第21話 夕食
「よし、後は······」
皆さんが僕を、じぃ~っと見てきます。
父さんが母さんに肘で、つんつんと押され、口を開きました。
「ライ、約束を破り討伐をやっていた事はこの際許そう。でだ、いったいどれほどの魔物が収納に入っているのだ?」
ジト目で僕を見て、返事を待っています。
「公爵様、魔物の買い取りは出来ますか?」
おお! 父さん良い事を聞いてくれました! ここで買い取っていただけるならそれはもう助かります。
数が多いので、ギルドだと多分無理ですからね······。
「うむ、ゴブリン二匹で銅貨一枚だな、魔狼なら毛皮の状態にもよるが、銀貨に手が届くかどうか、大銅貨七枚からその辺りだな」
「分かりました、お庭をお借りする事は出来ますか?」
ふむふむ、なら大金貨に手が届く計算ですね、ギルドに売るより割高です、ギルドなら三匹のゴブリンで銅貨一枚ですからね。
「うむ、早速庭に出ようか、シルキー三番隊を庭に、ゴブリンなどを運ぶ用意もして集合させよ、旅疲れのところすまないが」
「はっ、ではすぐに」
シルキーさんは一礼して応接室を出て行きました。
「では行くか」
庭に続く大きな窓を開け、僕達はテラスに出ました。
流石公爵邸庭が、って言うかお城ですねもはや、あはは。
そしてその庭は大きく、男爵家の屋敷なんか何個も余裕で入る広さがあります。
「どうせ、ビックリするほどの物が出てくるのであろうから、ここなら良かろう」
多分大丈夫かな。
「ライ、数えやすいように十匹ずつ塊で出すように、まずはゴブリンからだ」
「分かりました。では十匹ずつですね、ほいっと!」
ドサドサ、ドサドサっと十匹ずつ出して行き、三十個目の山を出したところで止められました。
「待て! 待て待て! いったいどれほどのゴブリンが入っているのだ! 今ので三十の山が有ると言うことは三百だぞ!」
「ん~、父さん、分からないです。数は分からないですがまだまだありますね、この辺りは日に百匹ずつ二人で倒していた時の物ですから、今出ている物は三日分ほどなので、後二年分はありますよ」
「「
「まあ♪ ライは凄いのです♪」
「はぁぁ、ライ、あなた貯め込みすぎよ! 小出しにしなさい、皆が驚いて、固まっちゃったじゃない」
ティは満面の笑みで褒めてくれましたが、テラは、呆れ顔です。
そこにシルキーさんが三番隊を連れ、荷台を引いてやって来ました。
「おお! ライ殿沢山狩りましたね、なるほどこれほどのゴブリンが入っていたなら収納が心配になる事も分かりますね」
「シルキーさん、お疲れ様です、あのまだ出している途中です、待てと言われましたので」
「うんうん、この数だけでも数回は倉庫と往復せねばならないでしょうから私達としてもこれを運ぶのは
そうですよね、いちいちここから荷台で運ぶなんて手間だけがかかりますからね。
「分かりました、では一度収納してしまいますね。収納!」
出した三百匹分のゴブリンを入れ直したところで、固まっていた皆は復活しました。
「ライよ、お主これほどの数を二人で、それも数年に渡って倒し続けたと?」
「はい、最後はゴブリン村長を間違えて倒してしまったのですが、それ以来増えなくなりまして、それでその前に潰してしまって復活を待っていたオークが復活していて、最後はオーク村長も倒したので一年くらいはどちらも急激に増えることはありませんね」
オーク村長も復活してくるまで二年近くかかりましたし、ゴブリン村長を、またフィーアがミスって倒してしまったので焦りましたが、本当にオーク村長が復活していたので助かりました。
「サーバル、ライとそのフィーア二人でこの国と戦をしても渡り合えるかも知れないぞ······はっ! はははははは!」
「その様ですね、くははははは!」
戦いませんよそんなの、戦うのは悪い魔物だけですからね。
なぜかご機嫌が、最高潮に上り詰め、倉庫からはみ出すほどの(はみ出てないし全部ではない)、ゴブリンを買い取ってくれました、ほとんどは魔石の値段ですが、本体は肥料にするそうで、それも安くだが売れるそうです。
それにこの公爵領は農耕が盛んなので、肥料になるゴブリンは大歓迎だそうです、明日肥料を作る者達を集め、格安で譲るそうです。
それに王都でも買い取って貰えるように手配すると言っていただきました。
日が落ちて、夕食の時間となりました。
そうして、フィーアと乳母をしてくれていたカリーアさん、旦那さんは店が忙しいと断わったそうですが、公爵様のお誘いを断わって大丈夫なのかと思うでしょうが、実は魔族の公爵(現王より長生きしていて、自分が王などやりたくないと押し付け、父さん、母さんと冒険者パーティーを組んでいた)であり、友好国の客人としてお断りすることもありだそうです。
「フィーア元気にしてた? カリーアさん久しぶりです」
「ライ久しぶり、元気よ、ライも元気そうね」
うんうん、やっぱり可愛いよね、フラれましたが······
「ライ君久しぶりですね、旦那はお店がねぇ、こんな時くらい休めば良いのに、うふふ」
「うむ、魔国の公爵にして、あの料理の腕前、仕方なかろう。あははは、私も妻とお忍びで食べに行っても個室を用意してくれて助かっているからな」
そんなことをティが言ってましたね、よし、フィーアとも再会できましたが、この街を離れる前に絶対に食べに行きましょう。
おっとこれで全員揃いました。お義父さんの合図でメイドさん達が大きなテーブルに料理を並べ、大人にはワインを、子供にはジュースを配り終えたところでお義父さんの挨拶で夕食が始まりました。
皆で歓談し食事が進む中、耳元でテラがこそこそと話しかけてきます。
「ライ、フィーアって子もぐるぐるしっぱなしじゃない! あなたと同じよ! 魔力的にはライの方が段違いに上だけど、周りの魔力も取り入れてるし、実質魔力は無限に近いわ、どうなってるのよ! だとすれば、お兄さん達も? はぁぁぁ、なんだか疲れたわ、ハンカチちょうだい、もう寝るわ」
そっと収納から出したハンカチをテラに渡すと、ムルムルの上で横になり、何かぶつぶつ文句を言いながら寝てしまいました。
そして夕食もお開きになり、客室に案内されたのですが、すぐにティがお迎えに来ました。
「ライ、お風呂使っても良いって♪ あ、テラ師匠は寝たままですか?」
「起きたわよ、仕方ないわね私が泳ぎを伝授してあげるわ! ライ行くわよ!」
みにょ~んと伸びて僕の肩に乗り移るムルムルにしがみつきながら移動してきました。
「うん♪ 楽しみにしてたんだ、そうだ、フィーアも誘おうか、絶対に泳げないと思うし」
父さん母さん達はお風呂と聞き、止めようとしたのか、腰をソファーから上げかけてましたが、テラの泳ぎを教えると言ってすぐに、背もたれにもたれ直しました。
「はい、大きなお風呂ですから大丈夫です♪ 行きましょう♪」
部屋を出て、隣の部屋に行きノックをします。
コンコンコン
「は~い、開いてますよ」
僕は戸を開け、中を見るとカリーアさんとフィーアはソファーで
「フィーア、今からテラに、あっ、テラってのは」
「私がテラよ! そして私の騎獣ムルムル! よろしくね!」
ぷるぷる
「あっ、肩に乗ってたスライムさんとちびっ子ちゃんだ♪ よろしくお願いします、フィーアです♪」
自己紹介も終わり、お誘いしましょう。
「これからテラに泳ぎを教えて貰うんだ、フィーアも一緒にどう? 僕もだけど泳げないよね?」
「嘘っ! 本当に教えてくれるの! 今度学院で川に行くのだけど、泳ぎの授業があるらしくって、自信が無かったんだ、テラ先生私にも教えて下さい」
へぇ~、そんな授業があるのですね。
立ち上がり、素早い動きで僕の前に立ち、テラに視線を向けてじぃ~っと見つめる。
「ねえライ、テラ先生って、めちゃくちゃ可愛くない? それにシャクティちゃんも」
うんうん、それにムルムルも可愛いよね。
「フィーアちゃん、私の事はティとお呼び下さい、同じテラ師匠に教えをいただく仲間ですから」
「良いの? うちのパパは一応公爵だけど、公務は何一つしないで冒険者して、今は食堂で料理人よ、あははは」
そうなのですよね、偉ぶったところなんて皆無ですし、カリーアさんにいつもお尻にしかれていますから、くふふ。
「はい、仲間で、それにお友達にもなりましょう♪ さあ、お風呂で泳ぎを!」
「じゃあ行くわよ、ライ、進めぇぇ~!」
ティを先頭に、フィーアと僕はお風呂に行くのでした。
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