終章 2
「そう言えば、宰相と偽物聖女はどうなったのだろう?」
2人で神殿の外を目指して歩いていると、アルベルトが首をかしげた。
「さぁ……恐らく禁忌を犯したので罰がくだされたのではありませんか?」
私は自分の首にかけているネックレスを見た。
シモンは宰相とカチュアは【賢者の石】に封印されたと話していた。
私には何となく分かる。
恐らく、今私がつけているネックレスの中に2人は永遠に封印されたのだろう。
「そうだな……偽物のくせに聖女を名乗り、聖物に手を出して神の怒りを買ったのだからな。だが、どうせなら俺の手で処罰してやりたかった……!」
悔しそうに歯を食いしばるアルベルト。
やはり私の思ったとおりだ。アルベルトは今回も宰相とカチュアを処刑しようと考えていたのだ。
もし、この【賢者の石】に2人が封印されていることを知れば破壊しようとするに違いない。
「もういいですよ、アルベルト様が自ら手を下すことはありません。……前回のように、自分の手を汚すようなことをする必要はもうありません」
「え……?」
私の言葉に驚いたのか、アルベルトは足を止めて私を見つめる。
「クラウディア、まさか……お前……」
そのとき――
「クラウディア様ー!!」
神殿に声が響き渡り、こちらに向かって駆け寄ってくるリーシャの姿が見えた。その背後にはマヌエラにエバの姿も見える。
「皆……!」
リーシャもマヌエラも、そしてエバも泣いていた。彼女たちは泣きながら駆け寄ってくると、リーシャは私に抱きついてきた。
「リーシャ……」
「よ、良かった……クラウディア様が無事で……わ、私……すごく心配して……」
私に抱きついたまま、泣きじゃくるリーシャ。
「ごめんなさい、リーシャ。心配掛けてしまって……」
まるで我が子のようにリーシャの頭を撫でながら、マヌエラとエバを見る。
彼女たちも涙を流しながら私を見つめている。……敗戦国の姫として嫁いできた私なのに、本気で心配してくれていたのだ。
「マヌエラ、エバ。心配してくれてありがとう」
リーシャを抱きしめたまま、2人に礼を述べた。
「そんな……! 心配するのは当然です!」
「そうですよ。クラウディア様!」
マヌエラ、エバが涙を拭いながら返事をする。
「どうだ? そろそろ落ち着いたなら城に戻ろう」
今まで黙って私達の様子を見ていたアルベルトが声をかけてきた。
「はい、アルベルト様。リーシャも落ち着いたかしら?」
そっとリーシャの身体を離すと、顔を覗き込んだ。
「は……はい! クラウディア様!」
そして、私達は再び神殿の外へ向かって歩き始めた。
「クラウディア」
私の隣を歩くアルベルトが声をかけてきた。
「はい、アルベルト様」
「後で……お前に大切な話がある」
真剣な眼差しを向けてくるアルベルト。
「はい、私もアルベルト様に大切なお話があります」
私もアルベルトに笑いかける。
そう、私とアルベルトは互いに話したいことが山ほどある。
何故なら、私達は互いに時を回帰した者同士なのだから――
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