第25話 立入禁止
庭に下り立ち二階のベランダから見えた小川方面へ向かいます。
その先に池が見えたからです、池と言えば~。
「ライ、まさか人様の庭でハサミエビ釣りを
え! な、何で知ってるの、それはフィーアにだって内緒にしていたはずなのに······
「な、なんの事かな~あははは」
「知ってるんだからね、マシューさんと一緒に隣のお家の池からハサミエビとか釣ってくるの見たんだよ、夕食に出ていたし」
「まあ、ハサミエビが釣れますの♪ 美味しいですわよね♪」
「あはは、ここはいるかどうか分からないですから様子見はしたいかなって、お隣さんはマシューが昔から釣りに行っていたから、お隣の池には物凄く沢山いたんだよ、簡単に釣れたし」
魚の頭や、お肉の硬くて食べられない所を餌に、もちろん道具は収納してありますが。
「で、道具は三人分あるの?」
期待の目になっているティと、なぜか既に手を出し渡せって感じのフィーア。
「わ、分かりました、皆の分を用意しますから、じゃあ少しだけ待ってね」
池に到着して、二人に一メートルくらいの釣竿を渡し、仕掛けを作ります。
竿を握る手元の糸巻きに糸を十メートルほど巻き付け、竿先の輪っかに糸を通して、糸の先にはオークの皮細切りにして長さ五センチの物をくくり付けます。
三人分用意が出来たので、池のまん中にある島へ渡る橋から釣るために二人を先導して、まん中辺りで橋を支える柱ごとに分かれ、各々水を張ったバケツを足元に置き、僕は最初に真下の柱に添わせる様にオーク皮を沈めていきます。
フィーアは先に糸巻きから糸をある程度出しておいて、出来るだけ遠くに投げています。
ティは竿を前に伸ばしただけの所に、僕と同じように手元の糸巻きからほどいて仕掛けをどんどん下ろしていきます。
「皮が底に着くまで糸を伸ばしていって、底に着いたら糸が緩むので、皮を浮かさないようにギリギリまで糸を張ると良いよ、ハサミエビが食いつくと糸が動くから、そ~っと竿を立てるんだ、するとハサミエビは餌を逃がさないためにハサミで餌を挟んで離さないから釣れるんだよ、ほら♪」
説明している途中に僕の仕掛けにハサミエビが食い付いた様です。
ティとフィーアが見守る中、そ~っと竿を立て糸を手繰り寄せます。
どんどん手繰り寄せ、オーク皮を挟んで離さないハサミエビが水面を離れ橋の上に上がりました。
僕はバケツの上まで持ってゆくとさっさと入れてしまって、餌を外し、ハサミエビに上げて、完了です。
「ライ凄く大きいですわ♪」
「すごいわね♪ こんなに大きいハサミエビは見たこと無いよ~♪」
「うん、僕も大きいからびっくりしちゃった、あははは♪」
三十センチくらいはあるハサミエビは見た事無いくらい大きいです。
「あっ! 二人とも糸が動いているよ! そ~っと竿を立てるんだ!」
「「
二人ともにそ~っと竿を立て、糸を手で掴み手繰り寄せます。
先に上がってきたのはティの方、これも僕が釣ったハサミエビと変わらない大きさです。
「ティ、バケツの上にまで持っていって結び目を
「は、はい!」
ティは挟まれないように慎重に蝶々結びしてある紐を解き、ポチャンと音を立て、ハサミエビは見事にバケツに入りました。
その横ではフィーアもだいぶ近くまで手繰り寄せてきていました。
「ライ、大きいわ! バケツの用意をお願いね、行くわよ、そ~っと」
持ち上げてきたハサミエビは釣った中で一番大きく、ハサミもめちゃくちゃ大きい、橋の上まで来たのでバケツを手に取り、フィーアが持ち上げているハサミエビの下に素早く差し入れ、はみ出しそうになりながらも確保。
これで、三人ともに釣り上げる事が出来ました。
「あなた達すごいわね! 物凄く大きいじゃない! どうしょうムルムル、悔しいけれどあれは私達では出来ないわね、持ち上げられないわ!」
「あははは♪ テラ達より大きいからね、でもムルムルなら出来そうじゃない?」
ぷるぷる
「そう言えばそうね、糸の代わりに体を伸ばせば」
ぷるぷるぷるぷる
「あははは、ムルムルは嫌そうだね、餌じゃなくて直接ムルムルを挟んじゃったら痛そうだし♪」
その後も釣ったり逃げられたりしながら楽しんでいたのですが、お昼の準備が出来たとメイドさん達がお迎えに来てハサミエビ釣りは終了になりました。
なんと夕食に出してくれるとの事で、逃がさないと駄目だと思っていたのですが、メイドさん達がバケツを持っていってくれました。
「夕食が楽しみになったね、クション? ケションか、アイツには出さないようにお願いしておこう♪」
「うふふ♪ それは良い考えですわ」
「そうね、そんな悪さする奴には食べさせて上げるもんですか! オークの皮で良いんじゃない♪」
それ採用です♪
メイドさんに、餌のために切ったオークの皮を渡し、お願いしておきました。
少しだけ困った顔をしましたが、料理長にお願いはしてもらえるようです。
「あなた達、メイドさんを困らせるんじゃないわよ、ごめんなさいね、無理なら無理で良いからね」
テラが良い子ちゃんな事を言ってますが、メイドさんは一瞬悪い顔をしたので、メイドさん達にも不評なのかもしれませんね。
お昼ごはんが終わり、今度はお城の中を探検です。
「ねえねえ、屋上に行ってみない♪ お城の上から景色を見たら絶対気持ちいいよ♪」
「うんうん、賛成、ティもそれで良いかな?」
「はい♪ 私もそれを言おうとしてましたの♪」
全員が賛成なので、上り階段を探し一つひとつ上っては確かめ、うろうろしているとメイドさんに出くわし、屋上への行き方を教えてもらいました。
って言うより、案内してもらいました♪
「こちらから、外に出ると屋上です、普段メイド以外は立入していませんので私がご案内させていただきますね」
「へえ! そうなのですね! でもそれなのに良いのですか?」
「はい、この何年か立入禁止でごさいました。王子様に出るなと命令されましたので、その後は庭にある林の中に洗濯物を干していたのですが、エンペラーイーグルと言う大きな鳥の魔物が巣作りを始めましたので、その邪魔をしないように干す場所を変更する許可を得るためメイド長様が王様にお伺いをして、
ふ~ん、何故でしょうね? ってエンペラーイーグル魔物ですか。
「その魔物をやっつけましょうか?」
悪さをする魔物でしたら、追い払うかやっつけちゃいますよ!
「うふふ、お強いのですね。でも大丈夫でございます、エンペラーイーグルはとても強い魔物なのですが、こちらから何かをしなければ襲い掛かってきたりはしませんし、卵を
「なるほど、良い子の魔物なのですね、その赤ちゃん見てみたいですね♪」
「あっ、私も見てみたい♪」
「私もですわ♪」
「うふふ、まだまだ先でしょうね、巣が出来てからになりますから、では屋上に出ましょう。私も久しぶりに屋上へ出ますので楽しみです」
そして屋上に出たのですが
「ライ! ここにあの呪いと同じ禍々しい気配が漂っているわ! 気を付けなさい! ライ以外はお城の中に戻って! 早く!」
ティとフィーアは、テラが叫んだその言葉に反応し、メイドさんの手を引き出てきた扉から中に飛び込みました。
僕は、自身の周りの魔力をぐるぐるさせ嫌な物が入って来ない様にします。
「テラ! どうすれば良いの! 見た感じだと、あの真ん中のと、まだ何か所かあるね、あれをまた浄化したら良いの!」
「そうよ! ダメ! ムルムルが持たないかも! お願い急いで早く! 結界!」
「なっ! 全開です! ダァァァァー!」
ムルムルもう少し頑張って!
僕は屋上を中心にお城全てに意識を広げ、周囲にある魔力をこの嫌な気持ちにさせる物、それを吸い取る様にイメージしてぐるぐる回し始めた。
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