第46話 ハイエルフの村 ③
ずんずんと大きくなる団栗の木は、あっという間に僕の背丈を追い越し、根っこも地下に広げているのか、所々ボコボコと顔を出したり、土を盛り上げたりしています。
上にもさらに伸びて成長止まらず見上げるような高さになり、幹もどんどん太くなって行きます。
「ああー! なにやってるのライー! それは私のやるべき事なのにぃー!」
テラが舞台を走り僕の足元へやって来ました。
「どうして! なんで出来るのよ! それは大地ゴニョゴニョ、ああもうー! ちゃんと出来てるしー!」
ムルムルが後ろから追い付いてきて、ぷるぷる。
「とうしたの?」って言ってるみたいに感じます。
「駄目だったかな? ごめん。テラのやっていたのを見て出来るかなって······」
「はぁぁ、それだけで出来るはずがないんだけど······まあ良いわ、次からは私に相談して! やり方も教えてあげるからね!」
「う、うん。よろしくね」
「一つ間違うととんでもない事なのよ! 変化がドライアドならまだ良いけど、トレントになったりもするんだからね! ん~見たところ大丈夫そうだけど、一応、
テラは凄い剣幕で捲し立てるようにしゃがんだ僕のスボンの裾を引っ張りながらそう言ってきました。
「そ、そうなんだ、あ、あはは······トレントの弱点は火だから森の中で戦うから火事になっちゃうしやっつけるの面倒なんだよね。ところでドライアドって?」
「ドライアドは森の妖精ね。力がある木はごく
「そうなんだ! サーバル領に来てくれないかな? 果実が実る木とか沢山あると嬉しいし♪」
「ん~、そうね。旅でこの国一周し終る頃にそこにも寄るでしょ? その時に頼んであげるわ」
「本当! ありがとうテラ♪」
そんな事を話している内に、成長も止まり、下から見ているとテラの育てた団栗の木と変わらないくらい大きくなって成長が止まりました。
「ねえライ、御神樹様が新しくなったって事なの? 木の種類が違うみたいだけと」
「そうだよプシュケ。団栗の木に変わったんだ。御神樹では無いと思うよ? だよね?」
テラとムルムルを掬い上げ、立ち上がりながら肩に乗せ聞いてみる。
「そうね。元々の木も神樹では無かったんだから」
「「
「だって、ここにあった御神樹と呼ばれていたのはただ大きいだけのリンゴの木だもの、本物の神樹は世界樹よ。別のところにあるし、ドラゴンが護っているわ」
「「
おお! 世界樹ですか! それは見に行かないとですね♪ 異世界の定番中の定番ですよ! ぬふふふ、そこに行きつくためのテンプレは······ドラゴンもいると······ぬふふふ。
「ふぁぁ、む? なぜ私は倒れて······なっ! お前はプシュケ! アレス、ディオネ! 貴様達はなぜ拘束を解いているのだ! 処刑はどうなった!」
村長は立ち上がりながら周りを見渡しています。
「なに! どういう事だ? 皆が倒れているだと······理解出来ん! おい! どういう事だ! アレス説明をせい!」
村長さんが、思ったより早く目覚めてしまったようです。
「へぇ。魔力回復のスキルかな?」
「その可能性はあるわね。調べるわ、
そうなのですね。ふむふむ、なるほど他にも色々魔道具を身に付けていますね、色々魔力を帯びた物がありますからなにをするか分かりません。
僕は村長さんの魔力をぐるぐるさせ、もう一度気絶させる事にします。ほいっと!
「アレス、答えんか! ディオネでも良い! さっさ······と」
ドサッ
「よし。後は魔道具を~収納! プシュケ、それにえっとアレスさんとディオネさん、さっさとこの村を出ましょうか」
「はい、そうしましょう。この村に住む事はもう出来ないですから。しかし素晴らしい物ですね、傷付けずに意識を刈り取るとは」
「本当にそうねあなた。私のお婆ちゃんに聞いた話に出て来るって、それもですけど、今はそんな事を話している場合ではありませんね、早く荷物をまとめませんといけませんわ」
「うむ、そうだな、すまないが少し荷物をまとめる時間が欲しいのだが」
「あっ、それなら僕が収納で持っていきますよ」
「なんと! 御神樹、いや、あのリンゴの木を収納出来たのも驚きだがまだ入る方が驚きなんだが······まあ今はそれどころではないですね、分かりました。では家に案内しますのでお願いします」
そして僕達はアレスさんの先導でお宅訪問です。
家に着いてからはもう時間ももったいないので片っ端から収納して行きました。
アレスさんとディオネさんは冒険者の装備をして、そこそこ大きな背負い袋、リュックに必要な物を詰めていきます。
残りの家具などの全てと、他の本や、服、料理道具や、狩猟道具など雑多な物は全部僕が。
全ての部屋を周り、全ての物をを収納してしまいました。
そしてみんなで村の門に向かい、外に出てから村の結界を張り直しました。
「よしよし、結界の形を覚えていて良かったですね。アレスさん、ディオネさん、忘れ物は無いですよね?」
アレスさんとディオネさんは頷いてくれました。
一緒に開拓村に一旦帰ることも考えたのですが、アレスさん達は必要なものだけリュックに詰めてあるので自分達だけでサーバル領に向けて旅して行くと言いました。
「ライ君、プシュケを頼みます」
「はい。任せて下さい」
「お願いしますね。それからプシュケ、父さん達もプシュケが生まれるずっと前、若い頃冒険者をして色々と学んだ」
「そうよ。だからあなたも旅をして色々学んできなさい♪ 私は久しぶりにお父さんと二人っきりで旅をします♪ うふふ♪ 次に会う時が楽しみね♪」
「うん♪ 私妹が良いな♪」
「「
うんうん。良く分かりませんがプシュケの妹なら可愛い子になるでしょうね♪ 楽しみです♪
二人は大きめのリュックを背負い、僕たちがこの村に来た方向に進み森に消えていきました。
僕達は、最初の目的の海に向かって東に向かい、森に入りました。
そして、一日ほど歩き夜営の準備をしていた時です。
「ん~? プシュケ、この森に違う村ってあるの?」
僕達が向かっている東側に、沢山の人の気配があります。たぶん今日のペースで歩くと数日はある距離ですが。
「う~ん、この森にある村はあそこだけだよ」
「おかしいですね? 千人、もっとかな? でも沢山の人がいるみたいだよ」
「ライ、向かっている方向よね?」
「うん。そうだね」
「帝国の兵士かもしれないわね、一応この森は王国の物だけど帝国ともせっしているのよね? なら考えるられる事は侵略よね」
「本当に?」
「可能性よ。今から様子を見に行きたいところだけど、この時間から森を歩くのは危険よ」
「うん。そうだね、明日の朝日が昇ったら背負子で行こう。もし攻めいるつもりなら追い返してしまうか、王様に報せてあげないとだよね」
そのため僕達は夕ごはんを食べ、早めに寝る事にしました。
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