第24話 呪いと魅了

 母さんの転移で、王都の別邸に到着しました。


 外にだったのに急に大きな部屋に視界が変わったのでお子様組は物凄く驚きましたが、他の皆は驚きもせず、大きな窓を開け外に出ました。


 父さんは近くに居たお花に水を与えてるメイドさんに、一言、「しばらく滞在する」と言って僕に馬車を出すよう促します。


「分かりました、ほいっと!」


 出した馬車にシルキーさん達は、なれた手つきで馬さん達を誘導し、準備をしてしまいました。一台目は父さん達、二台目は母さん達、三台目に僕達とステファニーさんが乗り込み、シルキーさん達は馬に乗り、王都の街に別邸の門を抜け、馬車は出て行きます。


 小窓から馬車の外を覗いてみると、シルキーさん達三番隊の皆さんが護衛をしているのが見えます。


 初めての街並みを見ていたのですが貴族街ですのでお城まではそんなに掛からないのです。あっと言うまに到着しました。


 どこかで待たされるのかなぁとか思っていたのですが、流石は王様の弟なだけあり、ずんずん進むのですが、ぞろぞろ付いていく僕達の事を見て、兵士の方が壁際に避けてから話し掛けてきました。


「公爵様、おはようございます、本日はどの様なご用向きでしょうか?」


「おはよう、兄に娘の事で報告にな、ちょうど良い、案内を頼む」


「はっ、では前を失礼します」


 兵士さんが先導して城の廊下を進み、思っていた物とは違い、質素な扉の前で止まり、ノックをしました。


 コンコンコン


『誰だ?』


「公爵様をお連れしました」


『ふむ、弟か? 入れ』


「はっ」


 カチャ


 兵士さんが扉を開けて、僕達は中にぞろぞろと入りました。


「では、巡回に戻ります」


 兵士さんが扉を閉め、離れて行くカチャカチャ鳴る足音が遠ざかって行きました。


「どうしたディーバ、シャクティの学院でも視察に来たのか?」


 少しニヤニヤしながら悪戯っ子の顔で王様がお義父さんに問いかけます。


「それもだが、宰相、少し席を外せ」


 チラっと王様とこの執務室に居た人見た。


 宰相様なのですね。


「ん? 居てはまずい話しか?」


「うむ、まずは兄さんだけに」


「分かった、宰相、呼ぶまで先ほどの贋金にせがねの件についてそれを使え」


 テーブルの上を指差します。


「はっ、では行って参ります、ディーバ公爵様も失礼します」


 最相さんは立っていた横のテーブルから首輪の様な物を手に取り部屋を出て行く前に一礼。


「贋金のだと?」


「あ! 完全に忘れてました」


「あっ、ライ、あの事かしら、辺境伯様の所でライが捕まえた冒険者ギルドマスターの事ですわね」


「ん? そのギルドマスターをシャクティと一緒に捕まえた? ライと申すのか? サーバル男爵も居るようだが」


「はい、お初にお目にかかります、サーバル男爵家三男、ライリール・ドライ・サーバルです、よろしくお願いいたします、その通りです、人攫いを捕まえた報酬を頂く際に捕まえました」


「ふむ、弟の娘を守りそのギルドマスターを取り押さえたと報告が来ている、良くやってくれた、眠り薬をもちいた人攫いのグループを捕まえた報酬の事だな、今、その事で国庫を調べて貰うところだ」


「ライ、お前そんな事までやってたのか?」


 あっ、その辺りも完全に忘れてました。


「あはは、はい、報告するのを完全に忘れていました」


 ティ以外の皆さんがジト目です。


「ふむ、あの人攫い達は、ラビリンス王国からの者達だが末端に過ぎん、あるダンジョンに連れて行く所までしか奴らは知らされていなかった、目的、標的だが子供と、冒険者、この組み合わせで連れてくるように依頼されていたそうだ」


 そんな組み合わせより、ダンジョンを攻略するなら冒険者の方が良さそうなのですが、子供は何に必要なのでしょうか?


「峠手前で冒険者達を攫い、山頂で、シャクティ、中腹で、ライ君を攫ったそうだ、もし国境を越えていたとすれば絶望するしか無かったが、それを覆し、シャクティ、それに冒険者達まで救い出した、その流れで贋金が出回っている出所の糸口を掴んだ、その功績は大きいものだ」


「ふむ、贋金か、貨幣を大々的に造れるのは帝国だが、そこまで大事なのか?」


 隊長さんも何か個人では無理、そんな事を言ってましたね。


「ああ、各領地の貴族達に調べて貰ったが、結構な量の贋金の発見があったと先ほど届いてな、今から調べるところだった」


「王様、ライリール様に褒美を考えなくてはなりませんな」


 宰相様、既にティ助けた事で叙爵の報酬は予定ですが貰ってますよ。


「じい、そうだな、叙爵か? それとも何か良いものはあるか?」


「兄さん、叙爵は伯爵が決まっているぞ、その事について来たのだが、そうだな順を追って、シャクティとライ、ライリールは婚約した、それに、魔国のノスフェラトゥ公爵令嬢フィーア嬢とも婚約だ、だからコションの求婚は受けられん、それと」


「ご無沙汰いたしております師匠、師匠の娘ともこのライと、ふむ魔国との橋渡しが出来るではないか、伯爵か? ならば叙爵は良いとして、バカ息子がまた何かしでかしたのか?」


「なんだ、覚えていたのか、ふふっ、十歳の時だろ、ちょっと手解きしてやったのは、そうだな、コションは呪い付きの贈り物を届けてきやがった。それも、各国で使う事を禁じられた魅了魔法まで付与してな、もう甘いことは言わせんぞ、即刻呼び出し詰問だ」


「ぐっ、あのバカは、ちょうど良い、今夜、辺境伯令嬢マリグノ嬢を連れ夕食会が催される、ま、まさか!」


「その可能性が高いだろうな、隣国の王子との婚約を取り止めるなど、無理やり手を出したか、魅了魔法を使ったか、兄さんあれの損害賠償はとてつもなかっただろう」


「いや、まだ正式に決まってはいなかったからな、学院での口約束程度ではあるが、それでもあちらには謝罪をする事になった、問いただし、真の事なら継承権はヤツにはやれんな、魅了の魔法は国家間の付き合いで使わないよう取り決めがされている、だから魔法の契約で縛ったのだ、それを使っていたならば私でも覆せん、廃嫡、幽閉だな」


「でだ、兄さんその贈り物はライが呪いを払い、魅了魔法もだ、ここに持ってきているが、もう少し広い場所が良いだろうな、十八箱あるらしい」


「分かった、じい、今聞いた事は他言禁止だ、お主は国庫を調べる事にまずは集中してくれ、それと夕食会の兵の配置は最大級に変更だ、奴を取り押さえるなら魔法が使える奴を多めにな、あんな奴でも魔法は中々の物だからな」


「はっ、すぐに近衛兵に伝えておきます」


「私はそうだな、夜の食事会の場に行こうか」


「はっ、では先に失礼します」


 宰相様は部屋を出て行きました。


 王様が立ち上がりまさかの先導、一番前を歩き部屋から出て廊下を進みます。


 流石に広いお城の中をしばらく歩き、やっと大きく細長いテーブルがある食堂にたどり着いたようです。


 中に入ると王様は窓には近づくなと人払いをして、食堂の大きな窓からバルコニーに皆で出ると、ここに荷物を出すそうです。


「では出しますね、ほいっと!」


 ズズン


 十八個の木箱がバルコニーに並びました。


「中身は確認したのかね?」


 王様は聞いてきましたが、そう言えば確認はしてませんね。


「申し訳ありません、中身の確認は出来ていません」


「ふむ、何があるか分からんな、よし奴に開けさせることにしよう、夕刻まではしばし時間があるが、ノスフェラトゥ公爵、ディーバ、サーバル男爵、執務室で今後の事について詰めたいのだが良いだろうか?」


 三人は、立てに首を振り、王様は僕達の方を見て、お城の中ならどこを見て回っても良いと言ってくれました。


 なので僕達三人はバルコニーから下の庭に下りれる階段から庭に下りて、庭園を散策するとこにしました。

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