第30話 王子様

「マリグノ! 王を殺せ! 命令だ!」


 マリグノさんを指差し命令しましたが。


「なぜ動かない? 俺の魅了が······」


「ねえ、クションさん、もう捕まえちゃうね♪ ほいっと!」


 マリグノさんを指差したまま固まってしまいましたので、魔力を一気にぐるぐるさせ、魔力欠乏に。


 ボキッ


 腕を伸ばしたまま、前に倒れたので床に腕をつき、指差していた腕から骨でも折れたのか、嫌な音が鳴り響き、ズズンとクションは気絶し倒れてしまいました。


「うわっ、大丈夫かな? えっと、王様、終わりましたが捕縛もしてしまいますか?」


「ぬう、しかし、我が息子とはいえ、何とだらしない体を、見るかげもないではない別人と見紛みまごうほどだ。今までの姿は全て偽りだったと言うことか······ライよ、すまぬが縛り上げ地下牢に幽閉だな。それと地下にいる四人の確認を頼めるか?」


「はい、地下の四人の方も一応この目で確かめてきますね。騎士さんお手伝いお願いします」


 僕が縛り上げている間に、騎士さんは応援を呼ぶのと台車を手配し、四人がかりで台車に引っ張り上げ、地下に向かいます。


 しかし階段ではさらに応援を呼び、八人で何とかくだりきり、地下牢へ。


 王族が悪さをした時に幽閉する場所があり、そこにひとまず投獄しておくそうです。


 そして、じめじめとした地下通路を進み、気配のある部屋に着きました。


 扉の食事を入れる小窓から中を覗くと、物凄く臭い匂いがして、鼻を摘まみながら目をこらすと若い男性が四人、裸の状態で、足は鎖に繋がれていました。


 ネックレスはしていないようですね。


 ん? 幻惑偽装していたクションを小さくしてガリガリさんにしたような人がいますよ?


「ねえ、テラ、あの人ってもしかして······」


「何よ、あんまり近づきたくないのだけど、んん~神眼! あちゃぁ~、王子様じゃない、騎士さん、中に本物の王子様がいるみたいよ」


 僕の首の後ろに避難していたテラがしぶしぶ肩に戻ってきて覗きながらそんな事を言いました。


 あはは、マジですか。


「何! すぐに開けるぞ! 鍵はどれだ! チィ!」


 騎士さんは沢山の鍵束から一本ずつ確かめています。


「ねえテラ、じゃあアイツは何者なの?」


「それは気になるわね······うん、アイツのところに連れていってくれる?」


 テラがそう言うので、少し通路を戻りさっきアイツを放り込んだ所まで戻ります


「えっと、ここも食事を入れるところしか無いんだね」


 少し腰をかがめ、テラも一緒に中を覗けるように。


んん~神眼! あはは、コイツの名前はクションだって、ライ、正解していたわね。はぁぁ、確かに魅了の魔法が使える様だけど、盗賊ギルドと暗殺ギルド、王都のギルドマスターの息子よ」


「あはは、それは······煽るためにわざと間違えていたのに名前あってたじゃん······それに、盗賊と暗殺ですか、その様な夫婦から産まれたのなら悪い事もやっちゃうのですね。王子様と入れ替わりなんてね、あはは」




 数分後、鍵がやっと見つかり扉を開けることが出来たのですが、あまりにも不衛生な牢内、僕は遠慮しておきたいと思ったのですが、なんとムルムルがオークの魔石を二個で綺麗にしてくれました。


「王子様! ご無事ですか!」


 騎士さん達は王子様に駆け寄り足枷も外します。


 王子様達は衰弱していて、今は喋る元気もなさそうです。


 残りの三人も、テラに見てもらった結果、学院で行方不明になっている者達だと分かりました。


 王子様達を地下牢から救いだし、地上に急ぎますが、クションを地下に下ろす数倍の早さで上れてしまったのは、この人達が痩せ細っていたからかもしれません。


 治療のため、医務室に急ぐ王子様達をおんぶする四人以外の者が王様に知らせるために先行します。


 やっと執務室がある階に到着し、王子様達をベッドに寝かせ、今夜は医務室長を中心に一晩中回復を続けるそうです。


 そして医務室に王様達、夕食会にいた全員がやってきました。


「コションが地下牢にいたとは本当か!」


 先頭は王様で、扉が凄い勢いで壁に当たり、大きな音を立てます。


「はい、王様、今はコションさんも、他の三人も衰弱していてベッドにいますから」


「ああ、す、すまん、諦めておったが、よもや奴が偽者、魔道具を使い入れ代わっていたとは······それに学友と聞いたのだが?」


 そこにシー兄さんがベッドを見て、答えます。


「間違いなさそうですね、今思えば、奴も元々学院にいた奴ですね学生ではないのですが、出入りしていた者によく似ている気がします」


 そうなのですね。


 王様はコション王子のベッドに近付き顔を見て、大きく頷く。


「少し痩せて頬が酷くこけけているが間違いない、私の息子だ」


「父さん······ご心配をお掛けしました······奴は、学院に魔道具を売りに来ていた奴は······?」


「あの、ぶくぶく太った奴は捕まえ投獄してあるから心配するな」


「あはは······良かったです。身体は汚されましたが、私は男ですので······ご心配はありません。学友達もですが、父さん······親御さんに連絡を。心配されているはずですから」


「分かった。早急に連絡を入れよう」


 王様は騎士に向かい三人の家族のもとに行き、この場に来て貰えるよう手配しました。


 騎士さんは二名一組で馬車を使い、お迎えに行くそうです。


 でも、コション王子、汚されたのはムルムルが綺麗にしたから大丈夫ですよ♪


「ライ、多分あなたは勘違いしていると思うけど、汚れているの意味が違うからね、クションの称号にはの称号があったから」


「?」


「はぁぁ、分からなければそのままで良いわ。ライはそのまま素直に育てて上げるから、私に任せておきなさいね」


 よく分かりませんが、テラが色々と教えてくれるそうです。


 そして、お腹も空いてきたのですが、ハサミエビの事を思いつつ、コション王子と王様の話は中々終わらなさそうですし、兄さん達も、三人の事を知っていたみたいで、ベッドに近付き、なにかお話をしていますし、そんな事を考えながら一時間くらい、医務室にあった水瓶の水を使いぐるぐるをティに教えて行きます。


「初めは全然動かないけれど、ある時魔力が見えてくるわよ、見えてきたらそこからはやり甲斐もあるし、私もそこからは早かったよね♪」


 フィーアも一緒に教えてくれています。


「うん、フィーアは土からだったよね、あの頃は土遊びしながらだったもんね」


「そうそう、それから水を動かせるようになって、風、火は危ないから中々近くに行けなかったものね」


「僕はマシューにお願いして内緒の修行したよ」


「まあ♪ では私はどういたしましょう、日中は学院ですので、風でしょうか?」


 ティのほっぺに人差し指を添え、首をかしげ考えています。


「うん、僕は風からだったよ。風なら何も道具は要らないしね」


 うんうんとフィーアも頷きながら同意してくれます。


「それから何をしていてもぐるぐるを続けるのが上達の秘訣よ♪ あの頃ライにしつこく言われたものね、あははは♪」


「まあ♪ フィーアが、羨ましいです、私も幼少の時にお逢いしたかったですわ」


「はぁぁ、その素直さが古代魔法を覚えるコツなのかなぁ。でも、古きものも、使えるものがなく、新たに使える者が現れたのなら嬉しいわね♪ ほらムルムルも頑張りなさいね♪」


 ぷるぷる


 肩の上でもムルムルが奮闘していますね。


 そんな時、親御さん達が到着したとメイドさんが知らせに来てくれました。


 そのお知らせメイドさんが退室して、ほんの少し後に騎士さんに先導され、医務室に六人の親御さんがやって来ましたので、僕たちは食堂に移動し、主催者のいない夕食会が始まりました。


「うん♪ ハサミエビ凄く美味しいね♪」


 それはもうプリっぷりて、料理人さんの作ったソースもあいまって、マシューの物とはまた違う美味しさです♪


「はい♪ 沢山釣り上げて正解でしたわ♪」


 上品にナイフとフォークで一口大に切り分け、ソースを絡めて口に運びます。


 この綺麗な食べ方は、流石お嬢様という事ですね♪


「うんうん♪ マシューさんのも好きだったけど、これは素晴らしい出来ね♪ 釣りたてだから、泥臭さがあるかと思ったけれど、上手く処理されているわね♪」


 流石お義父さんが料理人なだけあって、言うことが違いますね♪



 滞りなく夕食会も終わり、僕は騎士さんと一緒に商人街へ向かい、ぐるぐるをやり。


 その後に、奴隷の首輪を嵌められたクションから聞き出した、スラムにある盗賊ギルドと、暗殺ギルドに向かいます。


 商人街へ入った所で、僕は馬車の速度を落として貰い、ぐるぐるを始めました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る