第4話 横浜大空襲
第四章
ミーは、ぐったりしていた。
子どもたちがいないことに気づいた(ミーがいないことにはまったく気づいてなかった)二人の両親は、大慌てで近所を探し回り、「ひょっとして二つ目池公園じゃ・・・」という母親の恐るべき直感を働かせたママさんが、そんなとこまで行かないよ、という三人を置いてママチャリで走り、入口のところで、どうやって帰ろうと再び半ベソになっていた二人と一匹を発見した。
ママさん、涙を流しながらの大激怒!
とーちゃんに連絡して車で迎えに来てもらうと「当分、虫取り禁止!」とあろうことかあれだけ苦労して取った虫たちを節分の豆のように籠から放り出し、虫網を二つ目池に投げ捨てた。ちなみに元バスケ部なので、足のバネと手首のしなやかさを使って放たれた虫網は、大きく空で弧を描き、池の真ん中に綺麗にゴールした。歓声の代わりに悲鳴が上がったのは言うまでもない。
慌てて池に飛び込み、網を回収するとーちゃん。
ちなみにとーちゃんは、文化系。
虫取り禁止に「いやだー!」と泣き叫ぶキー。
さらには「なんで二人を行かせたのよ!」と、とばっちりでミーも怒られ、一週間、ゴルフォー禁止令が出たにゃ。ミーは、激怒し、ママさんの足に噛みつこうとしたが、怒りどころか、凍てつかせるな暗く冷たい目で睨まれ、ミーは隅っこでガタガタと震えた。
そんな阿鼻叫喚地獄から一週間が過ぎた。
当初は、虫取り禁止令が納得出来ず、物にあたるは、プチ家出をするはを繰り返していたキーではあるが、持ち前のポジティブさで切り替えて、今はプールの練習に励んでいる。とーちゃん曰く、「キーは、天才だな」とのことで、もうすぐ泳げるようになりそうとのことにゃ。
今もようやく機嫌の直った(本当につい数時間前まで怒り続けていた)ママさんと共に市営のプールへと遊びに行っている。
虫取りから解放されたミーは、疲れが抜けないものの、ようやく訪れた平穏の中、エアコンの効いたリビングの真ん中に寝そべってうたた寝をしていた。否、したかった。
『おい』
低い声がミーを呼んでいるような気がするが、気のせいにゃ。
『おい』
聞こえるけど、空耳にゃ。
『起きろ!ブサイク猫!』
そのあまりにも聞き逃すことの出来ない間違った表現にミーは、可愛い目を広げ、声の方を睨み付ける。
「誰が世界一愛らしいプリティーキャットにゃ!」
『いつ誰がそんなことを言った!』
声の主は、苛立ちを隠すこともなく怒鳴る。
声の主は、リビングの窓側の壁に設置されたキー専用のオモチャ棚、天辺から聞こえた。そこには侍たちの命とも言える刀や甲冑のように虫網と虫籠が丁寧に置かれていた。
普段、片付けなどとは縁のないキーであるが、虫網と虫籠だけは綺麗に設置する。ママさん的には玄関の端か外に置いて欲しいそうだが、虫取り禁止令が出た今でも大切に置かれていた。
声は、虫籠から聞こえていた。
籠の中を彷徨うように漂うそれは、一種間前にキーが捕まえたワタゲだった。あの時、ママさんの怒りから逃れ、籠の端にへばり付き、ミーの家まで着いてきた。
それからずっと、絶えず、毎日、ミーがゴルフォーを食べれず泣いてる時も、おしっこしている時も、とーちゃんと時代劇の再放送を見ている時も、ずっとこの調子で呼びかけてくる。
最初は、無視し続けていたけど、スマホのスヌーズ機能のように間隔的に呼びかけてくる声に気持ちが折れそうになり、つい反応してしまったにゃ。
『お前はいつになったら、あいつを連れてきてくれるんだ?』
ワーさんは、憤慨していた。
淡い光りを放つその表面には切長の若い男性の顔が浮かんでいる。
ワーさんとは、このワタゲにミーが付けた名前にゃ。
本人は、ふざけるなと怒るが、ずっとワタゲと呼ぶわけにもいかず、大体からして・・・。
「それじゃあ、そのあいつさんの名前を思い出したのかにゃ?」
ミーがそう聞いた途端に押し黙る。
ミーは、嘆息する。
「相手の名前も住んでいる所も分からない。自分の名前も分からないのに、どうやって探せというにゃ?」
だから、親切にワーさんというネーミングセンス溢れた呼び名を付けて上げたのに、怒る理由がわからんにゃ。
『そこを何とかするのがお前の役目だろ!何のための猫だ!』
「猫とそれは関係ないにゃ!大体、ミーは、警察官でも探偵でもない、ただの可愛い猫にゃ。名前も分からない人間を探すなんて出来るわけないにゃ」
『お前がただの猫なはずないだろう!ずっと気づかれなかったオレの声をお前は聞くことが出来たんだ。オレとお前が出会うことは必然だったんだ』
「たまたまにゃ。それにキーが捕まえなかったら、ミーはあんたを払ってるにゃ」
そうにゃ。こんな訳の分からんワタゲの言葉になんて耳を貸さずに払えばいいにゃ。いつだってキーの捕まえたワタゲをミーは自慢のかぎ尻尾で払ってきた。簡単な話しにゃ。簡単な話しなのに・・・。
(なんで出来ないにゃ?)
この一週間、やろうと思えばいつでも出来た。出来たのに、出来なかった。
約束しているんだ。あいつと。
あの言葉が耳から離れない。
あまりに重く、思い言葉。
じーちゃんは、キーに会いたくてワタゲとして現れた。何も知らなかったミーは、じーちゃんを払った。結果としてじーちゃんは、感謝してくれた。でも・・・。
払う以外にも何か出来ることがあったのではないか?
そんなことをたまに考える。
だから、怒りながらも泣くように訴えてくるこのワタゲを払うことが出来ずにいた。
「・・・他に思い出したことはないにゃ?」
ミーの突然の態度の変化にワーさんは、驚いた顔をする。そして薄い唇を紡ぎ、眉を寄せる。
『日向村』
今度は、ミーが驚く番にゃ。
「えっ?」
わーさんは、言葉を続ける。
『確かオレの住んでた町が日向村って名前だった。畑ばかりで需要のない寒村だった。他所の町じゃ文明開花に花が咲き、鉄道が走り、ハイカラな物が売られ、仕事だってあった。しかし、それはあくまで一部の華やかなところ。村は今だに自給自足だし、学校に行くにも山一つ超えないといけない。医者もいなけりゃ電気だって一部しか引かれていない。取り残されたようなところだった。
でも、オレはそんな村が好きだった。周りが都会に出ようと話す中、オレはかこの村であいつと生活して行こうと決めて・・・』
ワーさんは、口を閉じる。
『思い出せるのはこれだけ。あとは何にも分からない』
悔しそうにうめく。
日向村・・・。
日向町・・・。
日向町猫会・・・。
「何か分かるかもしれないにゃ」
ワーさんと話を終えると、その足でトイレに行き、尻尾で叩いて抜け穴を作り、飛び込んだ。抜け出た先は、猫屋敷の大きな木の幹。カーテンのように捲れ上がった幹からミーが出てきても猫会の猫たちは驚かなかった。と、言うよりも見慣れた光景となっており、ミーの姿を見るなり、「よーミーさん」「今日も美猫だね」「うまいカリカリが手に入ったよ」等々歓迎ムード全開でミーも悪い気がせず、かぎ尻尾をブンブン振った。
そして縁側で寝ている長老に声をかけ、事情を説明する。
長老は、撫でるように右手で顎を擦る。
「そりゃ間違いなく昔の日向町のことだね」
そういってかぎ尻尾で縁側を叩く。
「私もあーさんが娘さんやお友達と話してるのを聞いたくらいだけど、戦争が始まる前までは、この辺りはとても」
綺麗な村だったらしい・・・長老は、語り出した。
今のように住宅が立ち並んではおらず、木造の日本家屋が碁盤の上に散らばった駒のように点在し、それ以外は全て畑と自然だったという。春には桜が咲き乱れ、増水しないよう高い堤防が作られる前の川からは沙魚や鮎が採れ、子供たちは絶えず笑っていた。山を越えた先の都会の煌びやかさに夢を描くも出ていこうとは考えなかった。この村で一生を添い遂げようと思った。
「そんなことを言ってたな」
長老の話しを聞きながらミーは昔の日向町を思い浮かべようとして・・・止めた。恐らくじーちゃんと昔見た太平洋戦争を再現した映画のワンシーンのような風景なのだろうけど、思い浮かべたからと言って何か感慨にふけるわけでもない。ミーにとっては昔の日向村よりも今の日向町の方が好きにゃ。
「確か二つ目池公園の辺りまでが日向村だったとか言ってた気がするな」
「そうなると・・・ワーさんが探している人もこの辺りの人だったってことにゃ」
ミーは、考え込み、うーんと唸る。
日向町に住んでいたことが分かっても、この町は広い。それに長老の話しだと日向村と呼ばれてたのは戦前から戦中、つまり七十年以上も前の話しにゃ。
つまりワーさんが探してる人は、もう亡くなっている可能性の方が高い。
ミーが真剣に悩んでいるのを長老は、じっと睨む。その視線は少し怒っているようだった。
「ミー」
「なんにゃ?」
「なぜワタゲをそのままにしている?」
それは当然の質問だったにゃ。
なにせミー自身がそれで悩んでいるのだからにゃ。
ワタゲが近づいてくる、人を始めとする生き物を襲ってくる前にかぎ尻尾で払う。
それがかぎ尻尾を持つ猫が生まれ持った使命。
それなのに・・・。
「長老の言いたいことは分かるにゃ。ミーだって何でだろうって思ってるにゃ。でも、ミーの感が、なんて言えばいいのか?野生の感がそれをしちゃいけないと告げてるにゃ」
その言葉に長老は、呆れたように笑う。
「飼い猫に野生の感も何もないだろう?」
「それでも告げてるにゃ!」
ミーは、ムキになって鳴く!
長老は、ふうっと息を吐いて、耳を掻く。
「まあ、わかったよ。でも、ワタゲがまた人を襲おうとしたら、その時は遠慮なく払うんだぞ。もし、お前が出来ない場合は、私がやる!」
そう言うと、自分のかぎ尻尾で縁側を叩く。猫の尻尾とは思えないしなりを持って叩かれた縁側は、割れるような音を立てて、庭で寛ぐ猫とミーを萎縮させた。
このまとまりのない烏合(猫合?)の衆をまとめる長は、やはり迫力が違うにゃ。
ミーは、ビビってしまい声を上げることも出来ずに、かぎ尻尾を丸めてしまう。
そこに空気を読めないあっけらかんとした鳴き声と足音が聞こえた。
「長老どーしたの?」
キジトラのたまちゃんにゃ。
たまちゃんは、若々しさ全開の爛々と輝く丸い目で好奇心旺盛に聞いてくる。
その仕草が堪らなく愛しく感じたのか?長老は、険しい表情を解き、柔らかくかぎ尻尾を振る。
「何でもないよ。ただミーの我儘に苛立ってただけだよ」
誰が我儘だけど愛らしい猫にゃ!っと返そうと思ったけど、長老の迫力を忘れることが出来ず、何も言えなかったにゃ。
「そうなんだー!」
たまちゃんは、無邪気に答える。
なんて愛らしい。
「また、毛玉のこと話してるのかい?お前らも飽きないねえ」
白猫のクロちゃんも寄ってくる。
「猫は、難しいことなんて考えないで日向ぼっこして今日のご飯のことを考えてればいいんだよ」
何ともお気楽な考えに呆れを通して羨ましくなる。と、いうか確かにこんなことで悩んでいるミーが可笑しいのかもしれない。猫は猫らしく・・・。
『あいつに会いたい』
ワーさんの声が過ぎる。
やっぱ出来ないにゃ。
「てかさ。日向町の昔のこと知りたいんだよね?」
たまちゃんが喋りながら耳の裏を掻く。
「確かいいものがあったはずだよ」
その言葉にミー、長老、クロちゃんは、瞠目してたまちゃんを見る。
たまちゃんは、無邪気に笑った。
そしてたまちゃんに連れられてやってきたのは・・。
「たまちゃん」
ミーは、恐る恐る声をかける。
「なあに?」
たまちゃんは、一歳という年に見合った可愛らしい顔をして首を傾げる。
「本当にここにゃ?」
ミーの問いに、たまちゃんは、愛らしく頷く。
ミーが驚くのも無理はない。
たまちゃんが勝ち誇ったように堂々と連れてきたところ、そこは・・・。
「どう見てもミーの家だよな」
ミーの代わりに答えたのはクロちゃんにゃ。
そう、ここは迷うことなくミーの住む家だった。
ミーは、分けがわからずアタフタするのを横目にたまちゃんは、迷うことなく敷地内に入り、正面玄関ではなく、隣の家との隙間に入っていく。
ミー達は、慌てて追いかける。と、いうかなんでたまちゃんが案内する側になってるにゃ?
そんなミーの疑問など知らないたまちゃんは、家の裏に回ると大人の女性の頭くらいの高さにある小さな窓枠の上に向かってジャンプした。小さな身体を利用して上手に座ると、今度はその小さな手を使って器用に窓を開ける。
「ここね、いつも鍵が掛かってないんだよね」
そう言って、いけしゃあしゃあと中に入る。
だから、なんでそんなことを知ってるにゃ?と、言うかここはミーの家にゃ!
しかし、そんなミーの心の叫びなど完全に無視してクロちゃん、長老もジャンプして家の中に入っていく。
だから、なんで勝手に入るにゃ⁉︎
ミーも慌ててジャンプし、窓枠から家の中に入る。
そういえば抜け穴を使わずに家の中に入るのは久しぶりにゃ。
人気のない薄暗い部屋、少し埃っぽい匂いがする。
ここは、とーちゃんの仕事部屋。
まあ、ミーは最初から知ってるけど。
部屋の中にあるのは仕事用のデスク、その上に置かれたノートパソコン、脇にはプリンター、仕事用の資料が雑に収められた書棚、そして床には資料が山のように積み重ねられていた。
猫の目から見ても汚い。
普段は、綺麗目でお洒落な格好をしているのに、実際は片付け出来ないズボラ男。仕事の資料はテキパキ作るのに年賀状とかになるとギリギリまで出さない。まさにTP Oを使い分けている。良く言えばだけど・・・。
まあ、そんな意外性にママさんは惹かれたのかもしれないけどにゃ。
とーちゃんは、日中出かけることが多い。
ケアマネさんという仕事は,人に会って話すことが仕事と言っていたにゃ。月に一回は、必ず担当している人のところに出かけて行って、体調に変わりはないか?生活に困ってないか?等を聞いている。そして必要な介護サービスを介護保険で出来る範囲で計画を立てて提供する。
なぜ、知っているかと言うと、ちょっと昔について行ってその仕事ぶりを見ていたからにゃ。後で見つかって、こんな遠くに来ちゃいけないと怒られたけど。
たまちゃんは、積み上げられた資料を次々と崩していく。汚い中にも法則があるのだと思うが、そんなのお構いなしに無秩序に崩していく。
「ないなあ。どこかなあ?」
たまちゃんは、愛らしく首を傾げながら、崩した資料を砂を掻くように荒していく。
クロちゃんは、特にやることもなく、デスクの上に寝転がり、どこかしらか見つけてきた鮭とば(とーちゃんの晩酌のつまみ)をしゃぶっている。
あとで食べたと怒られるのはミーだからやめて欲しいにゃ。
そして、長老は、重く閉じられた扉をじっと睨んでいる。
「ワタゲの気配がする」
確かにドアの向こうはリビングになっていて、ワーさんもそこにいるにゃ。それにしても気配で分かるなんて、どんだけ凄いにゃ長老は。
「確かにまだ悪さはしそうにないね」
そう言ってドアから目を離し、ミーの方を向く。
「でも、この状態がずっとって訳ではない。もしもの時は分かってるね?」
長老は、低い声で言う。
ミーは、背筋が凍るように感じながらコクコクと頷く。
「まったく・・・今はワタゲどころじゃないってのに」
ふうっとため息を吐く。
「あーさん、どうにゃ?」
「別に体調は変わりないんだけどね。日に日に気持ちがふさぎ込んでいるよ。今じゃご飯食べるのも忘れるし、眠りも浅いみたいで、うなされては起きて、そのまた眠れずにいる。このままじゃ衰弱するんじゃないかって娘も嘆いてたよ。あんたのとーちゃんも何とかしようと色々やってくれてるけど、梨の礫だね」
二つ目池公園事件から一週間、とーちゃんの悩みのほとんどがあーさんのことにゃ。
日に日に弱っていくあーさん。
娘さんやあーさんのかかりつけ医、訪問看護師さんとで今後について話し合うも、身体的には問題ない、病気の再発もない、健康とは言えないが肉体的な問題はない。問題があるとすればそれは心の問題。
かかりつけ医は、娘さんにカウンセラーへの受診を薦め、訪問看護師さんも日数を増やして対応、そしてとーちゃんも介護保険以外のことで何か出来ないかと奔走していた。
「ケアマネとしては失格かもしれないけど、オレはあーさんに子どもの頃から世話になった。死んだ親父もだ。出来ることはしたい」
そう言ってタブレットを使って苦しげに調べるとーちゃんは、痛々しかった。
本当なら長老もミーのこんな戯言に付き合いたくはないはずだ。そんな時間があったら一秒でもあーさんの側にいたい。でも、かぎ尻尾を持つ猫として他に危害を加えるかもしれないワタゲも放っておけない。そして妹分であるミーのことも。
ミーは、罪悪感で胸が痛んだ。
「あったー!」
たまちゃんが歓喜の鳴き声を上げる。
今日は、ママさんが出かけててよかったにゃ。今の声を聞いたらすぐさま走ってきて、怒りの雄叫びを上げるところにゃ。
ちょっと考えに耽ってる間に部屋は凄惨なことになってきた。積み重なった資料は崩れて床を埋め尽くし、棚という棚の中身は全て落とされ、デスクの引き出しも荒らされてた。
一歳の猫の行動力は、恐ろしいにゃ。
たまちゃんが見つけたのは古い写真の束だった。
「この前、ミーのとーちゃんがあーさんに見せてたんだ。古い日向町の写真だって」
白黒の端が所々欠けて、しわの酔った写真には、トタン屋根の平家や、綺麗な川で宴会をする人々、色はわからないが桜に覆われた山々、舗装されてない道路を走る三輪の車等が写っていた。
確か回想法で使うと言って用意していた写真にゃ。
回想法というのは昔の写真や音楽を使って昔を思い出して心の安定や活力を引き出す心理療法の一つだと、写真を準備しながらミーとママさんに語っていたのを思い出す。何組かのグループで会話をしながら行うものが多く、個別に行うことは滅多にないのだが、少しでもあーさんの為になればと実施したようだが・・・。
「あーこれかい。あんま効果はなかったね」
長老は、つまらなそうに写真を見る。
結果として回想法は、効果を示さなかった。「懐かしいわね」と言って、昔のことを話してくれたがそれ以上の効果はなかった。
「一回やったくらいじゃ効果は出ないにゃ。時間をかけないと」
ミーは、とーちゃんを庇うように言う。
回想法を行ったその日に帰ってきた時、とーちゃんも「あまり効果なかったな」と悔しげに口にしていた。でも、諦めることなく新しい写真を娘さんから借りて、次の方法を試そうと考えていた。
たまちゃんが肉球をうまく使って写真を巡っていくと今までの風景写真から人物の写真に変わった。古い木造の家の前に立つ帽子を被った半袖の少年の顔に見覚えがあった。
「じーちゃんにゃ」
間違いなく、それは死んだじーちゃんの子どもの頃の写真だったにゃ。
そう言えばじーちゃんとあーさんは子どもの頃からの知り合いで良く遊んでもらったと言ってたような・・・。
次に出てきたのは大きな木の前に立つ髪の長い華奢な体つきをした女性にゃ。女性というかまだ少女にゃ。猫の目から見ても綺麗な顔立ちをしている。昔も今も絶世の美少女といっても通ると言っても過言ではない。
「あーさん」
今の今まで写真に興味を示さなかった長老が食い入るように見る。
確かにあーさんの面影がこの写真にはある。どことなく娘さんにも似ている。背後の木は猫屋敷の生えている抜け穴として使用している大木だろう。白黒だが、今よりも表皮が若々しい。
次出てきたのはお腹の大きなあーさん。同じように木を背後にして立っている。前の写真より少し寂しそうだが、その目はとても強い。お腹の子を育てていこうとする力強い意志を感じる。
次の写真は、赤ん坊を抱いたあーさん。その表情からは寂しさは感じない。赤ん坊への絶えることのない愛、そして母親の表情をしていた。
次の写真は、あーさんは写っていない。その代わり成長して四歳くらいになった娘さんを十代くらいの少年があやしている写真が出てくる。
じーちゃんにゃ。
本当に家族ぐるみのお付き合いだったんだにゃ。
そして次の写真もまた今までと違う、拝啓は猫屋敷の大木、最初の写真よりも少し髪の短いあーさん、そしてその隣には背の高い、細面の男性が立っていた。
その顔を見てミーの心臓が大きく震える。
「これは亡くなった旦那さんだね」
長老は、目を細める。
「えっ?」
ミーが驚いて声を上げると、長老もまた驚いた顔をする。
「うちに来る度に見てただろう?仏壇の上に飾られてる。忘れたのか?」
えっ?えっ?えっ?
ミーの心臓は、激しく高鳴り、写真の顔を凝視する。
写真に写る旦那さんの顔。
それはまさにワーさんの顔そのものだった。
『これは?』
ミーは、咥えてきた写真をワーさんの前に置く。
それは、若い頃のあーさんと写ったワーさんと思わしき人の写真。
「覚えがないにゃ?」
この写真に写っている人がワーさん、そう確信しながらもミーは尋ねる。
その横で長老がワーさんを睨みつける。
相手がワタゲであること、そしてあーさんの失われた想い人であるかもしれないこと、色々な思惑が長老の頭の中を回っていた。
ちなみにたまちゃんとクロちゃんは、一緒の空間にいるもののワーさんの姿は見えておらず、ミーと長老が何もいない虫籠に一方的に声をかけて、写真を見せているようにしか映らないだろう。
「かすかにだが覚えがあるような・・・この女性は誰?」
「あーさ、、、」
ミーは、言いかけて黙る。あーさんの名前ってなんだっけ?
「明美」
長老が重く口を開く。
ワーさんは、驚いた顔をする。
今の今まで長老が自分の姿が見え、声が聞こえているとは思わなかったようだ。
「この人の名前は小野田明美」
「あけ・・・み?」
僅かにワーさんの声が震える。
何かを思い出しかけている。そんな感じがする。
「あんたは、小野田良雄。この人の無くなった夫よ。覚えてない?あなたと明美さんはお互いが18の時に結婚した。いつ戦争に駆り出されるか分からないから、籍だけでも入れよう、祝言は戦争が終わってから上げようと誓い、結婚した。その直後にあなたの元に赤紙が届いた。場所はビルマ、ピアノの調律師の卵だった貴方は、伸ばしてた髪を丸め、着なれない支給された隊服を来て、万歳讃頌して送り出された。明美さんに必ず帰ると誓って。でも、あなたが帰ってくることはなかった。戦争に行くその日に横浜大空襲が起こり、日向村も巻き込まれた。貴方はその爆撃に巻き込まれ、戦争に行く前に亡くなった。二つ目池公園の近くの自分の生家の近くで」
長老は、まるで自分がその場にいて、体験してきたかのように語る。恐らく、あーさんからずっと聞かされてきたのだろう,その語りはワーさんの心と記憶を揺さぶるには十分だった。
『そうだ・・・オレは良雄、日向村の農家に生まれた。明美とは幼馴染で良く遊んだ。村は好きだったけど、農家をを継ぐのが嫌で、親に殴られる覚悟で都会に奉公に出たいと伝え、関内に奉公に出ることが出来た。そこでピアノの調律師の仕事と出会い、弟子にしてもらった。その間に戦争が始まったものの、オレは、一生懸命仕事に打ち込んで師匠にも認めてもらい、一人で任せてもらえるようにもなった。戦争は日に日に酷いものになり、いつオレの元にも赤紙が届くか分からなかった。だから、その前に想い人に、明美に結婚を申し込み、籍を入れた。そして、それから直ぐに赤紙が届き、出兵することとなった。でも、死ぬつもりなんてない。オレは帰ってくる、絶対に帰ってくる、明美に元に帰る・・・』
そこでワーさんの言葉が切れる。
ワーさんの切長の目が非望に揺れる。
『オレは、死んだんだな』
その言葉には理解と絶望が感じられた。
ミーは、黒く変色するのではと構えるが、変化は見られなかった。
ワーさんは、長老を見る。
『明美は?』
「生きてるよ」
長老は、短く言う。
ワーさんの顔に喜びが浮かぶ。
『会いたい。会わせてくれ』
ワーさんは、懇願する。
しかし、長老は首を横に振る。
「お前をあーさんに会わせる訳にはいかない」
ワーさんの顔に絶望が浮かぶ。
身体が黒く変色し始める。
ミーは、思わず身構える。
『なぜだ?なぜだ?』
長老は、冷たい目で言い放つ。
「自分の姿を見な。会えないと知っただけで黒く変色する自分を。あんたはワタゲ、人間じゃない、ただ宙に浮かび、過去を思い浮かべる、それだけの存在。会ったところで何も出来やしない。あーさんに危害を加えようとするだけだよ」
ワーさんから黒い触手が伸び、長老に襲いかかる。
ミーは、飛びかかろうとが、それよりも早く、長老のかぎ尻尾が触手を叩き落とす。
「こんな感じにね」
長老のかぎ尻尾に叩かれたワーさんの触手は霧散する。
ワーさんから黒色が薄れていく。
「あーさんのことを思うなら諦めることだ。今のあんたには何も出来ない。姿を見せることも、声を掛けることも出来ない。第一、私らにはあんたをあーさんの元に運んでやることも出来ないんだ。どうしようもないんだよ」
そう言って長老は、目を閉じる。
『あ、あっあ』
ワーさんは、悲痛な声を上げる。
そして、絶望の嗚咽を上げた。
ミーは、辛すぎて目を閉じる。
こんな悲しい慟哭は、聞いたことがないにゃ。
いや、ある。
それはじーちゃんが死んで少しの間だけ家に戻ってきた時にゃ。
病院で長い時間を過ごしたじーちゃんは、信じられない程に痩せていた。髪は艶がなく、頬はこけ、触れたら乾いた泥団子のように崩れ落ちそうにゃ。
じいちゃんの姿を見た瞬間、集まってた親戚たちは啜り泣き、ママさんは、じーちゃんの姿を見た瞬間に嗚咽した。ママさんがあんなに泣くのを初めてみた。とーちゃんは、みんなの前でこそ泣かなかったけど表情を歪ませていた。
そしてキーは・・・。
四歳のキーは、布団に横たわるじーちゃんをじっと見つめた。カサカサにやつれた額を触り、布団の上に手を置いた。まだ、死というものを理解出来ない年齢、しかしその目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「じーちゃん」
ぽそりと呟く。
「また、遊ぼうね」
慟哭が波となって広がった。
悲しい。
辛い。
話しがしたい。
会いたい。
ミーは、じーちゃんの頬を舐めた。
冷たい味に身が震える。
ミーは、小さく鳴いた。
また、会おうね。
「ミー」
長老の声にミーは、我に帰る。
長老は、ミー冷たく細めてミーを見る。
「こいつを払ってやりな。あんたの役目だ」
ミーは、思わず絶句する。
「私に払われるより、あんたに払われた方がこいつの為だろう。せめてもの情けだ。安らかに送ってやりな」
ミーの口調は、穏やかだった。しかし、有無を言わさない力が込められていた。
ミーは、空気を飲み込み、顔を俯かせる。
「・・・嫌にゃ」
その瞬間、長老の目に怒りが走る。
ミーは、心の底から震え、思わずよろけてしまい、後ろにいたたまちゃんにぶつかる。
たまちゃんは、驚いて目を丸める。
その視線は、長老の少し後ろを見ているような気がした。
「私は、情けで言ってんだよ。それとも私に払わせてずっと後悔が残ってもいいのかい?」
「もっと違う方法はないにゃ?このままじゃワーさんはずっとら悲しんだままにゃ。ただ会いたいって気持ちをどうして叶えられないにゃ?」
「初めてあった時に言ったのを忘れたのかい?ワタゲを払えるのは私らかぎ尻尾の猫だけ。見えるのも私らとキーのような一部の者だけ。だからこれは私らの役割。それに払うのは暴力じゃない。救いだよ。私らは迷うワタゲを救ってやる。それだけだ。それしか出来ない」
「でも・・・」
「私が払うかい?」
もはやそれは交渉でなく、脅しに近かった。
ミーは、両足がガクガク震えた。
それをよそになぜかたまちゃんは、クロちゃんに目配せして近くに呼ぶとミーの背中に触れるようジェスチャーしていた。
ミーの背中に触れたクロちゃんは、たまちゃんと同じように目を丸くする。
『もういいよ』
ワーさんが口を開く。
その声は、悲しみに震えていた。
『明美に会うことも声を掛けることも出来ないのならここにいても何の意味もない。さっさと殺してくれ』
その声は、あまりにも枯れ果てて、感情の機微を感じさせなかった。
「殺すんじゃない。払うんだ。救ってやるんだよ」
長老は、冷たく否定する。
『どっちも同じだ。明美なら会えないなら死刑宣告されたのと同じことだ』
ミーは、鋭い刃物で抉られるような痛みを胸に感じた。
長老は、再びミーを見る。
「聞いただろう。これ以上出来もしない望みで苦しませるんじゃない。救ってやりな」
ミーは、小さく呻く。
分かる・・・分かるけど。
『頼む・・・』
ワーさんが懇願する。
『楽にしてくれ』
ミーの覚悟が決まった。
ミーの両足から震えが消え、かぎ尻尾を天につくほどに伸ばす。
ミーは、長老の横を抜け、ワーさんに近づく。
なんてことはない。
今まで他のワタゲにやってたことと同じ。
何も変わらない。
ミーは、かぎ尻尾を振りかぶる。
『ありがとう』
ワーさんは、目を閉じる。
そしてかぎ尻尾がワーさんを捉えようとしたその時である。
「えーっその子どうするの?」
声を上げたのはたまちゃんだった。
ミーは、かぎ尻尾を止めてたまちゃんを見る。
長老とワーさんも同じようにたまちゃんを見る。
たまちゃんは、好奇心旺盛な目でミーを、長老を、そしてワーさんを見ていた。
「もっと遊ぼうよー!」
たまちゃんは、無邪気に笑った。
結論から言って、たまちゃんにはワーさんが見えていた。しかもたまちゃんだけではない。クロちゃんにもワーさんが見えていることが分かった。二匹から今の今までワタゲを見ることが出来るなんて聞いたことがなかった。いや、実際に見えてなかったのだ。今の今まで。
二匹が言うには、たまちゃんは、ミーが長老に気圧されてよろけてぶつかった時、クロちゃんは、たまちゃんに呼ばれてミーに触ったら見えるようになったと言う。今も二匹は、ミーに触っている。試しに手を離して見るとワーさんは見えなくなり、触ると見えるようになった。しかも、声まで聞こえると言う。
信じられないミーと長老は、顔を見合わせる。
その後、わかったことが三つ。
長老に触ってもワーさんは、見えないと言うこと。
ワーさん以外のワタゲは、ミーに触っても見えないと言うこと。
試しに、鉄塔の原っぱに行き、ワタゲが浮かんでいるのを確認してから二匹に触ってもらうが見えなかった。
「相当、あんたとあのワタゲの繋がりが強いってことだろうね」
長老は、苦々しく言う。
猫屋敷に戻ったミー達は、縁側でお日様を浴びながら実験の様子について話していた。
実験に付き合わされたたまちゃん、クロちゃんは、用意されたご飯を食べ終え、草むらに寝転がりながらもミーと長老の話しに聞き耳を立てていた。
「でも、これって凄いことにゃ。これならあーさんに姿と声を聞かせてやることが出来るにゃ」
ミーは、希望に思わず声が昂る。
しかし、長老は鋭く睨んで否定する。
「だから二人を会わせる気はないよ」
「なんでにゃ?」
「何かあってからじゃ遅いに決まってるだろ!妄執に取り憑かれたワタゲがどんなに危険か、あんただって知ってるだろう?」
ミーの脳裏に黒く変色し、触手を伸ばしたワタゲが浮かぶ。
「その時はミーと長老でワーさんから守ればいいにゃ」
「簡単に言うんでないよ。この世に絶対はないんだ。保障も出来ないことを簡単に出来るなんて言うんじゃないよ。それに・・・」
それに?
ミーは、首を傾げる。
「ただでさえ不安定なあーさんにこれ以上悲しい思いをさせたくないんだよ」
その目は、悲しみに触れていた。
「あーさんは、亡くなった旦那に会いたがってる」
そう、それは猫のミー達から見ても明らかだった。
仏壇の写真を見るあーさん。
何かを探し求めるように町を歩くあーさん。
宙を見ながら誰かに語りかけるあーさん。
その全てが亡くなった旦那さん、ワーさんに会いたがっていることを物語っていた。
「そうにゃ。だからこそ会えば・・・」
「会うことが幸せなのかい?」
ミーは、絶句する。
「あの変わり果てた人には似つかない姿を見て、不安定な姿を見て、気がついたら襲いかかってくるかもしれないのに、頭の中にある美しい思い出とはまるで違う存在を見て、あーさんが幸せを感じられるのかい?もし、さらなるショックを受けて何かあったら、あたしは、どうすりゃいいんだい」
その言葉は、針のように鋭く、痛く、ミーにもそして話す長老にも突き刺さった。
そうか・・・本当に長老は、あーさんのことが好きなんだにゃ。
ミーがキーやとーちゃんやママさんが好きなように。
ミーだって家族にもし何かあったらと思ったら辛い、気が狂いそうになると思うにゃ。
でも・・・。
「あーさんの幸せはあーさんが決めることじゃないかにゃ?」
ミーの言葉に長老は、目を大きく開く。
「確かに人間じゃない。不安定でいつ襲いかかってくるかもしれない。でも、それでも、どんな形ででも会えたら嬉しいんじゃないかにゃ?幸せなんじゃないかにゃ?」
ミーの脳裏にワタゲとなったじーちゃんの姿が浮かぶ。
キーに会えたじーちゃんの声は幸せそうだった。
そして、あんな形でもじーちゃんに会えたミーは、心の底から嬉しかったにゃ。
「二人を信じてみようにゃ。何かあったら今度こそミーが責任をもってワーさんを払うにゃ」
そう言って、かぎ尻尾で縁側を叩く。
長老は、ミーを一瞥し、目を閉じる。
風がなびき、木々の葉を揺らす。
「・・・どうやってあのワタゲをここに運ぶ?」
ミーは、その言葉の意味を飲み込むことができなかった。しかし、段々と染み込み、長老が二人を会わせることを了承したことを理解した。
ミーの目が輝く。
長老は、言葉を続ける。
「あーさんがお前の家に行くことはないぞ。会わせるには私たちで運ぶしかない。どうするんだい?」
そう、それがわかったこと三つめ。ミーを介して見ることと声を聞くことは出来る様になったが、結局触ることが出来ない。ミーや長老でもかぎ尻尾以外では触れない。触ったら払ってしまう。
しかし、それはもう解決済みにゃ。
「キーに運んでもらうにゃ。キーならワーさんを虫籠に入れたまま運ぶことが出来る」
ミーは、意気揚々と言う。
しかし、長老の目は冷たかった。
氷のように。
「どうやってお願いするんだい?」
あ・・・。
この一週間、ワーさんと普通に話していたから忘れていた。
ミーとキーの言葉の隔たりに。
「む・・ 虫取りの時にうまく・・・」
「禁止令が出てるんだろ?」
「目で強く訴えれば・・・」
「漫画じゃあるまいし・・」
にゃあああああああっ!
ここまで来て八方塞がりにゃー!
なんでミーは、猫に生まれてきたにゃー!
ミーが絶望に襲われ、長老が呆れて苦笑いを浮かべてため息をついていた時にゃ。
「いい方法があるよ」
口を開いたのは今の今まで寝転がって草を食んでいたクロちゃんだった。
「なっ?」
そう言って隣で好奇心旺盛に目を輝かすたまちゃんを見る。
たまちゃんは、嬉しそうに何度も頷く。
嫌な予感がする。
「いい方法ってなんにゃ?」
恐る恐る聞くと二人は同じような悪戯っ子の笑みを浮かべる。
「ヘラクレスオオカブトさ」
つづく
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