第29話 透けた心
王様、ティパパ、フィーアパパ、宰相さんとモーブス男爵さん達は、王様の執務机に集まり、モーブス男爵さん達が集め持ってきた資料に目を通しています。
僕はと言えば戻る時にシー兄さんとマリグノさんをどうやってくっ付けていくか、作戦を考えていたのですが······。
「残念ねライ、あなたが何かする前にくっついちゃったみたいね、くふふっ」
肩の上で耳たぶを掴んでいるテラの言う通り、そうなのです。
シー兄さんとマリグノさんは、僕が帰ってきたことも気が付いていない様子で、手を取り合い、見つめ合う。
「シーリール様、隣国の王子様の事は何でもない事なのです。お茶会が
「マリグノ、俺も君の事をずっと気に掛け、いつも、いつまでも一緒にいたいと思っていました。マリグノ、俺の婚約者になってくれますか?」
「はい! どうか末永くよろしくお願いいたします」
てな具合でくっついちゃったみたいです。
「あはは、まぁ、流石兄さん達と言うことですね」
そして、夕食会の会場にみんなで向かうことに、モーブス男爵さん達は行かないのですが、面白い物を準備していただき、それを利用して作戦を立ていざ出陣です!
王様が一番奥の席に座り、左右にお義父さん達、左の列にラクシュミー、フィーア、ティ、カリーアさんとお母さん。
向かい側に、アース兄さんシー兄さん、マリグノさん、僕、父さんが座りました。
一応王様の正面は、一つ席が用意されています。
皆が席についてすぐに王子がメイドさんの先導で会場に入ってきました。
「王子様をお連れしました」
「うむ、ご苦労」
メイドさんは軽く頭を下げ出て行きます。
入ってきた王子はメンバーが増え、知らない顔や、兄さん達がいることを怪訝に思ったのか、少し身構えている。
「お待たせしました。父上、予定に無い者達がいるようですが、何事ですか?」
「うむ、ラクシュミーの婚約者が決まったのでちょうど顔見せに良いであろう。相手はサーバル家の次男、アースリールだ。それとサーバル家と
(ほう、相手が男爵家とは
「おお! ラクシュミーおめでとう、それは良い事ですね」
「うむ、それからな、ディーバの娘シャクティと、ノスフェラトゥ公爵家のフィーア嬢二人の婚約者にサーバル家三男ライリールが決まった」
(何! ならばシャクティも殺さなくても王位は私の物で決まりと言う訳か! いや、奴の弟は殺しておかなければな。くっくっ、シャクティが生きていた事に驚いたが、暗殺もまともに出来ぬ奴を雇うとは、マリグノめと思っていたが、なんともまぁ、これで全てが上手く行くではないか、サーント辺境伯の財力目当てのマリグノは既に私の魅了の虜であるしな)
「そうでございますか、残念な思いもありますが、シャクティ嬢、フィーア嬢、おめでとうございます」
(なんて、良い日だ、夕食会を催して正解だな、ふふふふ)
「それから」
(何? まだなにかあるのか?)
「サーバル家長男、シーリールの婚約者にサーント辺境伯令嬢、マリグノが正式に決定した」
「なっ! ど、どういう事ですか! マリグノは私の婚約者候補ですよ! 学院卒業と同じくして正式に決まる予定になっていましたよね!」
(どういう事だ、何がどうなった! シーリールだと! コイツは魅了も効かぬし、中々の武と魔法の腕前だ、そう簡単には殺ることは出来んぞ! 何度も刺客を送り何度も苦渋を味あわされたのだ! それどころか、私がなるべき生徒会長や、文武での順位争いでさえままならん! コイツ達は、呪いを仕掛けて魅了を掛けようともなぜか効かん! 忌々しい! 仕方がない、後、財を持っている者を候補に上げるしか無いか)
「ただの候補だったお前から、正式な婚約者とシーリールに決まっただけだ。言いつけ通り手は出していなかった事は褒めてやろう」
(出すわけ無かろう! そもそも! いやその様な事をして要らぬ噂が立ち継承権に
「はっ、マリグノ、一時期とはいえ、婚約者候補であったのだ、そなたの幸せを心から祝いましょう」
(しかし、婚約者候補とは言え、王の進言では逆らえんか。ん? 魅了はどうしたのだ? ネックレスは······着いているようだな。王の命令では私の魅了でも威力が半減か······まぁ良い、私が王になった暁には、家臣は全ての者達を、呪い、そして私の魅了で言いなりにしてしまえば良いからな)
「ありがとうございます」
「ライリールよ、頼めるか?」
「はい、王様♪」
僕は、耳から念話の魔道具を外し、テーブルに見えるように置きます。
「ぬっ! 念話の魔道具だと!」
ここにいる皆が耳から念話の魔道具を外し、まだ料理の来ていないテーブルに置いて行きます。
「なっ! 皆が魔道具をだと!」
(まずい、まずい、まずい、まずい、まずい、まずいではないか! 念話と言う事は入ってきてから私は何を考えていた······くそっ! 何としてでもこの場を乗り越えねば!)
青ざめた顔で、何やら逃げ出そうとしていますね~♪ 実はみんなは
(やむ終えん、屋上の呪いを解放してこの部屋に充満させてやる! 王も最大級に魅了して、傀儡にしてくれるわ!)
王子は懐から黒いネックレスを取り出し、慌てて着けていますね~♪ あれが呪いを解放させて操作する魔道具の様ですね♪
「あははははは、いやいや参りましたね、私の立てた計画を、何事もないように進めるつもりでしたが、そうも言ってはいられないようです」
髪をかき上げ、僕たちに向かって手を伸ばし広げていた手のひらを握りしめ、言い放つ。
「あははははは♪ せいぜい苦しみ、呪われるが良い! “深淵より彷徨い
握りしめた拳を今度は開き、僕達に何かを送っている様な雰囲気です♪
「あははは、は、は、は?」
(な、なぜだ! なぜ誰も苦しまないのだ!)
「あ~、クションさん、呪いは来ないですよ」
「私はコションだ! それに不敬である! 様を忘れておるぞ!」
何と! コションでしたか! まあ、このまま煽り煽るのがテンプレでしたよね?
王子様が失脚する物のテンプレ♪
「あはは、クションさん、その魔道具は役立たずの様ですね~♪ あははは」
「不敬だぞ! 私は
(くそっ! これでは地下の四匹は死んでしまったであろうが、くそっ! くそっ! 後はもうこの手で奴らを殺すしかない!)
「ほいっと!」
王子が持っていた、魔力を帯びた魔道具の魔力をバラバラにして、使えなくしてあげました。
「くらえ! ダークバインド!」
魔道具の指輪を
「クションさん、中々カッコ良いポーズですね♪ でも、クションさん······お腹がぷよぷよだったのですね、首も見えない三重顎ですし、脂ぎってますし、三倍くらいに大きくなりましたね? 身長は低くなりました?」
「はへ? ど、どうして······」
食堂の大きな窓に自身の姿が映っているのを見て困惑しています。
「なぜだ! 幻惑と偽装の魔道具が壊れたのか!」
(まずい、まずい、まずい、まずい! これでは暗殺と、盗賊ギルドの称号が見えてしまうではないか! 密輸出入の不法奴隷や麻薬についての称号も! 後これだけは知られてはいけない物が)
へぇ~、そんな悪い事までしていたのですね。
王様が、奴隷の首輪を嵌めるでもなく、詰問するまでもなく、勝手に喋ってくれるなんて、くふふっ。
「チッ! くそっ! 貴様ら覚えておれ!」
ん? 何をするのでしょう?
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