第128話 大きくなって、ママとパパ

「おおー! これは!」


「まあ! 大きいじゃない! ライ、入るわよ、また滑るのよ! ひねりは無しでね!」


「うん。じゃあ早速入りましょう!」


 ダンジョンの攻略をしていたのですが、遅くなりましたし、砦街に戻っても宿が空いていない可能性が高いので、僕達は二十階層のジュエルゴーレムがいた部屋でお泊まりする事にしました。


 そこで、取り出したのは十階層で手に入れた持ち運びハウスです。


 早速出して中には入り、色々探し回った結果お風呂を発見したわけです。


「ひゃっほーい♪」


「渦巻き水流からの~、滑り台です! ほいっと!」


「あははははは♪ うきゃっ」


 ぽちゃん。とはしゃぎすぎたテラはムルムルから投げ出されて、湯船に落ちちゃいました!


「テラ! 大丈夫!?」


 そっとテラを掬い上げると。


「ぷはぁー。し、死ぬかと思ったわ。ムルムル、次からはお風呂で遊ぶ時も掴んでおいてくれる」


 ぷるぷる


「はぁ、良かったよ。テラが死んじゃったかと」


「あ、あのくらいでは私は大丈夫よ。ほらそろそろ一時間くらい入っているし、あがりましょう。のぼせちゃうわ」


「うん」


 お風呂からあがり、ダンジョン攻略で、疲れていたのか寝間着に着替えて腹巻きをしてお布団に入るとすごく眠くなってきました。ムルムルとテラを胸に乗せてぐるぐる魔力を集めながら、そうです、あのブラックダイヤモンドの魔力は確かこんな感じでしたよね。


 ぐるぐる魔力を集めていますがダンジョンですから魔力は沢山ありますし、これをテラに注げば、ムルムルの魔力も······ね······ほいっと······寝てしまいました。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「おい。バラマンディ侯爵の暗殺が成功したと連絡はまだ来んのか?」


「辺境伯様。少し声を落として下さいませ、今宵は商会の者達が多数集まっております。聞き耳など無いとは思いますが、ご自重下さいませ」


「そうか。だが国境のダンジョンを使い物にならなくしてから早半年、安い食料を買い漁り売り付けようとした途端バラマンディ奴め峠越えの商人に補助金なんぞ出しよった」


「ええ。私の倉庫も今回で満載でございます。この冬までになんとかしなければ不味い事になりましょう」


「今宵も大量に買い付ける予定だ、我が倉庫も後二月ふたつきで溢れるからな。よし、男爵よ、お主の分は砦に送り始めろ。ヒュドラはもしかすると失敗する可能性があったはずだ、卵持ちが途中で追い付かれるやも知れんしな。だが」


「ファイアーアントですね」


「うむ。あれはまず失敗はなかろう、今月中には結果が出る。ボロボロになったバラマンディ侯爵領に支援と称して何割か増して売り付けてやろうではないか」


 コンコンコン


『辺境伯様、男爵様。商人達の用意が整いました』


「うむ。分かった。よし、できる限り安値で買い叩くぞ。例の金でな」


「はい。資金は潤沢ですが買い叩きましょう」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「うぐっ。あれ? この子は誰?」


 僕の上で緑色の髪の女の子かな髪の毛長そうですし。ムルムルが枕にされてますが大丈夫かな?


「ムルムル大丈夫?」


 ムルムルは突起を伸ばしてゆらゆらさせていますから大丈夫そうですが。


「ねえ。君はだあ――」


 横を向いて綺麗な緑色の髪が顔にかかっていたのでそっとどけたのですが、その顔は僕のよく知る顔でした。


「テラ······」


「ん? ふぁぁ、よく寝たわね。おはようライ――ライ! あなた小さくなってるわよ! ど、どういう事なの!」


「やっぱりテラだ。大きくなったんだね」


「え? 大きく?」


 テラが僕の上にまたがるようにして上半身を上げると、テラの腹巻きが伸びきって紐のようになってお腹にちょっと食い込んでますが、千切れなくて良かったです。


 テラはすぽぽんで、ほっぺにムルムルがついていますね、あっ、ぽよんと元に戻りました。


「嘘っ、なぜ戻れるの? あれっぽっちの神力じゃ戻れるはずないのに。ねえライ私の神力をあの時みたいに増やした!?」


「ん? そう言えば寝る前にテラとムルムルに注いでいたような? ごめん、ちゃんと覚えていないです。それより服着ないと風邪引くよね、良いのあったかな······」


 僕がそう言うとテラは下を向いて体を見ています。


「あっ! き」


「き?」


「きゃー!」


 テラが大きな声で叫ぶとテラの魔力がぐあっと広がり。パシッ! と前に聞いた事のある音でまた耳がキーンとなりました。


 そしてそうだと思い出して上を見ると。そこにはずっと前に見た事がある虹色に輝く髪の毛をしたお姉さんが······。


「あらあらまあまあ。テラが裸ん坊で、あらあらあなたはあの時の雷刕らいり君ね。あなたー! テラのお婿さんよー!」


「なんだと! どこのどいつだ娘に手を出そうとする奴は! ん? その少年はこの間のエリス が神聖化した時にいた婿候補、なっ! テラが裸で少年に乗っかってるではないか! ど、どういう事だね君!」


「きゃー! パパは見ないで! ママこの大きさだと服が出せないの!」


「え? あっ! 思い出しました! 創造神様! お久しぶりです! 『健康』のお陰でこんなに元気に過ごせています! ありがとうございました! ん? ······創造神様がテラのお母さん?」


「そうよ~。あっ、それはまた今度ね~。テラ、落ち着きなさいね、確か良いのがあるはず! はい。雷刕君この指輪を嵌めてあげてね、ついでに雷刕君のもあげる~。じゃあ頑張ってね~♪ テラをよろしく~」


 ふわふわ~っと僕達のところまで降りてきて、僕の手に創造神様の髪の毛と同じ様に虹色の指輪を乗せてまたふわふわ~っと空間の裂け目に戻り、奥ではお義父さんですね、向こうを向いて『式はどこでやれば』とか『神々を集めて大丈夫な時期で』などぶつぶつ呟いています。


「じゃあね。テラをお願いね」


「はい。一緒に幸せになりますね」


 パシッ!


 大きな音がなり、裂け目が塞がり無くなりました。


 でも、裸と気付いてからのテラは、起き上がった僕の胸にぴったりと引っ付いていてますので、身動きが取れません。


 恥ずかしいのかな? じゃ僕のシーツでくるんで。


「これで恥ずかしくないかな?」


「う、うん。ありがとう。同じ大きさだとこんなに恥ずかしいものなのね。それより指輪よね嵌めちゃお、それで服が出せるみたいだし」


 そして僕は左手で持ってた指輪を一つ取り胸元を押さえてない左手を取りました。

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