第163話 ぷよぷよの罪

「良い感じよライ。内出血も消えていったみたい。貧血はごはんを食べて、休んでいれば大丈夫よ」


「ふぅ、良かったです。ところであの邪魔したぷよぷよの人達は誰です? 入ってきた時に装飾された剣と、もう一人は拳に血が付いていたので暴漢として捕まえましたが」


 僕は、食堂の外を指差して聞いたのですが、イシェは困ったような顔をしています。


「あ奴らは本日をもって、アフロディーテ公爵家から追放と決めました。よろしいですね。父上」


「はぁ、城の尖塔へ幽閉の後、皇帝に判断を委ねるが良かろう。皇帝もこの二人の動きには目を光らせておったからな」


「えっと」


「あの二人はイシェのお兄さんなのよ。それなのに、なにあの称号、犯罪者としか思えないわよ。殺人から強姦、強奪、まだまだずらっと並んでるけど、それに、人攫い。二人とも教会の人攫いグループに加担しているわねこれ。イシェ、早々に処罰した方が良いわ」


「テラがそこまで言うんです。相当悪い事をしていそうですね」


 イシェに聞くと、麻薬の密輸入の件で調べていたそうです。


 それも皇帝さんからの依頼なので、慎重に証拠を探していたそうですが、中々ズル賢くて、そう言ったところは上手く隠していたそうです。なので今までこれと言った証拠が出なかったので、追求もできなかったとの事です。


「じゃあ、奴隷の腕輪も付けましたし、後は本人に聞けば解決ですね。よし、起こしちゃいましょう」


 僕はぷよぷよ二人に少しだけ魔力を戻して、目を覚まさせます。


 ゲシゲシとぷよぷよの横っ腹を交互に蹴りつついてみると。


「んん、ん? なぜ私はこのようなところで寝て――」


 一人起きましたね。では早速。


「命令ですよ。これからはみんなの言うこと聞いて、嘘付いたり隠したりしないで、正直に答えて下さい。あっ、後はあなた達二人は奴隷になりましたので、悪い事をしない、逃げない。良いですね。命令ですよ」


「誰だ貴様は! 私は次期公爵だ! さらには皇帝にまで上り詰める予定なのだそ!」


「ぬぬっ、なぜ寝ておる? くははは! 兄上、気でも狂うたか? 裸ではないか、早うそのみっともない体を隠すのだ」


 ずっと蹴っていましたが、やっと起きましたね。じゃあこっちの人も。


「はい、あなたにも命令です。みんなの言う事を聞いて、嘘、隠し事もなく正直にお話しして下さい。後、悪い事も、逃げる事も禁止です」


「それは誰に言うておる。私は――」


 何か言いたそうですけど、先に質問です。


「あなた達は教国の仲間で、麻薬とかを売ったりしてたのですか? それに人攫いや、その他の悪い事も全部話して下さい」


「貴様! ま、麻薬だと! その通りだ! なぜ喋っておるのだ! 近い将来教国が帝国を支配した際は、私を皇帝にしてくれる約束でな、麻薬を作るための人員を集める作戦は実は私と兄上が教皇に提案したのだ······くっ、ヤ、ヤバいぞ、こんな事を喋ってしまっては」


「兄上達は何て事を······なんの罪もない民を」


「ふん。民などいくら殺そうが攫おうが勝手にいくらでも湧いてくるであろう。それがどうしたと言うのだ」


「その通りだな。そうでなければ毎日人攫いをしているはずだ。それでも減りもしないではないか」


 聞いてる僕ですが、こんな考えの方が当主や領主になってはいけないと分かります。


「その考えを直せと言っておいたが、何も学んではいないようだな。民を蔑ろにする領主などクソの役にも立たん。私達は民のお陰でこうして生活ができるのだぞ」


 イシェのお父さんが、貴族の事を教えていたのに何も学ばず、自分の事だけを考えていたのですね。これでは公爵家を継がせるわけにはいきませんね、領地を分け与え、管理を任せる事もです。


「ライ、お義父様とお義母様を呼ぶのよ。今なら帝都にいるはずよね? これは皇帝に直接の方が良いわよ。バラクーダ達と一緒に連れて行かなきゃ」


「うん。僕もそう思う。えっと、方角はあっちかな······ん~、いました。転移!」


 パッ


「だぁ! なんだここは! ってライ! お前はまた······なんだ? アフロディーテのおっさん? なんで生きてるんだ?」


「まあ。ご無沙汰いたしております。この度は······そうね、死んだとお聞きしていましたのに、おじ様······元気そうね?」


「剣聖に賢者か、はぁ、剣聖、少しは息子を見習って、礼儀を勉強した方が良いぞ? まだ私の事をおっさん呼ばわりするとはまったく。それは置いておいて、私が生きている事は内緒だ。今少し厄介事に首をつっこんでいてな、公爵なんぞやってられんから、娘に渡すため嘘を付いただけだ」


「昔のまんまだ。ダンジョンの試練を手伝った時のままだよ。おっさんらしいな。昔と変わってない。それよりライ、突然呼び出したのは、何かあったのか? 見覚えのある奴が裸だからなんとなく想像は付くが」


「あのですね、イシェと夕ごはんのためこの食堂に来てから――」


 この裸の二人がなにをしてこうなったか、それと教国との関係があることを話し、父さんと母さんはじっと僕と、イシェ、テラ、それにイシェのお父さんも交えて、ソファーに移動してお茶もいただきながらですが、説明を最後まで聞いてくれました。


「大体理解した。その通りだな、謁見は二日後だし詰問して、皇帝に会うのが良いだろうな」


「今、私は表には出れんのでな、付いてはいけないが、そうだな、娘は連れて行ってくれるか、将来の役に立つはずだからな」


「そうですね、良い経験でしょう。では、今夜はその二人の詰問をして、あるだけの情報を聞き出さないとな」


 うん。話はまとまった感じですかね、その後遅くなりましたが、みんなで食事をし、明日の夜に父さん達は、王都に向かうと決まりました。

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