第56話 邪神
翌朝僕達は目標の海に行くため、預かっていた物を全て引き渡そうと思い、町長さんに朝からどこに出すのか聞きに行きました。
ちょうど食堂に入るタイミングで町長さんに合うことができたので、朝ごはんをいただきながら聞くことにしました。
「町長さんおはようございます。ご一緒して良いですか?」
「ああライ殿おはようございます。どうぞ。なにかありましたか?」
食堂に入りながら聞いてきましたので、ちょうど良いですね。
「お預かりしている物をどこに出せば良いのか聞きたかったのです」
「そうでしたね。食事の後ご案内します」
「はい、よろしくお願いいたします」
朝ごはんは昨日のお祭りの残りが出てきましたので、オークの炒めた物をパンに挟みサンドイッチにしていただいて、飲み物は以前作ったものがまだまだ残っているのでよく冷えたジュースを選択しました。
僕達も町長さんもそれほど時間はかからず食べ終わり、町長さんの先導で食堂を出ました。
予想では倉庫かどこかに行くと思っていたのですが、向かった先は町の門でした。
「預かって貰っているのが畑から回収した物ですので今日からあの素晴らしい畑に植え替えをして行きます。ですのでこの門前の広場が一番良いと思いましてね」
「なるほどです♪ では門の外に出て壁際に出しましょうか。その方が良いですよね? 出入りするのもバカらしいですから」
「はいお願いします」
連れだって門を出て、ドカドカドカと壁際に大量の木箱や革袋、その他畑から回収して預かっていた物を全て出し終わり、見ていた人達にも「行ってきます♪」と挨拶をしてエルフの町跡に戻ってきました。
「じゃあプシュケは背負子ね♪」
「は~い♪ 私こんなに楽ばかりしていて良いの? まあぐるぐるしやすくて良いけれど」
背負子を担いでしゃがんだ僕に乗りながらプシュケはそんな事を言いますが。
「その方が早く海に行けますからね。よいしょっと。体もロープで固定してっと! じゃあ行くよ♪」
「は~い♪」
新しい木々の間をそこそこの速度で走ります。
馬車より少し速いくらいですかね? 綺麗に等間隔で植えられたので、同じ景色ばかりに見えて同じところを走っている気分です。
ものの数分でそれも無くなり下草が邪魔で走れなくなったので枝に飛び上がり、枝から枝に飛び移りながら進みます。
半日ほど進んだところでさらに進んだところに反応がありました。
「ん~? 人の集まっているところがありますね」
「そうなのですか? この森にはエルフ族しかいないと聞いていたのですが。違う村か町でしょうか?」
「ん~そこまで人数はいないかな。まあ一度覗いてみましょう」
反応した気配に近付くと、崖にある裂け目の奥にいるようです。
「洞窟? それともダンジョンかな? 魔力があの裂け目から出てきてますし」
「まずいわよ! 邪神の気配があるわ、こんなに近くまで来てからしか分からないなんて! ライその魔力を吸い取っちゃって! 中のやつから全部よ!」
良く分かりませんがぐるぐる集めてしまいましょう!
「うん! 行くよ!」
どんどん集まる魔力をまとめて丸くしていきます。
するとクションの呪いのような真っ黒い玉が出来上がってきます。
ん~と、じゃあ魔力だけ抜いて、悪いのだけにすれば良いよね。
そう思い、その玉からも純粋な魔力だけを抜いて別に集めていきます。
崖の裂け目からもその時点で分けながら二つの玉を浮かべ、どんどん大きくなる黒い玉と魔力の玉。
「ねえテラ。この黒いの呪いによく似てる気がするけれどどうなの?」
「その通りよ。邪神は呪いを撒き散らす神なのよ。ここのはそんなに上位の邪神ではなさそうだけど、油断しないでね。下位とは言っても神には違いないから」
「か、神様がいらっひゃるのですか!」
プシュケはかむほど驚いているようですけど、中の人達は気絶していますし、そろそろ中から出てくる魔力も少なくなり後少しで吸い取りきれそうです。
そして、全ての魔力を抜き取ったのですけど、この魔力はどうしましょう。黒い方は収納しておきます。
「ねえテラもう中の魔力はなくなったし黒いのは収納しちゃったけど良かったんだよね?」
「それで良いわ、ありがとうライ。早速中を見に行くわよどんなやつが邪神に近付いていたか知っておきたいわ」
木から飛び下り、崖の裂け目に入りますが浮かべたままの魔力は······とりあえずそこで浮かんでて貰いましょう。
中に入ると真っ暗なので光を浮かべる魔法でランプ代わりです。
五十メートルほど進んだところがドーム状に広くなっています。
そこに七人のローブを着た魔法使いっぽい人達が倒れ、その奥には石の祭壇みたいなものがありました。
「テラ、これってなんなの?」
「嘘! 思ったより大物が封印されてるじゃない! 不和と争いの女神エリス。遥か昔に消滅したと言われているのに······」
「なんだかおっかなそうだね、でも魔力も何もかも無くなったから大丈夫だよね?」
「いえ。神はそんな事では消え去らないわ。封印も駄目ね、こいつらがほとんど壊してしまってるから(こんなのパパとママでも封印しきれるかどうかよ······どうすれば)」
「ふ~ん。でも悪い物は全く無くなったって事だからこのままで放っておくのは?」
「え? ああ駄目よ。既に魔力を吸い込もうとしているわ。あれ? 吸い込んでるのは物凄く純粋な魔力だけ?」
「それは僕がさっきの駄目なやつを分けて収納のしちゃってるからだよ。そうだ! テラさっきの、外に置いてきた魔力は駄目なの無いんだからそれを補充させれば良い神様にならないかな?」
「それよ! 良いのだけで飽和させれば良いのよ! ライさっきの魔力をここに!」
「うん! 任せて。こっちおいで~ほいっと!」
外から魔力の塊を引き寄せ、ドームに引き入れます。
ドーム内は純粋な魔力で充満し、どこか神聖な空間になりました。
その魔力を祭壇に吸い込ませるようにしていきます。
「その調子よ。これは面白いことになるかも。
テラは祭壇に吸い込まれていくのを見ながら色々考えているようです。
「反応が変わったわ! 一旦止めて!」
「ほいっと! 止めたよ。大丈夫?」
「
「し、収納!」
テラの慌てた様子に引っ張られ僕は焦りながらも祭壇を収納しました。
「近くにお願い! 気をつけて近付くのよ! まだ内部の封印は活きてるから!」
「うん! その魔力は受け流して近付くから大丈夫! 行くよ!」
ぐるぐるを全開にして動かすのは封印の魔力、少し動かし難いですが頑張ります! テラがここまで焦りを見せているのですから、しくじったりできませんよ!
「嘘っ! ライあなた······いえ、今は良いわ。そのまま隠してあった階段を下りるのよ!」
「うん。プシュケもなるべく僕に引っ付いていてね。結構ギリギリだから」
「はい。ムルムルくらい引っ付いておきます」
そう言うとぎゅっと少し強めに抱きついてくれました。
階段は長く、数分下りているのですがまだ終わりは見えてきません。相当深いようです。
「近いわよ。終わりが見えたわ」
魔法の光りに照らされ階段の終わりが見えました。
最後の段を下りきるとそこには上の数倍はあるドームの中に淡く光る水晶。
物凄く大きな水晶が複数立ち並び、その真ん中の水晶の中に······
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