第84話 ヒュドラの討伐
「あのギルドマスター、これを見ていただきたいのですが······」
あれ? 何かまだランクアップには違う決まりがあるのでしょうか?
テラはムルムルをむにむにしてますが、プシュケとリントは少し困惑した顔で心配そうです。
「何か不具合でもあるのか? どれだ?」
「ここです、数日前に······」
「ん~、はっ? いや待て、だが名前は合っているがこれは······本部に確認してみる。もし本当ならCランクなんて······」
う~んやっぱりまだ何か足りなかったようです。地道に上げていくしかないという事ですね。
カウンターに顎を乗せたまま僕達は少し嬉しかった気持ちが下がっていくのを体験してしまいました。
「何だと! サブマス、これは本部からの定期報告だな?」
「はい、そうですが、先ほど届きましたのでギルドマスターの机にも同じ物を流しましたが」
「いや、それは未処理だな。この通りだとすれば······よし。ありがとう」
カウンターの奥でギルドマスターとサブマスのお姉さんが何やらお話をしていますが、何か困った事、スタンピードとかですかね? 一度でも行ったところならすぐにでも駆けつけるのですが。
「そのようね、あの難しそうな顔は相当な事が起こったようね、最悪走ってでも駆け付けないと駄目ね」
「うう~、私も頑張りますから背負子でお願いします! バンバン魔法撃ちますよ!」
「リントも魔法でやっつけるにゃ! 大魔法使いリントにゃ!」
僕は頷き、背負子の準備を収納から出していつでも背負える準備をします。
防具はこの後聞きに行って、まだなら仕方ありません。そこへギルドマスターが戻って来かけたのですが、ギルドの入り口から勢いよく入ってきた方が叫びました。
「ラビリンス王国方面行きの街道で、ヒュドラが出た! それも九本首だ!」
ヒュドラ! この事だったのですね!
「テラ、ムルムル、プシュケ、リント! やっつけに行くよ!」
「「
ぷるぷるっ!
背負子を背負い、プシュケが乗ってリントを抱えます。ムルムルもテラを落とさないように体を伸ばしテラの体を固定し、僕にピタリと引っ付きました。
「じゃあ行きますよ! 転」
「おい待て! ヒュドラは――」
「――移!」
パッ
門の外にまずは転移して、ラビリンス王国方面の気配を探ります。
広げて行くと······いました! 近くには誰もいませんし、魔物もどんどん離れて行ってるようです。
「よし見つけましたよ、転移!」
パッ
たぶん街まで馬車で止まらず走って半日ほどの場所にヒュドラはいました。
直径二十メートルを超える太さの胴体から九本の首、一本一本が、直径二メートルはある首が伸びているヒュドラです。
その大きな胴体をくねらせ街の方へ向かっていますが、移動速度は速くはありませんから少し安心しました。早速ぐるぐるを始めたのですが、流石に魔力は膨大です。
「あっ! 防具を聞きに行ってません! んー仕方ありませんね、このまま足止めをしますよ! 後ろから攻撃すれば街の方へは行かずに僕達の方へ来てくれるはず! 転移!」
パッ
ヒュドラの真後ろに転移した時テラが助言をしてくれました。
「
「「
「カッターで行くよみんな! ウインドカッター!」
「行きますよ! ウインドカッター」
「スパッとやるにゃ! ウインドカッターにゃ!」
シュンシュンシュンと約五十センチ幅のウインドカッターが飛び、
「聞いてるわよ! その調子で! ってそうだったわ! 再生があっのだわ! もう! 再生しちゃってるじゃない!」
「うわっ、本当です! でも再生に魔力が使われてますから減るのは同じです! どんどん撃ってどんどん再生させましょう!」
ヒュドラは蛇の体をうねうねとくねらせ、再生しながら僕達の方へ向き直りました。
「よし! 次は横へ転移!」
パッ
「撃て! ウインドカッター!」
シュンシュンシュン
「転移!」
パッ
ヒュドラに火や毒を吐かせないように、数撃ずつ。そしてこっちを向いたら後ろへ、転移。流石に何度か繰り返すと後ろに行くと分かったのか、攻撃を受けると首を半分は後ろ向きで構えるようになりました。
「よし! 次は右回りにきり変えますよ! 転移!」
今度は横へ同じ方向に回り始め、二周したら今度は左回り。ヒュドラに予測させないように、たまにまた後ろへと、目標を定めさせないように転移で
魔力がどんどん減り、もう半分を切りました。
「残り半分だよ! そうだ! 二人はそのままいままで通りに首を狙ってね! 僕は同時に目を狙うよ! いくよ! ウインドカッター! ウインドニードル!」
「はい! このままですね! ウインドカッター!」
「分かったにゃ! ウインドカッターにゃ!」
作戦が上手くハマったようで、目が見えなくなって首は、僕達が見えないようで、再生が終わるまでキョロキョロするだけで避けることもしなくなりました。
ですが······。
『キシャァァー』
ゴォォォォー
見えない代わりに、あてずっぽうで火を吐き出しました。
「キャー!」
「うにゃー!」
「大丈夫です! 絶対避けて見せますから! そうだ、草原の方におびきだしましょう! 続けますよ! ウインドカッター! ウインドニードル!」
そして戦い始めてから一時間ほど過ぎた頃、急にヒュドラは力無くその巨体を少しずつ移動さていた草原に、ズズンと倒れ、最後まで鎌首を僕達に向けていた真ん中の首も、地面に横たえ、動かなくなりました。
「さあ急ぐのよ! ヒュドラぐらいになると魔力の回復も早いから!」
「後は任せて! ぐるぐるはやり続けておくから! 端から首を落としていくよ! アルティメット・ウインドカッター!」
壁に穴を空けた竜巻ではなく、大きな幅三メートルウインドカッターを使い、直径二メートルほどの首を根元から切り離していきました。左右四本ずつ、八本の首を切り落とし、最後の九本目を切り落としたところですが、まだ収納できないため、胴体から十メートルほど離したところに転移させ、確実に死ぬまで待つことに。
焚き火のよういをして火を起こし、お茶を飲みながら待っているのですが、日が暮れだしてもまだ生きているようで収納ができません。
「まだまだね、明日の朝まではかからないと思うけど、今夜はここでお泊まりね」
「そっか、じゃあテントを張って準備をしよう」
その後夕ごはんも済ませ、みんなには寝てもらうためテントに入ろうとしたのですが······。
「ライ、どうしたの? ゴブリンでも来た?」
「ん~、人みたいです、街の方から沢山の人が向かってきてますね。でももうヒュドラも動かなくなりましたし、収納できるまでぐるぐるしておきますから、テラもみんなと寝てて良いですよ」
「
「うん。プシュケもリントもおやすみなさい」
「おやすみ~お腹がいっぱいで、もうねむねむですよ、ふぁぁ」
「リントはいつでも寝れるから寝ちゃうにゃ、また明日にゃ」
そう言うと二人は先にテントへ。僕も方からムルムルとテラを手に移し、テントへ。
「じゃあおやすみテラ。ちゅ」
「なっ! *≫ν§また!」
そしてそっと、テントに入り、ムルムルの座布団ベッドに下ろし、僕はテントを出て寝ずの番のため焚き火のところにに向かいました。
「くふふふ。テラったら照れてましたね♪」
それからしばらくして、遠くに松明の火の光が見えてきました。
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