第162話 あなた達邪魔です!
イシェのお城に到着早々、あわただしく事が起こりましたが、なんとか良い方向で終わることになりましたし、捕まえた四人を詰問するため魔力を少し戻してあげて、『嘘を付かないで、何でも質問に答えて下さい』と命令をして兵士さんに引き渡しました。
「よし。奴らの事は兵士に今は任せて、食堂に案内しよう、夕食を用意してあるのだ」
「うん。そうだね、でも気になってた事が早く片付けられて良かったですよ」
「そうね、ライったらすまほを見てからそわそわしてたもの。でも残念なのは、ダンジョンより先に教国に向かわないとね」
「うむ、構わんぞ。私も――」
「公爵様は学院がございますので付いていく事はできませんよ?」
「あっ! え、あの、······駄目?」
しゅんとなったイシェは、メイドさんを下から見上げるように、訴えかけましたが。
「可愛い顔でお願いしても駄目です。公務で休むのは仕方がありませんが、きちんと学院へは行くべきです」
「イシェ、残念だけど今は頑張って勉強をしてね。将来は家令も頼みたいんだから」
「うう~、頑張る······」
テラにも言われてさらにしゅんとなって、公爵ですって、雰囲気は無くなり、僕やフィーア、ティ、プシュケと同じ十歳の女の子に見えました。
そして『冒険の旅······良いなぁ······』と呟くイシェの手を引きメイドさんの案内で、廊下を進み、二人のメイドさんが待つ扉まで来ると、扉を左右に開け、僕達が止まること無く大きな食堂に到着しました。
「イシュ・チェル! その者が貴様の旦那になる男か!」
入ってすぐに怒鳴り付けてきた、凄くがっしりしたおじさん。公爵にそんな言葉で喋ると家族でも怒られちゃいますよ?
「父上!? 出てきて大丈夫なのですか!? 死んだ事に――あっ······」
おおー、イシェのお父さんなのですね、あれ? 死んだんじゃなくて、嘘を付いて跡目を渡したの? でも父上と言ってますし、ご挨拶はしないといけませんね。
「えっと、初めまして、サーバル男爵改め、サーバル伯爵家の三男。ライリール・ドライ・サーバルと言います。ライとお呼び下さい」
「うむ、礼儀は剣聖のヤツよりできておるな、イシュ・チェルの上の兄、あの二人にも見習わせたいものだ。よし、婚約を認めよう。それに次期公爵家当主は――」
『お待ち下さいませ! 今はなりません、』
『邪魔だ! 退いておれ! 不敬罪で切り捨てるぞ! はっ!』
『切るなら私がいただく! だが今は下がっておれ! ふん!』
『きゃっ』
廊下から何やら騒がしい声が聞こえてきて、たぶん扉を開けてくれたメイドさんの声と、男の人の声が。そして、いきなり。
バタン
「パパ、それは私であろう? 長男の私がやはり相応しいと言う事だ」
「何を言う、私だ。兄上は学院の成績私より下ですぞ、次期当主はこの私が相応しい」
僕達が入ってきた扉を乱暴に開け、男の人が二人、先を競うように入ってきたのですが、その後ろで額から血を流すメイドさんがいました。
「大丈夫ですか! あなた達邪魔です! はっ!」
僕はメイドさんに駆け寄ろうとして、邪魔だった二人の腰を思い切り押して、左右に飛ばし、ゴロンゴロンと転がっていきました。が、そんなのは放っといて廊下でうずくまり、頭を押さえる手では間に合わず、止まらないほど血を流すメイドさんの頭に手のひらを向け、おもいっきり魔力を込めて、回復を唱えました。
「回復! 動かないで下さい、すぐに治しますから」
「「
転がって、廊下の先にあった壁にぶつかり変な声を出していますが、今はメイドさんです。結構深く切れてますから、もっと魔力を。
「き、貴様! 私を突き飛ばすとは! 不敬罪で即刻その首飛ばしてくれる! 入るのを邪魔したそのメイドも同罪だ!」
「何をするのだ貴様! 誰かこいつとメイドを拷問部屋まで連れて行け! 後で死んだ方がマシだと思うような拷問をしてやる!」
「うるさいです! あなた達は暴漢ですね、捕まえてあげますから寝てて下さい! ぐるぐるー! ほいっと!」
乱暴に二人のぶよぶよ太った男の人の魔力を回し、一気に抜いて気絶させ、メイドさんの怪我を治すことに使い、二人の男の人は、魔道具を色々持っていましたからパンツを残して全て収納し、回復魔法は維持したまま奴隷の腕輪を嵌めておきます。
「ライ! 後頭部も強く打ってるわ、前だけじゃ駄目よ! 骨も折れて、頭の中が出血してるの!」
「分かりました! 集める範囲を広げます! 街の全体からも少しずつ魔力をいただきますよ! ぐるぐるー! ほいっと!」
「旦那様! 何か手伝えることはありますか!?」
「気絶しちゃいましたし、出血が多いです。どこか休ませてあげられるところを確保してください」
「この者を休ませる部屋、近い方が良いな、おい! この食堂で良い! 寝台を一つ用意してくれ! 父上、よろしいですね」
「構わんぞ。それから血を失ったのだ、肉料理をその者のために用意するのだ! 私達が食べる物は後回しで良い! 急げ!」
イシェも、イシェのお父さんも一緒になってお手伝いをしてくれました。
イシェに付いていた兵士さん四人が、寝台を取りに行くため離れると許可を取った後、駆け足でその場を離れて行き、食道内にいたメイドさんも、あわただしく動き、食堂の一角を開けるため、飾られてあった物を移動させ、そこに寝台を運んで来た兵士さんが戻ってきました。
「よし、表面の怪我はなくなりました。運んじゃいましょう。えっと浮遊!」
「まさかその魔法が使える者がおるとは! しかも子供だと! しかしそれが使えれば······」
何か言ってますが今はぶつけたりしないように慎重に食堂の入口をくぐり抜け、寝台を置いてくれた場所まで移動をしていきます。
「ライ、そーっとよ、揺らさないようにね、頭の中はまだ治りきってないからね、それと寝台は壁から離して、周りからお世話できるようにお願い」
テラの声を聞いた兵士さんは急いで寝台を移動させ、壁からニメートルほど離してくれました。その寝台の真上までメイドさんを移動させ、そーっと下ろしました。
「じゃあ全力に戻しますよ! 回復です! ぐるぐるー! ほいっと!」
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