第22話 スイミングスクール

 ティの先導で廊下を進み、やって来ました憧れのプールですよ! お風呂ですがなにか?


 面倒くさいと言うか、早く泳いでみたいので、僕が皆の服を収納して、ティのドレスはハンガーに、フィーアのワンピースもハンガー。


 僕の服は収納したまま放っておきます。


 二人のパンツは、つるで編んだかごに出して、二人別々に放り込んでおきます。


「よし、テラ、初めはどうすれば良いの?」


 湯船のふちにムルムルに乗ったテラが、何か複雑な顔をしていますが、僕たち三人は、わくわくして、テラの言葉を待っています。


「はぁぁぁ、水着があるのかなぁって思っていたけど、やっぱり無いのね、あなた達本当に裸見られても何とも思ってないのね」


 肩を落とし、水着っぽい服に変えていたテラですが、お風呂なのですから裸になるのは当たり前の筈です。


 何がいけないのか分かりません。


「はぁぁぁ、良いわ、まずは準備運動よ! 体の至る所を伸ばして怪我をしないようにするの、私の真似をして付いてきなさい!」


 自分も、しゅるんっと服をしまって裸になり、準備運動を始めます。


 僕達はテラの真似をして、足や手、腰や首、いろんな所を曲げ伸ばしやひねり。


 そして、先日ティに大ウケしたぐるぐるを、ティとフィーアに見せていると、ティは大喜び、フィーアは。


「ライ、それ好きよね、メイドさん達も喜んでたし、あははは」


「ライ! それは、そこは準備運動しなくて良いから止めなさい! そして二人とも顔が近いって! 離れなさい! こらっ! 掴もうとしないの!」


 そんな事もありましたが五分ほど準備運動が続き、最後に深呼吸をすまして終わりのようです。


「うん、皆の体が柔らかくなって、ホカホカしていたでしょ、じゃあ湯船に入ってバタ足から練習よ!」


「「分かりました♪は~い♪」」


 ここの湯船は一メートルくらいの深さがあって、僕達は肩から上が出ているだけで、かなりの深さです。


「じゃあ三人とも縁に手を置いて、こうやって、足をバタバタさせるのよ、見ててね」


 ムルムルに手を置き湯船に体を浮かべたテラは、足をバタバタ。


 推進力があるのでムルムルかすぃ~っと移動して行きます。


「「テラ凄い♪おお~♪」」


 その後僕達は、浴槽の縁に手を置きバタ足、次はのぼせてはいけませんから一旦外に出て体の動きを教えて貰います。


「上半身はこんな風に、ぐるぐる、足はさっきのバタバタするバタ足ね、もう一つはカエルの様な泳ぎ方よ、これはね、手は水を後ろに掻き出す感じで、足は蹴るこんな風にね」


 湯船に戻ったテラは実演して、体の動きを教えてくれました。


「さあ、そろそろ体も冷めてきている頃だから中に入ってやってみましょう!」


「「分かりました!はい!」」


 それからはしばらく泳いで、体を冷まし、また泳いで、最後には十メートルくらいある湯船の端から端まで皆が泳げるようになりました。


「さあ、泳ぐのはとても疲れるから、今日はここまで、さあ、そろそろ出るわよ」


「「は~い♪は~い♪」」


 出ようとして、体を洗っていない事に気が付いて、体を洗い、背中は洗いっこして、お風呂を出ました。


 もちろん泳いでいる間お湯をぐるぐるして、ムルムルに乗ったテラをウォータースライダーして上げましたよ。


 物凄く気に入ったようで


「ひゃっほ~い♪ ライ、フィーアでも良いわ、もっと高い所から滑らせて♪」


 と、何度も滑って楽しんでいました。


 テラ、今日は泳ぎを教えてくれてありがとうね。


 体を拭き、汗が引くまでベンチに座っていると、母さんとお義母さん、それにカリーアさんがお風呂にやって来ました。


「ライ、フィーアちゃんまで······」


 お義母さん?


「うふふ、フィーアは小さい頃から一緒に入ってましたから、でもそうね、そろそろその辺りも教えていかなければ駄目ですね、もうすぐ川で泳ぎが始まるのよ、不特定多数の男の子の前で裸になられては困りますし」


 カリーアさん?


「そうね、カリーア、フィーアちゃんは吸血鬼同士しか結婚駄目なのよね?」


 母さん? 僕はそう聞いたよ。


「ぷっ、それね、お父さんが嘘を教えたのよ娘を嫁にやりたくないからって。吸血鬼って、二千年くらい新しい子供が生まれていないの、フィーアが久しぶりに生まれた吸血鬼なので、『ずっと嫁にはやらん』なんて言って私に内緒でそんな事をばらまいて、まあ、い人が出来るまではそれでも良いかって思ってましたが、うふふふ」


 え? それじゃあ!


「え? ライと結婚しても良いの? なんだ、それならそうと早く言ってよね。ライ、ティちゃん、私も仲間に入れるみたい、よろしくね♪」


「まあまあ♪ フィーアちゃん、こちらこそよろしくお願いしますね」


「え! 本当に! やっっったぁぁぁ~♪ ずっと一緒にいようね♪」


「「はい♪うん♪」」


 二人は僕に飛び付いてきて、まだ冷めきらない体でお互い抱き合いぴょんぴょん跳ねてしまいました。


「うふふ♪ ライったら一日で二人も婚約者が出来てしまいましたね♪」


 はい、母さん、とても嬉しいです。


「あははは♪ ライならお父さんも諦めるでしょ、ごねるなら私が説得調教するわ♪」


 カリーアさん?


「まあまあ♪ では私達は親戚になりますわね、うふふ♪ お二人ともこれからもよろしくお願いいたしますね♪ シャクティにもその辺りをしっかり教育しませんと、うふふ」


 そうか、親戚になるんだ♪


「あはは、はぁぁ、結婚するんだ、なら問題解決ね! そうよねムルムル!」


 ぷるぷる?


 そして、僕達はティのお部屋で三人一緒に寝る事にしました。




「ふぁぁぁ、もう朝かな? テラとムルムルは?」


 目線を移動するとやっぱり僕の胸の上にいました。


 ティとフィーアは僕を真ん中にして、抱き枕(DIYで作りました)を抱え込んで寝ています、もちろん角うさぎの腹巻き付きです。


 そ~っとテラとムルムルを、ベッドに下ろし、大きな窓を開け、二階のテラスに出ました。


「どうしようかな、兄さん達にも会っていこうかな、王都もその内行くつもりでしたから」


 そんな事を考えながら、ぐるぐると風を渦巻きに、木の葉に付いた朝露を巻き込み、その朝露もぐるぐる。


 風と朝露で竜巻のようにぐるぐるです。


「うん、次の目的地は王都! ドワーフさん居るかなあ?」



 その後、ティとフィーアも起きてきたので、僕とフィーアで、ぐるぐるのやり方をティに教えました。


「ティ、これ本当に呪文を唱える魔法より楽チンだから、いつでもぐるぐるのイメージしておくの、半年もすれば魔力が見えて風が起こせるようになるわよ」


「うん、呪文を使った魔法って、どんな魔法を使ってくるのか分かってしまいますから、防がれたり、邪魔されたり、でもこのぐるぐるなら呪文無しで撃てるからね」


「はい、頑張ります♪」


 いつの間にか足元に来ていたテラがこんな事を言いました。


「その魔法を極めなさいね、ティも、将来良い事があるかもね、ん? ムルムル、あなたもやってるの? あははは♪ 頑張んなさい♪」


 ムルムルも魔力をぐるぐるしだしたようです。


 魔石が回っていますので、頑張っているようですが、魔石を動かすんじゃなくて、魔力を動かそうね、あははは。


 僕とフィーアが、コツを教えている内にメイドさんが朝食の準備が出来たとお知らせに来てくれました。


 そこにはフィーアのお義父さんがエプロンをしたまま待っていました。


「ライく~ん、うちの可愛いフィーアと······ぐふっ」


 カリーアさんの鋭いボディーブローが決まりました。


 くの字になりお腹に手を添えぷるぷるしているお義父さん······。


「あなた、もう決めたの、まだ説得調教が足りなかったのかしら?」


「ひゃい、わ、分かりました······」


「お店の仕込みを途中で放ってあるのは大丈夫なの? 婚約の念話した後飛んで来ちゃうし」


「み、店は今日は開けん、こんな気持ちで作る料理は客には出せん」


「うふふ、娘はいつかお嫁に行くものよ、あなたが私を親元から貰ったようにね、それにライなら昔から知っていますし、元パーティーメンバーの息子よ、これほど良縁は私は見たことがないわよ」


「ぬぅ、コションのような奴に見初められ、娶られる事を思えば、それも良いか、ライ、フィーアを不幸にするような事があれば、許さんからな、それにお義父さんと呼ぶことを許そう」


「はい、僕はまだまだ子供ですが、絶対に幸せにしますね」


 お義父さんが頷き、朝食の場に居た皆が頷いてくれました。



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