第68話 海賊退治です 交戦相手
「おお! 穴を掘ってますね!」
みんなで高台に転移して浜を見下ろすとアクーパーラは完全に砂浜に上がっていて全身が見え、ヒレを使って一生懸命卵を産み落とす穴を掘っていました。
「ううむ、デカいな。あれほどの大きさのアクーパーラは見たことがないぞ、私が見たものはあれの半分もない個体だ」
おお。この子は物凄く大きいようですね、あっ、穴が掘り終わったようです。もぞもぞ方向転換してお尻をこれから穴に会わせるのかな。
「ええ王様の言う通り私もその程度の大きさまでしか見た事がございません」
「そうね。本当に大きいわ五十メートルほどあるでしょうか」
アクーパーラの動きを見ながら聞いていると、王様、父さんと母さんも前にアクーパーラを見たことがあるみたいですね。
「皆様、文献によりますと百メートルを超える個体がいたとされていますゆえ、この個体が大きい事にはかわりませんがさらに大きなアクーパーラもおりましょう」
そうなのですね! 百メートルなんて滅茶苦茶大きいじゃないですか!
おっと今は観察です。ふむふむ、お尻を掘った穴に向けましたよ! 近くで見たいですが······。
「ライ。やめてあげなさい。私達がここで見ている事にも気付いているし、近付いてしまうと産むのをやめちゃうかもしれないから」
「うん。そうだね、安心して産んで欲し、い······ん? テラ! あっちの方向に気配が! 何者かがいます! 多分沢山、船だと思う」
「「
僕の声にみんなが反応しました。
「ちょっと待ってね! テラどう?」
「任せて!
テラが言った言葉をみんなが集中しています。
「ん~帝国の船は無いわね、全て海賊よ。だから捕まっている人達が沢山いるって事ね」
「では千人近くがその方向にいると言うのか! ライ!」
「はい。僕にはテラほど詳しくは分からないですが、それくらいいると思います」
「ライ。あなたのぐるぐるでやっつけられそう?」
「はい! でもこの島はアクーパーラさんがいるので、二つ目の島にしましょうか、あそこに船ごと転移させればあそこも砂浜でしたから乗り上げて止まりますよね?」
「止まるわね。でもそんな事できるの? 千人と船を十隻よ?」
「ん~と、一度だと倒すのも面倒だから、一隻ずつにしましょうか、それとももう全員気絶させてからにしましょうか、そうすれば」
「駄目よライ、海賊が気絶する前に捕らわれてる人達が気絶しちゃったら、何されるか分からないわよ、」
遮られちゃったけど、それもありそうですね、鞭や何かで叩かれちゃうかも。
それにあれも止めた方が良いですね船だけ収納。海に落としてしまったらテラにまた怒られちゃいますから。
「うむ。ライよ、アクーパーラの産卵も見た事だしこの島は兵を置き、保護しようと思う。だからそっちの二島目にて一網打尽にしてもらえるか? 情報では他の海賊の筈だ。時折交戦をしていたと資料にあったからな」
「他の海賊、そうなのですね。それもそうか、海賊がこの広い海に一つってことはありませんから他にも海賊達がいてもおかしくありませんからね分かりました」
少し考えながら、アクーパーラが産み落とす白色の真ん丸卵がポコン、ポコンと連続で見えました。
「分かりました。ではみんなで二島目に転移しますね。それとアクーパーラさん沢山産んで下さいね。転移」
パッ
「到着です。この浜に突っ込むように一隻ずつこちらに転移させて行きますね」
この浜は直径百メートルくらいある湾状の浜なので波も穏やかですが、走っている船を持ってきちゃうとどうなりますか。
よしまずは船を探しましょう。
「ん~と、船は······見つけました! いきますよ! せ~の、転移!」
パッ
サバン!
ズガガガ!
湾内で、ちょうど真ん中より僕達に近い場所、浅瀬に突如現れ、波しぶきを上げながら船底が海底をこすり船の
「ライ······もう少し沖からにしないと駄目みたいね、捕らわれていた人達が怪我してなきゃ良いけれど······」
「う、うん。まさかこんな事になるなんておもってもいませんでした。次からはあの湾の入口に転移させることにします」
ズザザザとやっと止まった大きな海賊船は、半分近く浜に上がっていて少し斜めになっています。
「くははは! 見事だが船は修理せねば使えないな。宰相どうだ私の将来親戚になる子は」
「これ程のものを疲れたようすも見せず転移させる能力。伯爵とおっしゃっておりましたが、これは辺境をお任せしても良いのではと考えます」
「辺境伯か、侯爵にするには実績と歴史が無いからな。うむ、それを検討するべきだな」
何かまた出世しそうな事を言っていますが、まあ先の話ですので今は放って置きましょう。
「テラ、上の方にいるのが海賊だよね?」
「そうね、この船も捕らわれている人達の近くには十人いるだけ。その塊より上を。そうね、魔道具と、服以外を収納してぐるぐるしちゃいなさい!」
「そうか! そうすれば腕輪の鍵なんかも探す前に手に入れてしまえます! うん! ん~と、収納! それからぐるぐるいきますよ! ほいっと!」
しばらくして海賊達が船縁に来てこちらを見てましたが一人倒れ、また一人とバタバタ視界から消えていきます。
「ライ、気絶した奴らを浜に一旦転移させておいた方が良いわよ。どうせ一度は船に乗るのだから」
「それならお屋敷に飛ばしてしまいましょうか。父さん達も一緒に帰って貰えれば向こうで先に牢屋にいれて貰えますし」
「ライ、そうだな。ここはお前に任せておいても良さそうだ。王様それでよろしいか?」
「うむ。まあ船は次から痛まないように頼む。中々良い船を使っているようだからな」
「分かりました。では行きますね。転移!」
パッ
父さん達を今気絶している海賊達と共に送ってから数分、上にいた海賊達は全員気絶したのでお屋敷に送りました。
そして僕達は船に乗り込んだのですが、ちょうど甲板に来てすぐに見えた階段から上がってきた五人の海賊と出くわしてしまいました。
「なんでだれもいねえ! おいガキ! 俺様の手下はどこに行った!」
「あっ、船長さんですか?」
「なに言ってやがるあたりまえだろうが! 俺様を知らねえのか俺様は」
「いえ、船長って分かっただけで良いですよ。後でカヤッツがあなた聞く事になりますからではちょっと痛いですが行きますよ」
「ライ、少しくらいお話を聞いてあげても良かったのですよ? ほら、話を止められてビックリしたのか皆さん止まってしまってますよ」
だって、面倒くさそうでしたし。
「あはは。次からはそうしますから」
ドサッドサッ
そんなことをしてる間に海賊達は魔力欠乏で倒れてしまいました······。
「あら、この五人は魔力が少なかったようね。この分なら後一言二言喋った時点で気絶していたでしょうね。まあ良いわ、さっさと済ませちゃいましょう」
「うん。それと気になる魔力もありましたし」
「あはは。あれね。あれは本当に珍しいわね」
「え? なんなのですか! わ、私にも教えてくださいよ!」
プシュケが背負子の上で騒いでますが、さっさと一隻目を終わらせましょう♪
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