第86話 見学会
「どうするの? またサーバル男爵領に連れてく?」
「ん~、一応冒険者ギルドにって思ってますよ。やっぱり話は通さないとですよね。仮にもSランク間近って言ってましたから、奴隷になってもその道でギルドが買い取って働かせるかも知れませんからね。だとすると一番大きな馬車に乗せて行きましょうか。プシュケは馬さんを馬車に繋いでくれる?」
「はい任せて下さい」
僕達は街道に戻って、収納した馬車の中で一番大きな屋根無し馬車を取り出し、荷台に乗っていた物を収納して空にしました。
「重ねてしまって潰してしまわないようにしなきゃね、ほいっと!」
「駄目にゃ、乗りきらにゃいにゃよ」
確かに半分以上は乗りそうですが、一台では無理のようですね。
「じゃあもう一台出しちゃおう。ほいっと!」
同じような屋根無し馬車を出し積み込んでいきます。全員で五十人、最後の三人ほどは乗りそうもなかったのですが、仕方がないので、皆さんの上に乗せておきました。
「ん~、パンツ履かせれば良いとおもってない? 言いたい事もあるけどまあ良いわさっさと帰りましょう」
そして、残りの馬さん達も馬車の後ろに繋いで一緒に、転移!
パッ
街から少し離れたところに転移。今の時間は門から出る人が多いはずなので、もしかして人のいるところに出ちゃうと駄目ですからね。
そして街の門前に到着して入門の列に並びましたが、朝ですから出ていく方達が大半で、すぐに僕達の番に回ってきました。
後ろも同じですと、プシュケが手綱を持つ馬車の事も言いながらギルドカードを見せます。
「ふむ。Dランク冒険者ライ君か、お疲れさま。荷台の者達はなんだ? 裸のようだが」
「この方達は僕達が倒した獲物を奪おうとした盗賊ですよ。冒険者ギルドのカードを持っていましたからギルドに寄ってから後は犯罪奴隷になると思いますよ」
「何! けしからん奴らだな! ふむ。ライ君お手柄だな」
「はい。悪者はやっつけないとですよね♪」
「そうだ。よし通って良いぞ、後ろの馬車もギルドカードを見せてくれるか」
ゆっくり前進しながらプシュケの馬車が動くのを待ちます。まあすぐに許可が出て動き出したので門前広場から大通りに入ってすぐの冒険者ギルドへ馬車を横付けしました。
門を抜け、ギルドに到着するまでのほんの少しの時間でしたが、僕達の馬車を行き交う人達が足を止め、指を指し、こそこそと隣の人と何かを話しているようでした。
その時テラはため息をつく横顔が可愛くて、またちゅってしちゃいました。
なので今はムルムルを引っ張り中です。くふふ。
馬車を降り、ギルドに入ると受付のお姉さんが僕達に気付き、カウンターの奥にいたギルドマスターを呼んでいますね。
まっすぐカウンターに向かうのですが、まだ沢山の方が依頼の登録のため並んでいます。
お姉さんに呼ばれたギルドマスターはお姉さんと一緒にカウンターから出てきて僕達の方にやって来ました。
「無事だったか。心配をかけさせるな、あの魔法は転移だな」
「はい」
凄く安心した顔のギルドマスターとお姉さん、悪いことをしちゃいましたね。
「でも街道を進んでたヒュドラは倒しましたし、もう大丈夫ですよ」
「
「それから倒したヒュドラを取られそうになったので、盗賊ですから五十人を捕まえてきました。外の馬車に乗せてありますから」
「ヒュドラを倒した? それを奪おうとしたやつが五十人いてそれを捕まえたと?」
「ぎ、ギルドマスター、表に見える馬車にバカ······『鋏使い』のシュベルトが見えるのですが······裸ですが」
お姉さんもバカって言うくらいですからそうなのでしょうね。
「そ、そのようだな。バカ······『鋏使い』の奴ならそれくらいやっても自分は悪い事をしたとも分かってないだろう。だが、なあライ君。『鋏使い』や他の皆もヒュドラ討伐に昨晩向かったのだが、皆がヒュドラを奪おうとしたのかな?」
「はい。そうですよ。あっギルドカードをお渡ししますね。ほいっと!」
ギルドカードを五十人分をギルドマスターに渡しました。
ギルドマスターはそれを受け取り名前を一枚一枚確かめ、徐々に青ざめていきます。
「······こいつも、全員か。この街のBランクは全滅だ······」
以外とBランク以上は少ないのですね。それで今回の強奪未遂でいなくなるのですから。
「でも心配ありませんね、この後奴隷商に行きますから冒険者ギルドで購入してこれまで通り使えば良いんじゃないですか?」
「そうか。そうすればこちらから依頼を選り好みさせずに請けさせることができるのか······。よし、その方法でしか無理のようだな」
「はい。今ここで購入して貰えれば冒険者ギルドとして奴隷商に連れていき奴隷化をすれば少し安くすみますよね。あっ、それから馬車もあの方達が乗ってきていた物がありますのでお売りしますよ」
「そうと決まれば行くか!」
「行くかじゃありません! 待って下さいギルドマスター! ランクアップの話もですし、今回のヒュドラの事を忘れてますよ! まずはヒュドラの事実確認からですよね!」
お姉さんがそうギルドマスターへ叫んだのを聞き、いままで静かに僕達の話を聞いていた冒険者やギルドの職員さん達は、皆さんうんうんと首を縦にふり、僕達を見ていました。
「も、もちろん忘れてはいないさ。あは、あは、あははははは」
「あはは。僕は完全に忘れてました。そうですよね、では門の外にしましょうか? それとも門前の広場に首だけでも出しましょうか?」
その後、門の外に出て胴体と、首を九本出し、あっもちろんあの場にいた冒険者さん達は急ぎの方以外は付いてきて見学してます。
そして街の人達まで出てきては、あまりの大きさに子供は泣いちゃう子もいたくらいです。
なんだかんだお昼近くまでその見学会は続き、ギルドに戻った後ランクは暫定Cランクになりました。
本来ならSランクでもおかしくないのですが、言えないランクアップの規定があるので、冒険者ギルドの本部、ラビリンス王国のダンジョン街に行って、一度審査するらしいです。
ちょうど行く方向は同じですので問題ありません。
それからヒュドラてすがこの街で首を一本だけ売ることに。革にして防具に、あんな紫の血を流すヒュドラですがお肉も美味しいそうで、高く買い取って貰い、お金はギルドに預ける事にしました。
そして、夕方宿を取ってから防具を引き取りに行ったのですが······。
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