第47話 魔物が近づいて来ているようです
「ねえ、あの畑仕事してるのってエルフさんだよね?」
高い木の枝から眼下を見下ろす感じで目に映るのはたぶんエルフさん。
物凄く大きく開墾された一面に畑が広がり、それの中央に町があって数名ずつに分かれ畑仕事をしているようです。
「ん~、良く見えませんが耳が私みたいに長いですからその様ですね。それに大きな町があります♪」
「なによ、慌てて来たのに問題無しっぽいわね。一応見ておこうかしら、
今朝は夜が明けきらない内から出発準備をして、歩くと数日かかる道のりを枝から枝に跳びながら休憩無しで数時間かけ進み、昨日の夜に感じた千人以上いる場所まで来たのですが、······見えるのは畑を耕したり、収穫する人々と町を行き来する人々でした。
「なんだかほのぼのしてますね~、まあ攻め込んで来そうに無いですし、どんな町なのか見ていきましょうか」
「うん。本当にのんびりですね。それに私がいた村は私以外全員がハイエルフでしたから普通のエルフなんて初めて見ましたよ♪」
「じゃあライ。あの門に向かって進むのよ!」
テラは僕の肩の上で町の門を指差し、なぜかムルムルの上で仁王立ちです。
まあ可愛いので何も言いません。
森の切れ目まで枝を伝い移動して、ぴょんっと木から飛び下りました。
町まで畑と畑の間を通り門前にまで来たのですが、誰も門番をしていません。
「これって勝手に入っても良いのかな?」
「ライ、人様のところに入る時は声をかけるのが常識でしょ。呼べば誰か来てくれるわよ」
「うんうん。その通りですね♪ ライちゃんと声かけしましょうね」
「そうだよね♪ よ~し! すいませ~ん! 旅の者ですが町に入っても良いでしょうか~!」
返事はない様ですね······。
「すいませ~ん!」
「誰だ? ん? 見かけない者達だな。ん~もしかして、ハ、ハイエルフ様でしょうか! も、申し訳ありません! 次の作物は出来が今一つでして、もう少しお待ちいただきたいのですが!」
現れた男性のエルフさんは、プシュケを見たとたん跪きました。
「あわわわ! わてしは! し、舌噛みました! 私はハイエルフじゃないですよ!」
「そうハイエルフではないけれど、エンシェントエルフではあるけどね♪」
「えんしぇんとえるふ? ハイエルフの村から来たのでは無いのですか? それにそれはどの様なエルフなのでしょうか?」
ハイエルフではないと聞いて、ほっとした顔で立ち上がり膝の土をはらっています。
そこにテラが説明するみたいです······少し意地悪な顔で······あはは。
「エンシェントエルフはエルフの種族では一番数も少なく、一番魔力が高く一番寿命も、まあ寿命は有って無いような物ね。取り敢えずハイエルフなんかより数段上位ね」
「「
エルフさんが驚くのはまあ分かります、慌ててまた跪いています。
それにプシュケも一緒になって驚いていますね。
「わ、私ってそんなに長生きするの?」
「するわよ。現存する寿命がある種族では上位の長生きさんね、確かあの子は三十万年ほど生きてるわね。ほとんど寝てるけど今度行くことがあったら紹介してあげるわよ、起きてたらだけど♪」
さ、三十万年って凄すぎるでしょ!
「はわ~、そんな凄い方がいるのですね······」
「そ、それでは、エルフの女王! ど、どうか不敬な私をお許し下さいませ!」
跪いていたとこらから、頭を地面に押し付けるような土下座状態になってしまったエルフさんを何とか説得して立ってもらい、町を案内してもらうことになりました。
聞くとここはハイエルフの村に食料を献上するためだけに作られた町で、三か月に一度ハイエルフの村に食料を献上するため森に入るそうです。
なぜそうなったのか聞いても、ずっと昔からそうだったらしいです。
その時いつも通りぐるぐるしていると遠くの気配がこっちに近づいてくるのが分かりました。
「ん? ん~、この感じはたぶんゴブリンですね······。テラ、プシュケ、ゴブリンがこちらに向かっているみたいです。動きはゆっくりなので明日くらいかな?」
「どれどれ、
「うん。そんなもんだね、リーダーさん一匹だけ魔力が強いもん、村長を思い出したよ、あはは」
「ゴブリンが五十匹ですか、明日なら今からみんなに報せて準備をすれば大丈夫ですが作物を何とかしないと駄目ですね······え? そ、そんな遠くのゴブリンの気配が分かるのですか!」
「うん♪ 僕とテラは分かりますよ」
「そうね。索敵の広さはライの方が広範囲で正確よね。内容は私が上だけどね♪」
「それはテラが本気を出していないからでしょ?」
「まあそうだけど、常時索敵なんかしないわよ私。ライはそうしているから膨大な魔力と類いまれな魔力操作が身に付いたのね」
「ライ凄いです! 私も頑張りますね♪」
「分かりました、ではどの方向から来るか分かりますか? それが分かれば対策も取りやすいので」
「方向はって言うより僕がやっつけちゃいますよ? もう気絶させちゃったしね。また戻ってきますので、門のところにいて下さいね♪」
僕はプシュケを背負ったまま、走りだしゴブリンを目指します。
「あっ! 気絶させたゴブリンに何か近づいて来てる! 早いよ!」
「そうなの? ん~、魔狼ね。放っといてもゴブリンを始末してくれそうね」
「魔狼ですか? ライ、魔狼にゴブリンをやっつけさせて、ライが魔狼をやっつければ毛皮が売れますよ」
「そうねムルムルのごはんはまだ余裕あるし、そうしても良いわよ」
「そうだね。じゃあ少し様子を見てやっちゃいましょう♪」
そうして少し余裕を持って現場に来ました。
木の枝から眼下を見ると、もうゴブリンはほとんど生き残っていないです。
魔狼の群れの中で一匹だけ少し大きな魔狼がリーダーのようです。
「ふ~ん、あの大きい子、ちゃんと仲間が食事している間まわりを警戒してるじゃない」
「そうだね。どうしようか、やっつけるつもりだったけど、ゴブリンを倒してくれるならこのままの方が良くないかなって思ってきたんだけど」
「魔狼も畑を荒らしちゃいますよ? それに群れが結構大きいのでその内被害が出てしまうかもです」
「そうね。まあライの好きにすれば良いわよ」
「ん~、そうか、どちらにしても畑は荒らすし、人を襲っちゃうなら倒しておく方が良いね。じゃあ~、ぐるぐるです! ほいっと!」
魔力欠乏でバタバタと気絶して倒れていく魔狼をそれを見たリーダーの魔狼はキョロキョロと辺りを見渡し僕達を探しているのでしょうが、リーダー以外はもう動く事が無くなりました。
「おお、やっぱりリーダーですね。でもあと少しですよ。ウインドニードル! ほいっと!」
次々に魔狼を倒し収納していきますが流石はリーダーさんは最初のニードルは素早く動き避けたのです、そして見つけた僕達に向かって突進して来て後少しのところで魔力切れになり。
プシュッ!
眉間に当たったニードルでその場に倒れ、まだ食べられていない全てのゴブリンと、魔狼は収納されました。
「おお! 流石はライ♪ あっという間だね♪」
「あはは♪ ありがとう。さてさて残りはどうしましょう。ムルムルでもここまで多いと無理だよね?」
「どうなのかしら? ムルムル、三十匹ほどいるけど食べちゃえる?」
ぷるぷる
「なんだかいけそうだよね?」
「じゃあムルムルを下ろしてやってくれるかしら」
「うん。じゃあムルムル頑張ってね♪」
枝から飛び下りてムルムルを地面に下ろすと、みにょ~~~んと伸び広がると、数匹ずつ一気に包み込み始めました。
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