が、冒険者ギルドにも知らせてくれるから、そうなると王都とラビリンス王国との国境よね多いところは。でもやっぱり王都から行っちゃいましょう。国境は、ラビリンス王国が動くでしょ、近い内に」
「そうだね。よし王都に向けて、暗くなるまで走っちゃいましょう!」
何か所も村や街に立ち寄りながら犠牲者達を助け、人攫いの方達を捕まえながら進み。三日で王都までたどり着く事ができました。
「なんだかゴミだらけだね、あっ、あそこの屋台のところなんか、食べ終わった串が地面にあんなに沢山捨てられ、って今も捨てられました」
「ここに来るまでの街や村もそんな感じだったけど、これは酷すぎね。街中が腐ったような匂いがしてるもの。ライ、この王都では買い食いは止めておきなさい。見たら腐敗って出てる食べ物まであるし、お腹壊しちゃうわよ」
腐ってる物はお腹を壊さないとしても食べたくありませんから、テラの言う通り、食べないようにしておきます。
そして一応門から入って、広場を抜け、冒険者ギルドに行くまでの間に五十人ほどお屋敷に送ったのですが、多すぎですよね。
「たぶん、教会関係者はほとんどね。人攫いを知りながら反対もしない奴らに称号はつくからね、ほら冒険者ギルド到着よ」
「うん。あっ、そうだ。たぶん僕にもその称号がついた人が分かるようになってきたかもです」
「え? どういう事なの? この力は――」
(あのね、テラに教えてもらった人攫いの人と、そうじゃない人には魔力に違いがあるのですよ。えっと、ほら受け付けの男の人は人攫いじゃないかな? 後は買い取りのおじさんもでしょ?)
(その通りよ、そこまで見えてるのね、じゃあ私の力の使い方を見ればその内覚えられるかもね)
(やったぁ! 頑張るね、でもこれはまだ集中しないと見えないからテラが教えてね)
(任せなさい! じゃあやっちゃうわよ、まずは――)
僕は食事処からやって行くことにしましたが。
「おらガキ、入口で突っ立ってんじゃねえ。あぶねえぞ」
後ろから話しかけられて、驚きましたが、ぐるぐると収納、転移はなんとか止めずに自分が立っていた場所を見ると、入口を入ってすぐのところに立ち止まっています。おっと、その通りですね。
「あっ、すいません。ちょっと考え事してました」
「おう。気ぃ付けろよ。ってなんだぁー! うわっまた! おいっ! 人が次々消えてっぞ! なんだよこれ!」
(この人は違うわね、ほらほら横にどいてあげなさいね)
(うん)
僕は横にどきながら、次は依頼を見ている方達も、ぐるぐるしていきます。
「なあ! 今度はこっちもかよ! 何がどうなってんだ! おいガキ! ここは危ねえぞ、早く外に逃げって、俺のなかまも消えただと!」
くふふ。一つひとつ反応してくれますので楽しくなって来ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます